他人(ヒト)の身体で、勝手に結婚するってのはアリですか!? 【30】
私は、またも入れ替わってしまったリナの代わりに、「チュウカンテスト」と呼ばれる試験を受けることとなった。
今まで学んだことを、どれだけ認識しているのか。それをためす試験なのだと、アキトから聞いた。
…私に、出来るのかしら!?
不安が心を占める。
けれど、ここにリナがいない以上、私がリナである以上、試験を受けるのは、私しかいない。
「僕も、出来る限りお手伝いしますよ」
そうアキトが請け負ってくれた。
彼だって、同じ試験を受けなくてはいけない身なのに。私のことより、自分も勉学に励みたいでしょうに。
「ヒトに教えると、自分でも理解が深まるからいいんです」
アキトがニッコリ笑う。
…彼、本当に優しいわ。
実際、自分一人で臨むには厳しい部分もあったので、彼に教えを請えることは、とてもありがたかった。
アキトは、毎日、夜遅くまで私につき合ってくれた。
語学、歴史、算術、化学…。
語学はまだどうにかなりそうだったけれど、問題は歴史だった。
この世界の歴史を、私は知らない。
教本の文字を目で追うことは出来ても、その内容を理解し、出来事を把握するのは、かなり難しかった。
「フランク王国」「シャルルマーニュ」「トゥール=ポワティエ間の戦い」「イスラム教」「正統カリフ」「十字軍」「リチャード1世」「ハールーン・アッラシード」…。
知らない単語が次々と現れる。そのたびに、アキトは私に、細かく説明してくれた。
「この世界でも、戦争は行われていたのね…」
勉強のさなか、私はそんなことを口にした。
この世界の歴史は、私たちの世界の歴史に似ている。戦い、滅び、征服され、そして文化が交わり、新しいものが生み出される。
宗教、権力、国家、文化。それらがぶつかり、歴史を紡いでいく。
平和に見えたこの世界にも、そのような歴史があったことに、軽く驚きを覚えた。
「セフィアさんの世界にも、似たようなことがあるんですか!?」
「ええ。私の故郷、ルティアナ王国は、嫁ぐ予定だったローレンシア王国と過去に何度か戦火を交えているわ」
「よければ、詳しく教えてもらえませんか!?」
興味深げに尋ねるアキトに、私は、知っている限りのことを話した。
ルティアナ王国は、その昔、ローレンシア皇国の一部であったこと。その後の歴史で独立し、王国と名乗るようになったこと。ローレンシアは時代とともに領土を失くし、王国となってしまったこと。近年は、新興国のヴァイセンに領土を侵される身となり、過去のわだかまりを捨て、共に手を取り合うようになったこと。私と殿下の結婚は、そのためにあること。
私のつたない説明でも、アキトは嫌がらずに聞いてくれた。
「…マリー=アントワネットみたいですね」
誰!?
「こちらの世界でも、いがみ合っていた国同士が新たな共通の敵に立ち向かうために、政略結婚した、という事例があるんです」
「それが、マリー=アントワネット…」
どのような、女性なのかしら。
私と似たような境遇にあった女性がいたのなら。その方の人生を、人となりを知りたいわ。
「その方は…」
問いかけて、口をつぐむ。
「なんでもありません…」
アキトが怪訝な顔をしたけれど、質問を止め、勉強に戻る。
聞きたかったことは、ノドの奥に詰まったように引っかかって出てこれなかった。
飲み込むことも出来ずに、胸に大きくつっかえる。
アキトも、それ以上、私に問いただすこともなく、また元のように勉学に戻っていった。
―――その方は、どのような運命を辿られたのですか!?
―――その方は、夫となった方に、愛されたのでしょうか。幸せだったのでしょうか。
⇔ ⇔ ⇔ ⇔
そして、また条件もわからないまま。
おかえり、私。ただいま、私。
私は元の、普通の高校生だった自分に戻る。
ああ、なつかしの私の身体。
ペタペタと、自分の身体を触りたくる。
そうよ、これこれ、この感触。
肩にかかるかどうかの寝癖がつきやすい、ちょっと硬めの髪。
若いってハリがあっていいわねー程度の、日焼けた肌。
スラッとか、シラウオなんて無縁の指。
スカートを留めることが出来る程度に存在するくびれ。
揉めば、手のほうが余るサイズの胸。
…あ。
最後の2つは、言ってて悲しくなるぞ!?
まあ、それはそれとして。
「なんだ。姉ちゃん、戻ってきたのか」
なんて言う夏樹の反応もムシしておいて。(ハラ立つけど)
久しぶりに足を運ぶことになった学校に、私はビクビクしていた。
暁斗とのヘンな噂ももちろんだけど、それ以上に、テストの結果がコワい。
だって、私、一回もテスト受けてない。
帰ってきたら、テスト、終わってるんだもん。
病気で受けられなかった場合は、追試という救済策があるけど、「入れ替わり」で本人不在の時は、誰も助けてなんてくれない。
セフィア姫の出した結果を、私が受けることになる。モロに。
「セフィアさんなら、大丈夫だよ。いっぱい勉強してたし」
そう言って、暁斗が慰めてくれた。テストのために、暁斗が姫さまに勉強を教えたんだって。
そうか、そうか。暁斗、優しいな。
でも、いくら頑張っても、異世界の姫がテスト、大丈夫なわけ…。
ええええええええっっ!!
返ってきた答案に、私は、目ン玉がビヨヨ~ンッとなりそうなほど驚く。
古典、89点。数ⅡB、77点。化学、82点。英Ⅱ、93点。そして、世界史、95点。
ウソでしょ!?
私が一度も取ったことない点数がズラズラと並ぶ。
マジで!? ありえない。
セフィア姫、美人なだけでなく、メッチャ頭良かったんだ。
信じられない思いで答案を見る私に、友達から質問が飛ぶ。
「どんなウマいカンニング方法見つけたのよ」
…それ、ヒドくない!?
カンニングなんてチートなことはしてないわ。入れ替わってもらってただけだよ。
これからは、テストのたびに姫さまに入れ替わってもらおうかな♪
そうすりゃ、大学受験も楽勝♪ 楽勝♪
…これぞまさしく替え玉受験!?
評価、ブクマをつけてくださった方、閲覧していただいた方。皆さま、本当にありがとうございます。
とうとう、30回目!!ですよっ!! パチパチパチパチ(拍手)
長く続いたなあ~、たくさん読んでいただけたなあ~、うれしいなあ~と思っております。総合ポイントがUPした時は、毎度ニマニマしております。
ここまで続けられたのも、皆さまのおかげ。閲覧、ブクマ、評価がつかなくても、オール0でもめげずに毎日投稿を目指す!!と自分で公約を掲げていますが、気持ちがヘタれることなくここまでこれたのは、やっぱり皆さまのお力です。
これからも、どうかよろしくお願いいたします。m(_ _)m




