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他人(ヒト)の身体で、勝手に結婚するってのはアリですか!? 【20】

それからというもの。

 王子は、毎朝、今の私が入れ替わっているのかどうか確認して、その上で、さんざんいろんな所へ連れ回した。

 アンナさんが、「姫さまに面会を求めている貴族の令嬢たちがたくさんいる」ってなことを報告に来てくれたけど、王子はそのすべてを無視した。

 「一度ぐらい、面会したほうがいいんじゃない!?」

 そう訊ねた私に、

 「お前が姫のフリをしたらボロが出る」

 と一刀両断された。

 まあ、確かに。私に姫さまは無理だ。

 この間も、頑張って姫さまスマイルをしてみたら、「気持ち悪い」と言われた。

 顔が、強ばってるんだって。顔の作りが美人なぶん、そのぎこちなさが、かえって気持ち悪いらしい。

 その上、マナーも何も知らないのだから、王子の言うとおり、誰にも極力会わないほうが良いに決まってる。

 だけどさ。

 だからといって、毎日連れ回さなくってもいいんじゃない!?

 そりゃあ、ヘンな作り笑いしてるより、馬に乗ってるほうが気が楽だけど。王宮のなかより、外の空気のほうが気持ちいいけど。

 でも、そのおかげで、周囲からなんて言われてるか、王子、知ってるの!?

 「殿下は、セフィア様に夢中だな」

 とか、

 「かなりのご執心ぶり」

 とかいうのはまだいい方で。

 「昼も夜も手放されないとは。よほどの手管をお持ちなのでしょう」

 とか、

 「あの美貌に惑わされない男はおらぬでしょうな」

 とか。

 極めつけは

 「これなら、お子の誕生ももすぐでしょうな」

 なんてのもあるのよーっ!!

 うっかり誰かの前でアクビでもしようものなら、もう…。

 「お盛んなのね」とか「眠れぬほどに…」的な言葉が囁かれたり。

 うげー。やめてよ、もう。あからさますぎ。

 こっちは結婚式のキス以来、何もしてないし、アクビだって、連れ回されて疲れて出たものであって、それ以上のものではないんだってば。

 周囲の誤解を片っ端から解いていきたい。出来るものなら。

 それが出来ないから悩むのよね。

 王子が言うには、私たちがラブラブなように見せかけといたほうがいいんだって。

 このローレンシア王国と、姫の母国、ルティアナ王国が良好な関係にあることをアピールするためにも、ニセのラブラブ、イチャコラを見せつけたほうがいいらしい。

 そうか、王子や姫の恋愛には、背後に国家間の思惑も関わってるもんね。

 …って、理解したところで、納得できるかーっ!!

 そのせいで、そのせいで。

 私、男色家だった王子を惑わせた、ものすごいテクニックの持ち主、なんてことにされてるんだぞっ!!

 納得いかない。


 その日は、王子の父である王さまとの晩餐に出席する、ということになった。

 イヤだー、回れ右ってしたいっ!! と思うんだけど、そうはいかない。

 ごくごく内輪だけという誘いだったし、息子夫婦と団らんを楽しみたいという王さまの申し出をむげにすることは出来なかった。お父さんの気持ち、わからないでもないし。

 腹をくくって王子とともに参加する。

 晩餐の席には、私と王子、そして結婚式のときに見た王さま、そして、…!? 若い女の人!?

 誰!?

 「父の公式愛妾だ」

 …愛妾!? 公式!?

 王子がボソリと教えてくれたその立場に、頭が???になる。

 愛妾って、ようは不倫相手でしょ!? 愛人でしょ!? それが公式!? 誰かが、この人は王さまのれっきとした愛人ですよ~って認めるわけ!? ってことは、非公式とかもいるわけ!?

 うわ~、なんかヤダ。

 でも、こんな内々のっていう晩餐にいるんだから、それが普通の世界なんだろう。王子も嫌そうな顔してないし。

 こういうの、『ベルばら』とかにいたよな~。なんだっけ!? デュ・バリー夫人!? ポリニャック夫人!? ってことは、私、「今日のベルサイユは大層な人出ですこと」とか言わなきゃダメかな。マリー・アントワネットポジション。よくわかんないけど。

 艶然と微笑む、ホニャララ夫人。(ロワイユ夫人という名前は、あとで教えてもらった) 黒い髪と真っ赤な唇が印象的な女性だった。まだ多分30になっていないと思う。貫禄あるまでに老けた王子のお父さんと比べると、かなり若い気がする。

 私も頑張って微笑んだほうがいい!?

 そう思って笑みを作ろうとしたら、王子に「ムダな努力」と切り捨てられた。

 むう。

 私だって、この姫さまの顔でなら、それなりの笑顔が作れると思うんだけどな。

 ちょっと不満に思いながら王子の隣の席につく。

 まあ、一番頑張らなきゃいけないのは、笑顔対決じゃないし。

 王さまや夫人との適度な会話もそうだけど。難関は、そのテーブルマナーだった。

 テーブルにズラッと並んだ、フォークやナイフ、サイズ違いのスプーン。

 これ、どうやって使うの!?

 ファミレスなんかで、ゴサッとケースに一緒くたに入れられて用意されているのとワケが違う。もちろん、箸なんか用意されてない。

 内々の晩餐って、普通に家族の夕食レベルじゃないの!? どうして、こんなに品数多く出てくるのよ。

 噛み箸、舐め箸、渡し箸。刺し箸、立て箸、迷い箸…。お箸のマナーならある程度知ってるけど、こういう洋風、満漢全席フルコース的なものは…。

 どうしよう。ググりたい。

 どこかにスマホないの~!?

 とりあえず、こうなったら出来る人のマネをしていけばいいよね!?

 ということで、隣に座った王子のマネを始めていく。

 スープは手前から奥にスプーンを動かす。並んだフォークとかは、外側のものから。パンを食べるのは、スープを飲み終わってから。えーい、めんどくさい。

 「姫さまのような素晴らしい方を殿下の妃に迎えることが出来て、本当にうれしく思いますわ」

 …ちぎったパンは一口サイズ。

 「これで、この国とルティアナ王国の絆は、一段と強く結ばれましたわ」

 …お魚はひっくり返さない。骨をどけて下の身を食べる。

「姫さま、今度ぜひ、私どものサロンにも足をお運びくださいましね」

 …デザート用のカトラリーは遠くにある小さいやつ。

 恥をかかないためのテーブルマナーと、姫じゃないことがバレやしないかというドキドキとで。食事のおいしさなんて味わってるヒマなんてなかった。

 というか、食べていられなかった。

 チョイチョイっとつついてハイ終わり。次の料理どうぞ。

 うう。箸でなら、さっきのお魚もちゃんと食べられたのに。普段なら、こんなぐらいの量、なんてことなかったのに。

 コルセットが邪魔して、お腹が物理的に膨らむまで食べることが出来ない。

 お肉、美味しそうだったのに。

 私がイロイロと困っていることが伝わったのか、王子がこちらをむいて笑いかけてくれた。完ぺきなまでの営業スマイルで。

 これにはさすがに対応しなくちゃいけないよねと、フォークを持つ手を止めて、肉から目を離し、こちらも笑顔で返す。

 「まあ。初々しこと」 

 それを見た夫人が、向かいの席から微笑んだ。

 「これなら、お世継ぎの誕生も、そう遠くはありませんわね、陛下」

 「うむ」

 王さままでが満足そうに頷いた。

 …モガ。モガモガ。グフッ。

 大きくノドを鳴らして、口の中にあったものを飲み下す。

 いやいやいやいや。マナーうんぬんの場合じゃないよ。

 そういうの、マジでカンベンしてほしい。

 期待はナシの方向でいてよ。

ブックマークをつけてくださった方、PVという足跡ををつけてくださった方、ご評価くださった方。みなさま、本当にありがとうございます。

みなさまのおかげで、ヘタれることなく20話!!を達成することができました。ワーイワーイ。

このさき、まだまだお話は続くと思いますが(予想では、毎日投稿でも、11月までかかりそう)、よろしくお願いいたします。

できれば。できればでいいのですが。文章評価のほうを、どなたか辛辣に(でも中辛程度で)つけていただけると、スゴくうれしいです。…方言使ってないか心配なのよ。(その昔、高校で小論文添削中に、「方言注意!!」と国語の先生から言われた。文章内に平気で使っているらしい…) もし。もしも方言!?みたいなのを発見された方は、なるべくこっそりお教えくださいマセ(笑) 

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