他人(ヒト)の身体で、勝手に結婚するってのはアリですか!? 【31】
いやあ、入れ替わりっていいねえ~。
放課後、サイコーにいいテストの結果に、顔がゆるむ。
いつもなら、追試どうするよっ!? って私の成績が、クラス一の才女なんじゃね!? ってレベルになってる。
友だちの、カンニング疑惑には、ビミョーな気分になるけど、それでも、うれしいものはうれしい。順位の発表が待ち遠しい。どれぐらいアップしてるかな!? 成績、メッチャ良くなってたら、お母さん、何かご褒美的なもの、買ってくれないかな。
あー、でも。一番感謝しなくちゃいけないのは、セフィア姫か。
彼女が目の前にいたら、好きなだけあのプリンを買って食べてもらうのに。限定品だってなんだって、姫さまのために全力で買いに走って、好きなだけプレゼントするのに。
「あのさ…」
そんなホクホク顔の私にむかって、神妙な面持ちで暁斗が切り出した。
「大事な話があるんだけど。…いい!?」
帰り道、立ち寄った公園で話をすることにした。
家に帰ってから聞いても良かったんだけど、なんか、暁斗の顔を見てたら、急に不安になって。家までの時間がもどかしかったんだよね。
公園は、もう夕暮れも過ぎ藍色の空気に包まれ始めていた。遊んでいる子も、もういない。
公園の一番人気の遊具、ブランコに腰掛ける。そのむかい、柵にもたれかかるように暁斗。
「で、話ってなに!?」
早く、聞きたい。
「なあ、今日って何日だ!?」
うえ!?
「何日!?」
「えーっと。10月14日…だっけ!?」
イキナリ、なんの質問!?
誰かの誕生日だっけ!? 私のはまだだし、暁斗は5月だし…。夏樹は4月だ。…はて!?
「じゃあ、前にこちらへ戻れた日は!?」
「ええっと…」
あれは確か、学校のあった日だったから…。
「9月30日だよ」
答えられなかった私に代わって暁斗が告げた。
「そして、その前の戻れた日が、9月の16日。なあ、このイミわかるか!?」
………!? どゆこと!?
「つまり、君たちは約2週間毎に入れ替わってるんだ」
「2週間っ!?」
そんなに長かったっけ!? 指折り日数を数えてみる。
確か、入れ替わって王都を離れて旅行して。アデライードさんに会って、私が動けなくなったから、王都に戻るのが一日遅くなって。心配したアンナさんに泣きつかれて…。
「あ、ホントだ…」
指はキッチリ十四日をカウントした。小指だけ曲げてない、中途半端な指折り。
「ねえ、なんかこの数字にイミがあるのかな!?」
数えてみても、イミが理解できない。
「あのさ。今日の月はどんな月!?」
ええっ!? ちょっ、質問に質問をかぶせないでよ。
「えーっと…」
月、月、月、月…っと。
視線をさまよわせる私に、んっと暁斗が指差した。東の空にボヨヨンッとまん丸な赤い月。結構デカい。
「あ、満月…」
暁斗が頷く。
「そして、9月30日は新月だった。16日はまた満月」
「それってどういうことよ!?」
なかなか導き出せない答えに、もどかしくなってイラつく。
「潮汐力って知ってるか!?」
「チョウセキリョク!?」
超咳力…、長石緑…。朝関旅苦…。ナニソレ!?
「月や太陽の引力で、海面が引っ張り上げられる力のことだよ」
おお!? 地学が物理の話ですか!?
「海に、潮の満ち引きがあるのは知ってるよね!?」
「うん」
バカにするな。
「その満ち引きの差が一番激しいのが大潮。月と太陽と地球が一直線に並んで、月の潮汐力と太陽の潮汐力が重なり合うからなんだけど…」
…!? …!? …!? …!? ナンノコト!?
「まあ、遠く引き寄せる力って認識してくれればいいよ」
暁斗が軽くため息をついた。
「満月や新月の時はヒトの出産が増えるとか、事件事故、犯罪が増えるとか、まあ、まだまだ研究されるべきことがイロイロ言われているけど…。それでも、何かしらの力が働いていてもおかしくはないと思う。実際、海の生き物は大潮のときに産卵するし、満月を見て狼男は変身するって言うし」
暁斗がボヨヨン月を眺めた。つられて、私も眺める。
「ちょっと話がそれたけど、もしかしたらその潮汐力、みたいなものが、里奈とセフィアさんの間にもあるんじゃないのかなって。そう思ったんだ」
遠く引き寄せる力。それは、遠い、次元の違う異世界とも引き合うのだろうか。
「どうしてセフィアさんと里奈が引き合ってるのか。それはわからないけど、それでも確実に言えるのは、君たちは満月、新月という、一番潮汐力の大きい日の前後に、必ず入れ替わっている」
「そう…なんだ」
「寝ると入れ替わる、一日たつとまた入れ替わる。そのメカニズムまで解明することは難しいけれど…」
暁斗が、私に向き直った。
「今度、もし入れ替わったとして。戻れるのは10月28日。次の新月の日だと思う」
ってことは。向こうに行っても、いつ戻れるか不安になるより、その日の月が満月なのか、新月なのか調べたほうがいいってわけね。
「…って、アレ!? ねえ、新月って見ること出来たっけ!?」
「いや、まずムリ。というか見えない」
…そうだよね。うわ。どうしよ!?




