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(四)-2
屋上には何もなかった。人が落ちないように端には転落防止用の柵が設けられていた。
柵に手をかけて、外を見た。空はオレンジ色に染まっていた。風が少し強く吹いていた。眼下には三面六線の駅があり、オレンジ色の帯と黄色の帯、さらに水色の帯の電車が行き交っていた。その先には住宅街が広がっていた。少し左手には新宿の超高層ビル群が見えた。街にはもう暗闇がところどろこに現れていた。そして外灯がともり、建物の中の光が少しづつ目立つようになっていった。
それらの建物には人がいる。みんな生きている。眼下の小さい家一軒一軒にもそうだし、高層ビルのオフィスなどにも人がいる。みんなそれぞれに、そこに居る意味と理由が、生きている意味と理由があるのだろう。
(続く)




