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(三)-9
するとママは僕のほっぺたをひっぱたいた。いつも怒られてはいた。でもひっぱたかれることはなかった。
「あんたは金賞を取らなければならないの!」
「金賞が欲しいのは自分だろ!」
僕がそう言うと、ママはもう一度僕をひっぱたいた。
「そうよ! 金賞が欲しいのは私よ。私はそれができなかったの。でもね、私は今でもそれが欲しいの。私がそうしたいのよ!」
ママはそう言うとスーツとは似合わない赤いラメ入りのハイヒールの音を鳴らしながら会場を後にした。
ママは去り際に一言言った。「才能がなかったのね」。
(続く)




