表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/72

他人(ヒト)の身体で、勝手に結婚するってのはアリですか!? 【18】

 私たちの入れ替わりはかなり不定期なのだろうか。

 何日も入れ替わったと思ったら、たった一日だけ元に戻って。元に戻ったと思ったら、また入れ替わって。

 こんなの、聞いたことない。

 いや、入れ替わり自体、そんな聞く話でもないけど。

 それでも、こんなこと二度もあるなんて思ってもみなかった。

 目が覚めた私の前には、はだけた服からのぞく、王子の筋張った首筋。少しくぼんだ鎖骨。なんというのか…色っぽい。

 そして、私の方もあのネグリジェ着用。

 うわうわうわうわ。

 何これ、ナニコレッ!?

 姫さま、昨夜は王子と、そういうことをしたわけっ!?

 結婚はしてるわけだしっ!? これは姫さまの身体なんだから、姫さまがどうしていようと構わないのだけどっ!?

 けど、目が覚めてイキナリこれでは、こっちの身が持たない。

 心臓バクバク。ムダな汗が吹き出してくる。

 「…んっ…」

 軽く呻いて王子が身体を動かす。

 「…姫!? お目覚めですか!?」

 はいとも、ウンとも言えずにいると、手を伸ばされた。サラリと髪を梳かれる。

 なんか、その仕草があまりに自然すぎて、どうにも落ち着かない。

 まだまどろんでいるかのような、気だるげな瞳でこちらを見られても…。

 その、…困る。いろんな意味で。

 「あのっ、王子っ…」

 どう告げようか悩んでいたら、急に王子が目をしばたかせた。

 そのグリーンの瞳に、いつもの光が戻ってくる。

 「…リナ!?」

 はい、とばかりに頷いてみせる。

 「姫は!?」

 「あのっ、また入れ替わっちゃいました」

 アナタの愛した姫でなくてゴメンナサイ。


 王子から一定の距離をとってから、服を直す。そうしないと、このネグリジェ、肩がずり落ちちゃうのよね。王子のほうもしっかり目が覚めたようで、ため息とともに身体を起こした。

 「で!? また入れ替わったってのは、どういうことだ!?」

 ぞんざいに髪をかき上げながら王子が言った。その声、ちょっとイラついてる。

 「えーっと、あの、ですね。私にも、くわしくはわからないんですが…」

 指をゴニョゴニョいじりながら答える。

 「セフィア姫が、私の世界に行っちゃって、私がまたこっちに来たってことで…」

 「そんなことはわかってる」

 あ、そうなんだ。

 「次は、いつ入れ替わる予定なんだ!?」

 「えっと…、それは…その」

 「ハッキリ言えっ!!」

 「そんなのわからないんだってばっ!!」

 思わず叫んだ。

 「わかってたら、入れ替わらないわよっ!! 入れ替わる条件も理由も、まったくわからないんだもんっ!! 次の入れ替わりがいつかなんて、私にもわからないのよっ!!」

 そう。まったくわからないのだ。

 どうして入れ替わっているのか、理由もわからないのに、次はいつかなんて聞かれても困るだけなのだ。

 こんなの、別に続けたくて続けているわけじゃないし、入れ替わりたくて入れ替わってるわけじゃない。

 なんとなく、自分の身体となってしまった姫を見下ろす。悔しいぐらい立派な胸のある身体。ネグリジェをこれでもかってぐらい押し上げてる、その存在がうらやましい。

 勢い込んで答えた私を見て、なぜか王子がニッと笑った。

 「では、今日一日はずっとお前で、今後はいつ姫が戻ってくるのか不明。そういうことだな!?」

 「え!? まあ…、そういうことに、なりますか、ね」

 「ふむ…」

 王子の理解は意外と早かった。

 「なら、しばらく、俺につき合え」

 「ほえ!?」

 「お前に、イイものを見せてやる」


 王子が連れて行ってくれたのは、王宮の一角にある、だだっ広い空間だった。王族専用の馬場なんだって。近所の公園ぐらいはある。ちょっとしたキャッチボールやサッカーなら余裕でできそう。これを、王族(特に王子)専用に使うだなんて。なんてゼイタク者なんだ!?

 「これが、俺の愛馬だ」

 そう言って、王子が馬丁から手綱を貰い受けたのは、白い立派な馬だった。競馬なんかで見るような、足の細い、でもしなやかな体格の馬。

 間近で見る馬は大きくて、顔なんて見上げなければ見ることも出来ない。そして馬面。…当たり前か。

 慣れた手つきで王子が馬にまたがる。

 おおー。まさしく「白馬の王子さま」だわ。

 なんてヘンな感動をしていたら、グイッと身体を引っ張り上げられた。

 え!? えっ!?

 気がつけば、私も馬上の人になっていた。横座りで、王子と一緒に座っている。

 「馬に乗った経験は!?」

 「あっ、ありませんっ!!」

 馬の上って意外と高い。そして、王子との密着度がハンパない。

 ちょっと怖いのとアレで、メッチャドキドキする。

 「なら、ここで少し慣れていけ」

 へっ!?

 「この世界で、馬は必須だ」

 そう言って、馬をっ!! 馬をっ!!

 ドカカッ、ドカカッ、ドカカッ、ドカカッ…!!

 馬、走ってるっ!!

 それも、かなりのスピード。

 「ちょっ、ちょ、お、王子っ!!」

 馬の躍動に合わせて、身体が大きく揺れる。右へ左へ上へ下へ。

 振り落とされるっ!!

 「ははっ。しっかりつかまってないと、振り落とされるぞっ」

 笑いながら言うな~。

 こっちは必死だってのっ!!

 目を開けるのも怖い。ただただ力いっぱい王子にしがみつく。

 ユッサユッサと身体を大きく揺さぶられた後で、突然のように馬が止まった。

 あれ!? 終わり!?

 目を開けると、王子がスルリと馬から降りた。

 へっ!?

 「ここからは、自分で乗りこなしてみろ」

 「ええっ!?」

 馬に!? 私が!? どうやって!?

 幸い!? 手綱はまだ王子が持っていてくれている。けど、降りることは許されなさそう。

 大きく深呼吸して、覚悟を決める。

 えーい。こうなったらヤケだ。

 持ち前の運動神経でどうにかしてやるっ!!

 (くら)の上で体勢を変える。

 「おっ!?」

 王子が軽く驚いていた。

 ドレスの裾は、…この際だ。気にしない。足ぐらい見せてやれ。

 (あぶみ)に足をかけ、前方を見据える。

 確か、王子はこうやって乗っていたよなってのを思い描きながら、背筋を伸ばす。

 「うわあっ……」

 さっき乗せてもらったのと違って、自分から正面をむいて眺めた景色はとても新鮮だった。見晴らしが良い、というか、すごく高いのに気持ちいい。

 髪が風をはらむ。下から伝わる馬の揺れ。

 王子から手綱も渡された。ホントにここからは自分で乗れ、ということなのだろう。一応、(くつわ)の部分を王子が持っていてくれているけど、基本自分で操らなきゃいけないみたい。

 よーしっ。やってやろうじゃないの。

 妙な高揚感とともに、馬を前へと歩かせ始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ