表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/72

他人(ヒト)の身体で、勝手に結婚するってのはアリですか!? 【68】

 洗濯機にさ、放り込まれた洋服ってこんな気分なのかもしれない。

 そう思いながら、ゆっくりと身体を起こす。

 そうしないと、頭がクラクラしそう。

 あのブラックホール。

 人の身体をどれだけグルグル回したのよ。遊園地のコーヒーカップだって、ここまでヒドいことにはならないぞ!?

 目の前に広がるのは、王宮のベッドの上…、などではなく、どっか知らない枯れ野原。

 ススキノ!? いや、もっと寒々しい風景。

 冬の雑草地ってこんな感じだよねって所。

 あれ!? いつもなら、目の前に、バーンッと王子がいたりするのに。

 おかしいな。

 これじゃあ、予定、狂っちゃうじゃない。

 目覚めとともに、王子に告白するつもりだったのに。そして、あま~い感じになって。チャ~ララ、ラララララ~ラ~ラ~って、なんかのエンディングみたいな音楽がなる世界になると思ってたのに。

 王子、どこよ。

 立ち上がって、周囲を確認する。

 けど、見渡せど、見渡せど王子どころか、人っ子一人いやしない。

 マズい。このままじゃあ、マズい。

 枯れ野原を吹き抜ける風に、身を震わせる。

 今、身につけているのは、冬物のセーターと、ダッフルコート、長めのスカートだけ。自分のなかで一番のオシャレアイテムだったけど(一張羅ともいう)、これだけじゃあ、ハッキリ言って寒すぎる。

 日もかなり傾いて、弱々しい日差しにぬくもりなんて存在しない。

 このままじゃあ、マジで、「異世界生活野垂れ死に」だよ。

 どこか暖まれる場所、そして…。

 グウウウウウウウッ。

 この空腹をなんとか出来る場所を探さなきゃ。

 ヨロヨロと草原の中を歩き出した。


 幸い、というか。

 草原はあまり広いほうではなかった。

 しばらく歩くと、両サイドに木々が並ぶ、街道らしき場所に出た。

 …あ。この風景見たことある。

 確か、王子に連れられて、ベルクフォルムへ向かう時に通ったところだ。

 あの時はまだ紅葉した葉っぱがついていたけど、今は枝だけになった木々が、木枯らしに揺れている。

 …ってことは、この道を歩いて行けば、王子のいる王都に行けるの!?

 でも、どっちに!?

 「←王都」「ベルクフォルム→」なんて看板でもあればいいのに、そんな便利アイテムはない。

 うーん。間違った方に行けば、それだけ王子から離れちゃうし。

 うーん。ううーん。

 よしっ!!

 あてがあるわけじゃないし、カンでしかないけど、こっち!!と決めた方へ足をむける。

 沈みかけた太陽が眩しいから、その反対に歩き出しただけなんだけど。

 それでも、なんでもいいから行動する。

 でないと、寒すぎて、マジ凍える。

 

 …こーゆー時さあ。

 フツーのドラマとかだったら、王子が運良く馬を走らせたりしているのに、バッタリ出くわして、「リナッ」とか言って、運命の!?劇的再会を果たすってことになったりするのに。

 ブツブツと文句をたれながら、足を動かす。慣れないブーツに押し込んだ足が、歩くたびにズキズキと痛む。

 …どうして、ウチのヒーローは、こうお城からチョチョイって出てこないのかね。ひきこもりなわけ!? 王子は。

 太陽はとっくの昔に沈んでしまった。頭の上にはキラキラキレイなお星さま。

 歩き続けないと寒さで凍えそう。文句でも言ってないと、やってられない状況。ウィンドブレーカー欲しい。もしくはカイロ。肉まん。おでん。どこかにコンビニ、ないのかな。気分は『マッチ売りの少女』。「マッチ~、マッチ~」マッチでいいから暖まりたい。

 はあっ。

 冷たい夜空に、白くなった息を吐き出す。 

 仕方ない。今夜はトコトン歩く。歩いて歩いて歩き倒して。

 きっとさ。夜が明けたら、ハッピーエンドが待っているのよ。

 冷たい風にコートを合わせ直して。私は王子へと続くであろう道を歩き続けた。

 

 歩く。歩く。歩き続ける。

 王子に向かって。自分の求め続けた人に向かって。

 私は絶対幸せになる。

 今はどんだけ寒くたって。今はどれだけ足が痛くたって。今はどれだけお腹が空いてたって。

 どれだけ今が寂しくったって。

 何度も何度も。王子の顔を思い出しながら、王子の声を思い出しながら。

 泣くことも忘れた。止まることも忘れた。

 ひたすらに足を動かして、前へと進む。

 その一歩が、王子へと近づくことを信じて。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ