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他人(ヒト)の身体で、勝手に結婚するってのはアリですか!? 【40】

 「大丈夫だよ。僕の予想がハズレただけかもしれないし」

 アキトは、そう言って不安がる(わたくし)を慰めてくれた。

 「もうしばらく様子を見てみよう」

 言いながら笑いかけてくれるけれど、その眼は笑ってなどいなかった。

 むしろ、(わたくし)よりも焦りに感じている。そういう眼だった。

 それなのに、(わたくし)をなだめようと、なんでもないように接してくれる。

 「アキト…」

 リナに何かあったのではないか。

 そんな、漠然とした不安。

 もう、二度と戻れないのではないのか。

 そんな、焦りに似た恐怖。

 それらすべてを押し殺して、彼の手を取る。

 大丈夫。大丈夫。

 言葉にできない感情を手にこめる。

 リナは無事よ。彼女は必ず帰ってくるわ。

 リナのためにも、彼女を案じるアキトのためにも。

 ねえ、リナ。あなたは今、(わたくし)の身体でどうしているの!?


     ⇔     ⇔     ⇔     ⇔


 時は、少しだけ過去に戻る。


     ⇔     ⇔     ⇔     ⇔


 「姫と俺の問題」

 この王子の発言は、私をどうしようもなく重くさせた。

 たしかに、王子がアデライードさんとセフィア姫という、ムカつく二股をかけようと、私には関係のない話だ。私は、ひょんなことでセフィア姫の身体に迷い込んでしまっただけの立場だし!? 夫婦のことにとやかく言える筋合いはない。

 それこそ私は、TVとか映画を見ているような傍観者でしかなくって、そこに登場する、主人公たちに、あーやこーやと文句を言える存在ではない。

 わかってる。わかっているけど…。

 こういうの、「鉛を詰め込まれた」って表現するのかな。

 身体が重い。心が重い。

 気分転換にと、身体を動かす。そんな気力すら湧いてこない。

 外に出るのも億劫になりそう。

 「姫さま…」

 そんな私を、アンナさんが心配そうに見てくる。わざわざ、セフィア姫の故郷からついて来た彼女だ。元気のない自分の娘をあんじるように、私を気づかってくれるのだろう。この日は、ジャンヌさんを伴って、私の元を訪れていた。少しでも、私の気が晴れるように、彼女たちは、精一杯頑張ってくれている。

 「姫さまのご希望どおりのドレスが縫い上がりました。是非、ご覧くださいませ」

 ジャンヌさんが、私の目の前にドレスを広げた。

 私の、いや、セフィア姫の目の色と同じ、深い青色のドレス。私が注文したように、くるぶしまであるようなスカンチョの上に、長めに巻きスカートのように布をかぶせることで、乗馬していても、足を開いていることがバレにくい構造。女性の足のラインが丸見えなのはとんでもないことだとされるこの世界では、ちょうどいい形のドレスだった。普段着としても、使い勝手が良さそうなドレス。

 今までなら、「きゃー、こんなの欲しかったのー」とか、ジャンヌさんにお礼を言って、「またご乗馬ですか!?」ってアンナさんに呆れられながら出かけるんだったんだけど。

 「よろしければ、今日はご乗馬などいかがですか!? せっかく新しいお召し物も出来上がったことですし。天気もよいので、楽しゅうございますよ」 

 今じゃ、立場が逆になってる。

 アンナさんが、乗馬を勧めてくるなんて。

 でも、これ以上、彼女たちを心配させるのも良くない。

 「ええ。せっかくのドレスだもの。出かけてくるわ」

 無理矢理にでも笑顔を作る。

 ふさぎこんだままでいるのも嫌だけど、心配され続けるのは、もっと嫌だった。

 

 私が乗馬出来る範囲は限られている。

 王子が用意してくれた馬で、王室専用の馬場を駆け回るだけ。

 初めてここに来た時は、ムダに広い、こんなのゼイタクすぎでしょとか思っていたけれど、乗馬の腕も上がってくると、ここは狭い。そう感じるようになっていた。

 ちょっと馬を駆けさせただけで、すぐに敷地のスミに到着して、馬首をめぐらせなくてはいけない。スピードが出ても、すぐにゆるめなくてはいけない。

 もっともっと駆けさせたいのに。

 もっともっと風を感じていたいのに。

 息苦しい。

 まるで、今の私みたい。

 それでも馬を走らせるのは、少しだけ心地よかった。

 誰とも会わずにいられる。

 何にも考えずにいられる。

 ひとしきり馬を走らせていると、困ったような顔で馬丁のおじさんが近づいてきた。

 「お客さまが、お見えです」

 おじさんの送った視線を追いかける。

 そこにいたのは…。

 「アデライードさん…」

 「姫さま、ごきげんよう」

 彼女が優雅に笑う。

 そう。彼女は。

 いつの間にか、私に面会を求めなくても、自由に王宮に出入りできる立場になっていた。


 アデライードさんを王宮に出入り自由にしたのは、誰でもない、王子だ。

 私の友だちだから、もっと気軽に会いに来て欲しい。そう言ったのだという。

 アデライードさんは、王子の魂胆を知ってか知らずか、王宮に来るたびに、必ず私のもとを訪れる。

 友だちなんだから。

 彼女が、そういう気持ちでいてくれてるのか。

 それはわからない。

 ただ、彼女に会うと、私の心はまたもやグイッと引き戻される。ドカドカと鉛を追加投入されたようなカンジ。

 アデライードさんが悪いわけじゃない。

 そう思うのに、心がモジャモジャとからまって、グチャグチャなモヤモヤした気分になる。

 「ごきげんよう」

 精一杯感情を隠して、笑顔であいさつを交わす。

 …ああ、もう。

 こんな私、大ッキライ。

 今回で、なんと40話ですよ!!

 ブクマをつけてくださった方、閲覧していただいた方、評価くださった方。皆さま、本当にありがとうございます。

 おかげさまで、ここまでこぎつけることが出来ました。これだけ続けられたのも、見てくださる方がいらっしゃるからこそです。PV0とかだったら、きっとズンドコに落ち込んで、そのまま浮上出来ずに、そのまま永遠に次話投稿しないと思う…。潜水艦、いや、沈没船状態だったハズ。

 今、物語は、ちょうど後半戦に入ったところでしょうか。起承転結の「転」でございます。

この先どうなっていくのか、まだまだ未定ですが、一応ハッピーエンドということだけは決めているので、そこまでお付き合いいただけたら幸いです。(長いこと読んでいただいて、バットエンドはちょっと…)

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