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他人(ヒト)の身体で、勝手に結婚するってのはアリですか!? 【2】 

 私が驚いてパニックになってる間に、メイドさんたちは慣れた手つきで、私を脱がせドレスを着せ、髪をくしけずり、結い上げていった。

 あっと言う間だったし、呆然としていたので、気がつけば私はお姫さまに変身していた。

 残ったのは、姫さまスタイルの私と、初老のオバさん。メイドさんは仕事を済ませると、サッサと部屋から出ていってしまった。

 出来上がった自分を何度も鏡で確認する。

 見事なまでのお姫さま。

 これで、普通の女子高生なんて言っても、誰も信じないに違いない。

 自分でだって信じられないんだもん。

 夢!?

 それにしてはよく出来ている。

 「姫さま」

 そばに控えていたオバさんが声をかけてきた。

 とりあえず、鏡の自分に手をふるのをやめる。

 「今日は、殿下がお戻りあそばされます」

 「殿下!?」

 「はい。先ほど、知らせの者が参りました。本日中には、ご城下へ戻られるとのことです」

 姫さま!? 殿下!? ご城下!?

 うわ、なんかファンタジーな用語がポンポン出てくるよ。

 「これで、つつがなくご婚礼が上げられるというもの」

 へっ!?

 婚礼!?

 「姫さまが輿入れされたのに、なかなか式を上げられず…。これで、やっと…」

 オバさんが感極まったように涙を零した。

 ええっ!?

 いきなり、結婚っ!?

 何がどうなってるのかわかんないのにっ!?

 それに、まだ私、16だし、未成年なんだけどっ!?

 チョット待って。どういうことなのか、誰かチュートリアルください。マジで。

 「あのさ…」

 「なんでしょうか」

 ズズッとオバさんが鼻をすすり上げた。

 「結婚って…、しなくちゃいけない…、かな!?」

 「は!?」

 「いや、だって、私、よくわかってないんだけど…」

 今、どういう設定か、全然理解出来てない。

 「姫さま、何をおかしなことをおっしゃてるんですか」

 ガシイッと腕をつかまれる。

 「この婚姻は、王国との和平のために結ばれたもの。こちらの都合でどうにかなるものではありません」

 ええ!? そうなの!?

 「王子のお噂を耳にされて、お気持ちが不安になられたのはわかりますが。それでも、この婚姻は我が国のためにもなかったことには出来ないものなのですよ」

 ちょっ、何!? 噂ってなにさ。

 「ねえ、ゴメンナサイ。…噂って、…何!?」

 上目遣いで訊ねてみる。

 「お忘れなんですか!? 昨日、あんなに取り乱していらっしゃったのに!?」

 「うん。ゴメン。もう一回、教えてくれる!?」

 だって、この身体の持ち主はご存知かもしれないけど、私は何も知らないんだから教えて欲しい。

 「大したことではありませんよ」

 大げさにオバさんが息を吐き出した。

 「王子に男色の気があるとか、女を愛さないとか。まあ、他愛のないことです」

 いや、男色って。BLじゃん。ついでに女を愛さないって、結婚相手として、どうなの!?

 「王子にどのような性癖があろうとも、この婚姻は絶対です。姫さまもお心を強く持たれて、その日に備えてくださいまし」

 うええっ!?

 「大丈夫ですよ。姫さまほどお美しい方なら、きっと殿下も愛してくださいますよ」

 そりゃあ、この容姿なら、大抵の男は見惚れると思う。鏡の中の自分は、それほどまでに美しいお姫さまになっているのだ。

 「殿下も、王子としての責務はわきまえていらっしゃるでしょうし。噂など、お気になさることはございませんよ」

 ポンポンっと肩を叩かれた。

 「さあさ。今日はどのように過ごされますか!? いいお天気ですし、お庭など、散策されてはいかがですか」

 気も晴れますよと、オバさんが勧めた。

 普段の私だったら、ここで面白半分に部屋を出るんだろうけど。

 「後で行くわ」

 曖昧な返事で、オバさんを部屋から追い出す。具合が悪いのかと心配するオバさん。

 そうじゃないの。ちょっとだけ一人になりたいのと、この顔だから出来る、最上級の笑顔を作ってみせた。いつもの自分ならこんな顔は絶対しない。気色悪いよ、この作り笑い。

 静かになった部屋で、ヨロヨロとベッドにむかう。

 ポスッ。

 柔らかすぎるベッドに突っ伏す。

 …何この世界。

 私が姫で!? もうすぐ結婚することになってて!? 相手はBLの王子!?

 どういう状況よ!?

 考えれば考えるほど、イヤな状況だって思う。

 16で、見たこともない相手と結婚なんて出来るかっての。そりゃ、イケメンだったら、ちょっとはいいかな~って思わなくもないけど。ホモなんでしょ、その人。王子ってお金持ってそうだけど、イケメンそうな職業ではあるけど。でもなあ…。ホモじゃなあ。

 何度考えても、そこが引っかかる。

 自分が、こんな美人の姫さまになったというサプライズを入れても、ホモ案件は大いにマイナス要素だ。赤字決算。

 政略結婚だから、愛がなくても、私を抱いちゃうんだろうな。

 つまり。

 あーゆーことや、その、こーゆーことを…、しちゃうわけで…。

 ……………。

 ダメ。

 頭のキャパ、オーバーしちゃいそう。

 寝よう。

 寝たら、きっともとに戻る。

 こんな変な夢、忘れるためにも寝てしまおう。

 さよなら、美人の私。

 さよなら、とんでも設定。

 私、寝ます。

 寝て、ただの女子高校生という現実に戻ります。

 次に目が覚めたら、いつもの私の部屋よ。

 そう思って目を閉じる。

 ちょっと強引に、ぎゅ~っとキツめに。

 けど。

 どれだけ眠ろうとしても、意識がまどろんでいかない。

 姫さま。結婚。王子。ホモ。

 その単語がずっと渦巻いてる。

 …結局。

 私はオバさんが呼びに来るまで、ベッドの上でジタバタして過ごしただけになってしまった。 

 ねえ、この夢、覚めるんだよ…ね!?

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