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他人(ヒト)の身体で、勝手に結婚するってのはアリですか!? 【64】

 白のモヤモヤ空間。

 霧!? 煙!? なんだろう、よくわかんないけど、ふわふわした空間。

 その不思議な世界で、私はポヤポヤと浮かんでいた。

 クロール!?をすれば前に進んでいるような感覚はある。けど前がどこにあるのかよくわからないので、進んだのかどうかの実感はない。大海原とか、宇宙のど真ん中でカプカプ浮いて、少しぐらいバタついても進んだことを実感できないのと同じ。(大海原も宇宙も行ったことないけど)

 …夢の中なのかな。

 こんな不安定な世界が現実とは思いにくい。

 それに、お母さんから聞いた世界によく似ている。

 これが異世界転移途中に来るところなのかな。いつもはぐっすり寝て、こんなところ通った記憶はないのだけど、今日はちょっと特別だから。

 転生モノのマンガとか小説とかなら、こーゆートコで、「女神さまっ!!」とかなんかが出てきて、異世界転生ウンヌンについて語ってくれたりするんだろお…って、え!? マジもん!? 女神さま!?

 突如モヤヤン空間に現れた女性の姿。

 …………あ。

 「セフィア姫…」

 一瞬、女神さまかと間違えるぐらいの美人だけど、よく見りゃ、あっちの世界で鏡に映して眺めたセフィア姫の姿だった。

 「リナ、なの…!?」

 女神バリの優雅な仕草で、首をかしげる。

 うーん。私が入ってたときと、元のセフィア姫ではえらく違ったはずだわ、こりゃ。美人は中身も美人なんだなと、実感した。

 って、そんなことを言ってる場合じゃない。

 「初めて会えたね、姫」

 戸惑ったままの彼女の手を取る。私より、ほっそりしたキレイな手。

 「リナ…」

 セフィア姫の目が潤む。

 姫の青い目に私が映ってる。私の目にも多分、彼女が映ってる。

 さんざん入れ替わったからかな。初めて会ったような気がしない。昔から知ってる友だちに会えた。そんな気分。ネットで知り合った人と初めて会う、とかいうのとはちょっと違う。私たちは、身体を入れ替えることで、すでに出会っていたから。

 「でも、どうしてリナが、このようなところに!?」

 ここは自分の夢ではないのかしら!?と、姫が不思議そうな顔をした。

 まあ、姫は異世界転移とか、そういったSFっぽいもの、知らなさそうだもんね。私だって、そんなにくわしいわけじゃないけどさ。

 「姫、お話があります」

 いつまでも、再会!?の喜びを語り合っている時間はない。日食が始まって終わるまでの時間。私が目的を果たすまで。残された時間は、おそらくそう多くはない。

 

 「私と、世界を入れ替えてください」


 ……………………。

 ……………。

 ………。

 「…………え!?」

 私の言った意味を姫が飲み込むまで、かなりの時間を要した。

 「それは、あの。どういうことでしょうか」

 理解できてない、でも驚いている。姫が、そのきれいな目をまん丸にした。

 「私、そちらの世界に行きたいんです。姫の代わりに。自分の身体で。だから、このまま、私と立場を、世界を入れ替わってください」

 「ちょ、ちょっと待って、リナ。それ、どういうことか、アナタ、わかって言っているの!?」

 「わかってる」

 「わかってないわっ!!」

 姫が叫んだ。

 「あの世界は、(わたくし)の世界は、アナタの考えているような、アナタの世界とは違う、とても危険な場所なのよ!?」

 自分が憎悪の対象となり、王子がケガした事件を言っているんだろうか。それとも、私が拉致られた事件を言っているのだろうか。どちらにせよ、危険だからと、姫は怒っていた。

 「知ってる」

 「だったら、なぜ…」

 「ねえ、姫さまは、私の世界が安全だと思ってるの!?」

 姫の怒りに対して、私は努めて冷静に話し始めた。

 「私の世界だってね。そんなに安全ってわけじゃないわよ」

 「え!?」

 「交通事故とか、災害とか。生命の危険っていうのなら、どこにでもある。今、平和でも、いつ『想定外でした』って出来事が起こるかわからないもん」

 明日、いきなりどこかの国と戦争を始めちゃうかもしれない。隕石が降ってくるかも。雨が止まらなくて沈んじゃうかも。海から謎の怪獣が現れて街を襲うかも。それとも、遅れてやってきた恐怖の大王のせいで、世界が終わりを迎えるかもしれない。

 「どこにいたって危険はあるし、どこにいたって安全は保障出来ないと思う」

 「リナ…」

 私のお母さんみたいに、ある日突然事故に巻き込まれることもある。お母さんは助かったけど、あの時の、お母さんを失うかもしれないっていう恐怖は、私のなかに残っている。

 当たり前に存在していた人が、普通だと思っていた日常が、ブツンと切れたDVDか何かのように、突然断ち切られる恐怖。

 今、私のなかにあるのは、それに似た感情なのかもしれない。

 このまま。王子との関係が断ち切れたままなのがイヤだった。唐突に終わりを迎えたことが我慢できなかった。

 戻れるものなら戻したい。行けるものなら、何をしたって飛んで行きたい。

 この感情を、愛だとか恋だとか言うのなら、恋愛って、スッゴクわがままなことなんだなって思う。

 自分のエゴ丸出し。

 自分の感情を満たすためなら、周囲の人たちだって、世界だって何だって振り回す。

 「意外とね、そっちの世界に行った私のほうが長生きする可能性だってあるじゃん♪」

 未来は、誰にもわからないんだから。

 「だから、お願い。私をそちらの世界に行かせて」

 恋は、私をとんでもないエゴイストにする。 

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