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他人(ヒト)の身体で、勝手に結婚するってのはアリですか!? 【13】

 結婚式はまだまだ続く。

 王宮に戻ってからも、バルコニーに出て集まった人たちから祝福を受ける。

 謁見の間にて、居並ぶ貴族から定形どおりの祝辞を述べられる。

 無事結婚となったことを国王に報告する。

 晩餐会、そして舞踏会。

 その全てにおいて、私はりかちゃん人形よろしく、着替えさせられた。

 着替えるたびに靴もアクセサリーも変えられていく。

 いったいどれだけ着替えて、どれだけ化粧直しをしたらいいのよっ!!

 私の衣装が変わるたび、王子も着替えるのかと思いきや、意外と!? 王子はそのままの衣装だった。

 赤い上着に白いズボン。斜めがけのタスキみたいな布。なんていうの!? 『ベルばら』のオスカルさまみたいな服。それが一番近い。よかった。かぼちゃパンツとか、真っ白タイツとかじゃなくって。

 …ってそういうことじゃなく。

 そういう話をしている場合じゃなく。

 時間は、イベントは刻々と進んでいき、気がつけば、後は寝室にむかうだけっ!! っていう状況になってた。

 どーしよー。

 最後に着替えさせられたのは、あのネグリジェ。

 はだけやすそうな、脱がせやすそうな、アレだよ、アレ。

 化粧も控えられ(そりゃ寝るだけだしね)、アクセサリーも外された。

 あるのは、ゆるりと下ろされた金の髪と、この身体だけ。

 アンナさんに先導され、用意された寝室に向かわされる。

 いーきーたーくなーい。

 なんてワガママを言っても無理なんだろうな。

 なんかトラブルでも起きないかな。

 例えば、地震!? とか。

 ゴジラが上陸したとか、使徒がやってきたとか、コロニーが落ちてきたとか。

 なんでもいい。この状況をナシにしてくれる、とんでもないエピソード。

 そうだな。「王子はワタクシのものよ。アナタなんかに渡さないわ」とか言って、ライバルが出現するとかでも、この際構わない。まあ、引っかかれたら、何十倍にもしてやり返すけど、それでも、「初夜の交代、お願いします」ぐらいは言っちゃうかもしれない。

 けど、いくらそんな無茶なハプニングを期待しようと、この短い道のりのなかでは何も起こらなかった。

 顔は強ばったまま、心はダラダラ汗を流したまま、寝室に到着してしまう。

 ああ。

 寝室の前には、あのお側去らずのオオカミ剣士が直立不動で立っていた。

 …え!? この人、もしかして一晩中、ここに立ってるの!?

 見張り番!?

 オオカミ剣士の眼光は鋭い。冬空のような薄い水色の目に、本当の私が見透かされそうで…正直怖い。視線が合うだけで、足がすくむ。

 ニセモノって気づかれたら、その場でバサッと斬られそうなんだもん。

 ぎこちなく微笑んで、滑り込むように寝室に入る。

 バレても、ここなら斬られることはない…って、うわ。王子、いるじゃんかっ!!

 一難去ってまた一難!?

 寝室の奥、大きな天井まであるガラス窓の手前、昨日より丸い、満月の青い光に照らされて、王子が立っていた。

 そりゃそうか。あの剣士がドアの前に立っていたんだもん。中に王子がいるのは当たり前だよね。って、納得している場合じゃない。

 背後で、廊下につながるドアはパタリと閉まる。

 このドアが次に開くのは明日の朝か。

 つまり、この部屋には、王子と私、二人っきり。

 私、大ピーンチッ!!

 「姫…」

 月明かりを踏みしめながら王子が近づいてくる。

 オロオロと扉と王子を交互に見る。逃げ場なし。

 あともうちょっとのところで王子が立ち止まった。

 少し見上げたところにある、王子の顔。薄暗いので、ハッキリと表情はうかがいしれない。

 「姫…」

 うっとりと身を委ねたくなるような、甘い王子の声。

 手を顎に添えられて、顔を上げされられる。

 そして。

 そのままキス。

 うぎゃー、ダメーッ!!

 離れてーっ!!

 そう思うのにいつの間にか腰にもう片方の手が回されていて、身動きが取れない。

 驚き目を開けると、合わない焦点の先に王子の閉じられた目があった。

 まつ毛、ながーい。

 王子の腕がそのままグッと私を抱き寄せた。

 うおうっ!!

 軽々と私を横抱きに持ち上げる。口唇はもう離れているけど、しっとり濡れている。

 これ、お姫さま抱っこじゃん。お姫さまと王子さまだけに。

 人生初のお姫さま抱っこ。

 間近で王子のグリーンの瞳がきらめいた。

 アッサリと身体を運ばれ、気がつけば部屋の中央にデンッと据えられたベッドの上にやさしく下ろされた。背中を包み込むように柔らかい感触。

 うわわわ。

 目の前には覆いかぶさるように、端正すぎる王子の顔。月の光を弾き返すような、濃い金の髪。

 王子の細く長い指が、私の髪を梳く。軽く耳に王子の指が触れる。

 ヤバい。その仕草、表情にウットリしてしまう。

 「姫…」

 その囁きに、背中がゾクゾクする。

 何かが頭にむかって這い上がってくるような感覚。

 このまま身を委ねたら、きっと…。

 「ダメェェェェェ――――――ッッ!!」

 声の限り叫んで、メチャクチャに王子を突き飛ばした。

 「…姫!?」

 私なんかの力で吹き飛ばされるような王子ではなかったけど、それでも相手を十分に動揺させることは出来た。

 目をしばたかせた王子が私から距離を取る。

 そのスキに、私は這い出るように王子の身体の下から抜け出し、必死に自分の身をかばう。

 「ダメったら、ダメなんですっ!!」

 限界までベッドの端へ逃げる。

 顔は熱いし、目には涙が浮かんで視界がぼやける。

 「…姫!? どうなさいましたか!?」

 まさか、相手からこんな拒絶をされるとは思っていなかったのだろう。王子の方もどうしたらいいか考えあぐねているようだった。

 「あの、私っ、アナタのお嫁さんにはなれませんっ!!」

 だって、この身体、私のものじゃないしっ!!

 勝手に初夜を迎えるわけにはいかないのっ!!

 「…説明、していただけますか!?」

 クシャッと、やや乱暴に王子が髪をかき上げた。

 その顔、絶対、怒ってる…よ、ね!?

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