他人(ヒト)の身体で、勝手に結婚するってのはアリですか!? 【58】
そして眠る満月の夜。
私は、一縷の望みをかけて眠りにつく。
逢いたい。
王子が無事なのか、知りたい。
会って話しがしてみたい。笑った王子を見てみたい。
王子。今、どうしているの!?
そして迎えた満月の夜。
私は、誓いを破り眠りについた。
逢いたい。
アキトに会いに行きたかった。
会って、あの拳に隠された彼の心を知りたかった。
アキト。今、何を思っているの!?
そして見上げる満月の夜。
冷たく光る月を眺める。
アイツ、今、どうしてるんだろうな。
どうせまた、とんでもないことをしでかしてるに違いない。
そう考えてフッと笑い、心が沈む。
リナ。もう二度と会うことはない女。
そして見つめる満月の夜。
二度と会えない人を思う。
幸せになってください。
そう言ったけれど、気持ちは複雑だ。
幸せを願わないわけじゃない。
セフィアさん。今、アナタは幸せですか!?
夢のなか、私は必死に腕を伸ばす。
その先にいたのは、空を、月を見上げていた王子。
…王子っ!!
必死な私の声が聞こえたのか、王子が私を見てくれた。
驚きにあふれた、グリーンの瞳。
私に応えるように、手を伸ばしてくれる。
手を、その手を取ることが出来たなら…。
もがき、あがいた私の手が、王子の指先をかすめる。
けれど、夢はそこまで。
互いの手をつかむことなく、夢から引き戻された。
夢のなか、私は必死に呼びかける。
その先にいたのは、空を、月を見つめていたアキト。
…アキトッ!!
必死な私の声が届いたのか、アキトが私を見てくれた。
驚きにあふれた、黒い瞳。
私に応えるように、何か話してくれている。
その声が、私に届いたなら…。
もがき、あがいた私の耳に、アキトの声がかすかに届く。
けれど、夢はそこまで。
何を伝えてくれたのかわからぬままに、夢から引き戻された。
逢いたい。
逢えない。
もう少しなのに、届かない。
深い悲しみとともに、朝を迎える。
月の力を借りても、もう届くことは出来ないのだろうか。
一度外れた掛けがねは、二度と元には戻らない。
暁斗は、何かを思案したまま。
里奈は、わざとらしいまでに普通を装いながら。
殿下は、動けるようになられても沈痛な面持ちで。
姫は、思いつめたような表情を隠しながら。
それぞれの時間の流れの上で、もがいていた。
* * * *
「里奈」
最初に動いたのは暁斗だった。
最近ずっと何か忙しくしていた暁斗が、久しぶりに私と一緒に下校したのは、12月の半ば、もうすぐクリスマスという日のことだった。
「少し、話があるんだけど…」
そう言って誘われたのは、例の公園。
月も昇っていない公園には、冷たい風だけが吹いていた。
「いきなり、どうしたの!?」
なるべく明るく聞いてみる。
そうしないといけないぐらい、暁斗の表情は張り詰めていた。
「うん…、実は…」
暁斗の口が重い。地面に視線を落とし、一点を見つめ続ける。
その様子を、私はじっと見守り続けた。なんとなく、声をかけられる雰囲気じゃなかった。
顔を上げた暁斗が、その髪を乱す。その乱暴な仕草に少し驚いた。
空を見上げて、大きく息を吐き出す。
そして。
「里奈…」
正面から見据えられた。ぐっと引き締められた頬は、その真剣さを表している。
「あちらの世界に行く方法があるって言ったら、どうする!?」
……え!?
その言葉に、私は大きく目を見開いた。




