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他人(ヒト)の身体で、勝手に結婚するってのはアリですか!? 【46】

 熱も下がって、動けるようになった私に、王子が事件について調べたことを教えてくれた。

 あの男たちの狙いは、やはり物盗りではなく、セフィア姫の拉致にあったこと。

 王子たちが倒しそこね、逃した男が主犯格だったこと。

 あの男の指示で、私を拉致ったけど、その命令を下した黒幕については、何も知らないままだったこと。(報酬さえもらえればよかったんだと)

 だから、あの後、私がどこへ連れて行かれる予定だったのかは不明。ただ、城外へ出て、北東方向にある街道を目指す。それだけを聞かされていたとか。

 「北東…!?」

 「ヴァイセンがある方向だ」

 …そうなんだ。

 じゃあ、そのヴァイセンが黒幕なの!?って思ったけど、そんな短絡的に疑うことは出来ない。ヴァイセンのせいに見せかけただけ、という考え方もある。

 「セフィア姫の身柄を必要とする相手など、考えたらきりがないからな」

 セフィア姫が王子に嫁ぐことで、この国は、というか王子は、メリットを得るわけだけど、それをこころよく思っていない連中はいるわけで。

 一番はやっぱりヴァイセンだけど、他にも王子の政敵だとか、姫の故国と仲違いしてる国とか、そちらの内部事情とか。王子に自分の娘を嫁がせて、権力を得ようとしていた国内の貴族とか。長年の敵だった姫の故国を憎んでいる者とか。

 ヴァイセンにさらわれたように見せかけて、この国とヴァイセンの対立を望む。そういうヤツもいる。

 数えだしたら、疑いだしたら十本の指では足りないぐらいなんだって。

 「国内で言えば、ロワイユ夫人だって、姫を狙う動機を持っているとも言えるんだぞ!?」

 「あの、ロワイユ夫人が!?」

 姫と結婚したことで、王子の政治的権力が上がっている。さらに、二人のあいだに子どもでも出来たら、王子の権力は強固なものになる。そうすると、今権勢を誇っている夫人はあまりいい状況ではなくなってしまう。王子が為政者としての力をつけてしまえば、夫人は必要ない存在になってしまうのだ。

 この結婚による和平は、夫人の働きかけで成立したのだから、この可能性は低いが、それでも疑いを晴らす要素にはならないんだって。

 …王子、王女ってのも大変なんだな。

 身近にいるものから、なにから疑ってかからなきゃいけないなんて。そして、それらの仮想敵から、身を守る努力をしなくちゃいけないなんて。

 ファンタジーでしか知らない、彼らの過酷さを身を持って体感した。クルクル回って踊ってるだけじゃないのね。

 「お前は、何も心配しなくていい」

 話し終えた王子が言った。

 「元に戻るまで、俺が守ってやるから」


 数日後。

 ベッドから離れるようになった私のもとに、アデラが面会を求めてきた。

 王子の愛妾目指してました宣言をされてしまったあとで会うってどうなの!?とは思ったのだけど、彼女の様子も知りたかったから、面会することにした。

 アンナさんにお願いしてセッティングしてもらったバラの庭園で彼女に会った。バラは、花の盛りを過ぎてあまり咲いていなかったけど、それでも、十分に美しい庭だった。

 周囲には、アンナさんをはじめ、メイドさんたちがいてくれてるけど、なにより護衛としてそばにいるのは、あのシルヴァンさんだった。

 メイドさんたちのなかに、また刺客とか紛れ込んでいる可能性もある。だから、一番信用のおけて腕も立つシルヴァンさんを、王子が手配してくれたんだけど。

 面会の邪魔にならないように、少し距離をとって立つシルヴァンさん。正直、あんまりバラが似合ってない。王子と違って、この人の場合、似合うのはバラじゃなくって、荒野の崖っぷちなんだよね。オオカミ剣士、石川五右衛門なだけに。バラが葉を落として、枝だけになったら、似合うかもしれない。

 「あの時は、本当にありがとうございました」

 会って最初に、アデラから礼を言われた。

 「姫さまのおかげで、あの場から逃げ切ることが出来ましたわ。ええ。馬に無我夢中でしがみついて、振り落とされないか必死で。あのように乱暴な馬術など、私のような者にはむずかしゅうございましたが、それでもなんとか、おかげさまで無事、逃げられましたわ」

 …イヤミ!?

 「今日は、お礼とお詫び、そして…」

 アデラが立ち上がる。スタスタと歩いていったさきに…。

 「アナタにお会いしたくて参りましたの」

 シルヴァンさんがいた。

 …って、ええっ!?

 「あの時、私、死ぬる思いでおりましたのを、助けていただいて…」

 赤く染まった頬に手を添える。

 「今でも、思い出すと、胸が熱くなりますわ。私を守ってくださるために、あんな無茶なこと…。私、アナタのことが忘れられなくて、こうして参りましたの」

 …うええええっ。

 「ちょっ、アデラ、アンタ、王子のことはどうなのよっ!!」

 王子の愛妾の座を狙ってたって。愛妾になって贅沢三昧するんだって言ってなかった!?

 「ああ。殿下なら、アナタに差し上げますわ」

 …はぁ!?

 いや、差し上げるもなにも。

 そんな、アッサリ、モノかなんかみたいに言われても。

 「私、あの一件で、本当の愛っ!!というものを知りましたの」

 …はぁ…。

 「暴れる馬に飛び乗って、手綱を取り、馬をなだめてくれた、あのたくましい腕…。背中から私を包んでくれた、あの力強い抱擁…」

 アデラがウットリと目を閉じた。

 「あれこそ、真実の愛。私を想う、殿方の心の表れですわ」

 …えーっと。

 暴走した馬から、アデラを守っただけ…だよ、ね。

 思わず、私もシルヴァンさんを見てしまう。

 「お慕い、申し上げますわ」

 艶っぽく、アデラがシルヴァンさんを流し目で見上げる。メッチャ美人。メッチャ美人、なんだけど…。

 とうのシルヴァンさんは…。

 少しだけ身体を引いて、

 「…………………困る」

 無表情のまま、短く答えた。

 あれ、心のなかでメッチャ汗たらしてるわ、絶対。

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