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バトルシュート!!―平和を守れ! 紅蓮少年隊!!―  作者: 渦目のらりく
第1話 悪い大人は許さない! くらえアルティメットスパイラルライトニングボルカニックシュート!!
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悪い大人は許さねぇ! くらえ鉄拳!

デンジャラス有本「――――な…………っ?」


 シンと静まり返った公園で、デンジャラス有本は訳の分からぬ事態に息を呑んでいた。


デンジャラス有本「なんで……なんで作動しない!? おかしい、さっきまで!」


 スーパーカブに乗ったオジサンが、フルフェイスを外してデンジャラス有本に会釈をする。


スーパーカブオジサン「あっ……すいやせん。自分一回までなんすよ……課金してもう一枚チップ当てて下さいや、悪いねぇ」

デンジャラス有本「な……」


 軽トラに乗った麦わら帽子のオジサンが、クラクションをプップッと鳴らして、運転席側の窓から愛想笑いを始める。


軽トラオジサン「ちょっと先方から催促の電話があってね。んぁ〜そろそろうちのキャベツを積んでいかにゃならんようなっちまって……まぁ遅れるとうるさいんですわぁ橋本さん。たまりませんわぁ」

デンジャラス有本「な、何を言って……」

軽トラオジサン「まぁ取引先裏切ったら私も飯食って行けないんでねぇ……スイマセンなぁ、ちょいと農協行ってきますわぁ、ぁあーそれにしてもあちぃなぁ」


 ブロロロと音を立てて軽トラとスーパーカブは走り去ってしまった。


デンジャラス有本「な、な……なんだと! お前達、何処に行くんだ!? お前らは拡張現実の電子体だろう!?」

ユート「デンジャラス有本!!」

デンジャラス有本「――ッはぅ!?」


 ユートが燃える瞳でデンジャラス有本を睨み付けている。そして怒りに髪を炎の様に逆立てていく。


ユート「無理矢理に奪い取ったシュートチップでは、お前の意思には従わない! シュートチップも、俺達と同じ様に生きているんだ!」

デンジャラス有本「馬鹿な、そんな……データでしかないコイツらが、生きているだとぉ!」

ユート「そうだ! 聞こえないか、彼等の声が!」


 デンジャラス有本の耳に、子ども達から奪ったチップの声が聞こえ始める。


ハンマーヘッドシャークオジサン「なんか魚臭え所だな」

頭蓋ドリルオジサン「肩上がりませんわぁ、あたた、湿布ありません?」

お尻ブレードオジサン「和式やないと無理やねん! 和式やないと!」


 デンジャラス有本「ぬわぁぁあ!! なんだこれはぁあ!! 本当に全てのチップに魂があると言うのかぁ!!」


ユート「終わりだデンジャラス有本!」

デンジャラス有本「くそぉお! まだだ! まだこのマグロ熱線が俺にはある!」

ユート「そんな気持ち悪い攻撃が俺に二度も通用すると思うな!」


 全ての者が、固唾を飲んで彼等の行く末を見守っている。


デンジャラス有本「おのれ! マグロ熱線!! オロロロロ!!」


 怒涛の熱線がユートへと迫る。その光景を眺めたマドンナのミナちゃんが、彼の名を叫ぶ――


ミナちゃん「ユート――――!」


ユート「いくぞ、必殺……!!」


 ユートのシュートガンに、太陽の光が集まっていく。


デンジャラス有本「何をしようと無駄だ! あっひゃひゃひゃー!」

ユート「うおおおお!! アルティメットスパイラルライトニングボルカニックシュートぉお!!!」


 ユートがその攻撃を放った瞬間、世界中の光が一瞬消えた。


デンジャラス有本「馬鹿な!! 太陽が!?」


 太陽の光でさえもが、瞬間的に消失している。

 ユートの解き放った凄まじいエネルギーの影響だ!


ユート「うぉおおおおおおおお!!」


 拳を握り締めたタクとポピーが叫ぶ。


タク「でたぁ!! 全てを焼き尽くす。ユートのアルティメットスパイラルライトニングボルカニックシュート!!」

ポピー「ナンテ、強い光! アルティメットスパイラルライトニングボルカニックシュート!」


 デンジャラス有本のマグロ熱線は、ユートの放ったアルティメットスパイラルライトニングボルカニックシュートに呑み込まれてかき消える!


デンジャラス有本「――――――な、んだこれ!!」


 太陽を丸ごと打ち出した様な灼熱に、デンジャラス有本の体力メーターが二本纏めて消し飛んでいた。


『ブーー!! 勝者、灼熱ユート!!』

 

 勝利のサイレンを聞き、子ども達は飛び上がった。


ユート「うぉおおおおおお!!!!」

ポピー「やったよユート!!」

タク「ユートぉお!!」


 子ども達がユートに群がっていく。そんな中、ARが終わって元のスーツ姿となったデンジャラス有本が息を吹き返した。


デンジャラス有本「くそ、なんで俺がこんな子どもに……」


 ユートは膝を付いたデンジャラス有本に走り寄った。その表情には未だ厳しいものがある。

 そしてデンジャラス有本は、自らの敗北を認めて懺悔の言葉を綴り始めた。


デンジャラス有本「俺には、居場所が無かった。会社をリストラされ、新しい就職先も見つからない」


 涙を流し始めた中年男性の悲痛の声に、ユートは返す言葉を失っていく。


デンジャラス有本「家にも帰れず、俺は妻にリストラされた事を黙ったままに、毎日公園に通っては、そこのベンチで時間を潰していた」

ユート「デンジャラス有本……」

デンジャラス有本「俺は太陽の様に笑い、はしゃぐお前達、子ども達を羨んだ……嫉妬していたんだ……まだ輝かしい将来のあるお前達に」

タク「……」

デンジャラス有本「ははっ、馬鹿だよな……笑ってくれよ、こんな情け無い俺を。子どもを虐げて自らの境遇から目を逸らしていただけの、馬鹿な俺を」

ポピー「HA☆HA☆」

ユート「笑わないさ……誰もお前の事を笑う奴はいない。子どもはお前が思っている程愚かじゃない……」


 落涙を始めた中年男性を見下ろして、ユートは微笑んだ。


デンジャラス有本「許してくれるのか……こんな俺でも……」


 彼を取り囲む子ども達は、誰一人として彼を恨む事をしなかった。子ども達の慈愛に授かり、自らを情け無く思ったデンジャラス有本は泣いた。


ユート「だが、お前はアルティメットモードで負けた……その事実は、今更変える事は出来無い」


 バトルシュートの真剣バトル。アルティメットモードに負けた者は、蓄積されたダメージの反動を受ける。

 デンジャラス有本の体が内部から蠢き始める。


デンジャラス有本「ぁあ!! ぁあ、あぁあ――!」

ユート「すまない、デンジャラス有本」


 次の瞬間、エネルギーの暴発によってデンジャラス有本のスーツは全て弾け飛んでいた。


デンジャラス有本「うぶぅアアアアーー!!」


 ありのままの裸体を晒して、デンジャラス有本は絶叫した。

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