表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/72

他人(ヒト)の身体で、勝手に結婚するってのはアリですか!? 【16】

 世の中って素晴らしい。

 街路樹からこぼれ落ちる、陽の光。

 煌めくような光の粒。

 その粒をそよがせる、朝の爽やかな風。

 夜が明け、照らし出される町並み。朝の光に洗われた街は見慣れているはずなのに、新しい、見知らぬ景色のような印象を受ける。

 街って、こんなにキレイだっけ!?

 朝って、こんなに清々しいものだっけ!?

 生きてるって、こんなにキラキラしく素晴らしいものだっけ!?

 駅へ急ぐリーマンのオッサンも、アスファルトの割れ目から生えたど根性雑草も、何もかもがキラキラまぶしく、そして愛おしく思える。

 ああ。

 生きてるって、ステキ。

 「なあ。いい加減にしないと遅刻するぞ」

 朝への感動、生への感謝は、暁斗にアッサリ遮られた。

 …待ってよ、もう。せっかく人が、元の身体に戻れた感動を味わっているというのに。


 私が自分の身体を離れていたのは十日ほどの間だった。

 どうして入れ替わったのか、向こうの世界へ行っていたのかはわからない。

 夏樹が、「隕石でも落ちてくるのを、姫さまが守りに来てくれたんじゃね!?」とか言っていたけど、それは映画の見すぎ。

 異世界のお姫さまが、隕石ウンヌンなんて未来に起きるようなことを、知ってるわけないじゃん。

 逆もまた同じ。

 あの世界を救いに私が入れ替わったと仮定しようにも、あっちで起きそうなことを私は知らないのだから、助けに来た…ってのは当てはまらないと思う。 

 それに、映画と同じなら、入れ替わりは一日で終わるし、入れ替わり時の記憶は曖昧になるはずだ。

 だけど、今、私は鮮明にあっちの世界を覚えている。

 朝、何度も夢を思い出したから記憶に残った、というのではなく、普通に経験したことを記憶しているのである。知らない街に旅行に行って戻って、それを思い出として記憶している。そんな感じ。

 まあ、突然すぎる異世界旅行だったけどさ。

 いきなり見知らぬ身体でお姫さまになってて。国同士の決め事で結婚することになって。

 さすがに他人の身体で勝手に結婚はダメだろうから逃げようとしたのに、逃げられなくって。

 あらかじめ決められていたことを、流されるように、なぞるように結婚させられて。パレード、謁見、晩餐会…そして、その。…初夜。

 あっちであった出来事を暁斗や夏樹に話しはしたけど、さすがに、初夜でどうだったか、は話せていない。というか、話しづらい。

 言えないでしょ。具体的に。

 まあ、王子に入れ替わりのことを説明して、理解してもらって、…ナニもアレもなかったんだけどさ。それでも、16の乙女が語ることじゃない。

 二人には、姫さまの身代わりになって、結婚した。相手の王子には入れ替わりのことを話したとだけ伝えた。

 それでも二人は、「勝手に結婚なんて…」とか、「王子さまも驚いただろうな」とか勝手な感想を言いあってた。

 そりゃ、私も同じだって。

 勝手に入れ替わられて、私の身体を好きにされたあげくに、見知らぬ王子と結婚させられたんだよ!? 誰に相談すればよかったのか、わからなかったし、戻る方法も見つからないし。お姫さまぶるのは大変だったし。最終的に、王子に説明はしたけど。それでも、切羽詰まって、ようやくだったんだからね!? 説明しなくちゃ、王子に襲われるところだったんだからね!?

 「大変だったな」

 全部話し終えた後、暁斗がそう言って頭をなでてくれた。

 うえーん。

 こういうのわかってくれるのは、暁斗だけだよぉ。

 夏樹は、せっかくのオモシロ出来事が終わってしまって残念そうだった。 

 このクソ弟が。

 まあ、もうこれ以上入れ替わりも起こらないだろうし。起こってほしくもないし。

 ちょっとした旅行から帰ってきた。そんな気分で日常に戻る。

 旅行先で遭ったハプニング、王子さまのことなんて忘れてしまったほうがいい。

 

 それでなくとも、学校生活がイロイロ大変だったのだ。

 暁斗が姫さまのフォローをしてくれていた、と聞いている。

 姫さまが私らしく振る舞えるように、フォローをしてくれたんだと。

 だけどさ。

 そのフォローが、まあ、イロイロな誤解を生んでいたわけで。

 「里奈と和泉クン、つき合ってるの!?」

 仲良い友だちとのお昼、これを聞いて、マジでゴハンを吹き出しそうになった。

 実際数粒のお米が飛んでいったかもしれない。

 「どうしてそういうことになるのよっ!!」

 聞けば、最近の私は、ずっと暁斗にベッタリだったんだって。暁斗の方もまんざらでもないカンジで。

 「なんていうか、お姫さまとナイトってカンジだったよね」

 「いきなり頼りなくなった里奈を守ってるっていうか~」

 「里奈も、恋する乙女ってカンジで和泉クン見てたもんね~」

 「恋してようやく里奈も大人しくなったかって、思ってたんだけど」

 それも勘違いだったのねと、今の私を見た友人が盛大にため息をもらした。

 あったりまえでしょー!!

 誰がだれに恋して、大人しくなって、誰を恋する乙女目線で眺めるのよ。

 間違っても暁斗はその対象じゃないわ。

 暁斗は、ただの幼なじみ。

 家が隣ってだけの、気の合う男友達。

 そりゃ、顔は悪くないし!? 性格だっていいと思う。

 優しいし!? 人が良いし!? 夏樹なんて、本当のお兄ちゃんみたいになついている。

 入れ替わり事件だって、困っていたであろう姫さまのフォローをしっかりしてくれるぐらい、面倒見の良い、そういう性格の持ち主。

 まあ、その性格が災いして、こんな噂のもとになっているのだろうけど。

 「まあ、今の里奈を見てたら…ねえ!?」

 弁当の卵焼きをほおばった私を見て、友だちが視線をそらした。

 なによ。

 大好きな卵焼き、一口で口に入れたらマズいわけ!?

 いつもどおりの食べ方に、大げさにヤレヤレという反応をされた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ