他人(ヒト)の身体で、勝手に結婚するってのはアリですか!? 【1】
夢だと思った。
というか。夢としか思えなかった。
うにゅ~っと伸びをして、目を覚ました私の視界に飛び込んできたのは、天井から吊り下がった白い、大きな、ビラビラ~っとした布。天蓋!? 四隅にむかって、タップリとドレープを描きながらベッドを包む、白い布。
…お姫さまのベッドみたい。
私、昨日、誰かの家にでも泊まったっけ!? それも、かなりのお金持ちの。
ベッドもふかふかで、とっても広い。ちょっとやそっとの寝返りでずり落ちる心配もなさそうだ。
実際、転がってみる。
ゴロン、ゴロン。ゴロゴロ。
ベッドの縁はまだ遠い。
こうなったら。
イ~モ虫ゴ~ロゴロ。
何度も転がってみせる。
いや、ホント広いわ、このベッド。
…ん!?
転がってみて、違和感を感じる。
身体は特に、なんだけど。
髪が。
いつもの私なら、髪が気になることはない。肩の辺りで切りそろえた髪が、転がる私の邪魔をすることはない。その毛先が視界に入る程度なのが普通。
なのに。
…………!?
顔に、身体にまとわりつく髪。
それも、これ、金髪じゃん。
身体を起こして確認してみる。
顔や身体にまとわりついてた髪が、重力に引かれたように、サラッと流れ落ちた。
おお~。サラサラストレート。
手ですくい取ってみても、柔らかく流れ落ちる金の髪。
なんか、シャンプーのCMとかでありそう。こういうの。
でもさ。
グイッと髪を引っ張ってみる。
…痛い。
どうやらこれは私の地毛らしい。
私、いつの間に髪を染めたんだろう。そして、いつの間にこんだけ伸びたんだろう。
グイグイと何度も髪を掴む。
やっぱ、痛い。
ということは、これは夢じゃないってこと!?
古典的な確認方法だけど、痛いのだから夢じゃない。
髪から手を離して、辺りを見回す。
お姫さまベッドの向こう、ビラビラ布の先に透けて見えるのは、これまた大きな部屋。多分、私ん家のリビングなんてスッポリ、いや、家自体がスッポリ収まりそうな広さの空間。明るい大きな窓、高価そうな家具、天井の高い壁。
六畳の私の部屋はどこに!? 机や、本棚は!?
狭いながらも、一応片付けていた、あの部屋は!?
そして。
私、こんなパジャマ持ってたっけ!?
綿とか麻じゃない。ましてや、ナイロンとか、ポリエステルとかでもない。
最高級品。絹。シルク。お蚕さまが吐き出す糸で作ったあれですよ、アレ。
肌触りサイコーの、光沢のまばゆい、えーっと、パジャマじゃなくって、こういうのなんて言うんだっけ!? ナイトドレス!? ネグリジェ!?
よくわかんないけど、とりあえずいつもの3980円のパジャマじゃない。
その上、その絹に包まれた自分の身体を見下ろして驚いた。
なんか、胸、大きくなってない!?
いつもより大きく盛られてる気がする。
いつもは確認できない、肩から胸へと続く稜線が、私の身体に発生してるんだけど。山頂へと、ふっくら続く豊かな稜線。ネグリジェの隙間から、大きな谷間も確認できる。
おおお。
私、こういう胸になりたかったのよね。
ブラの力を借りなくても、自然にできあがった山頂と谷間。
ちょっとだけ、身体を揺すってみる。
すると、プルンっと胸が揺れた。
おおおおお。
こりゃ、男子でなくてもハマるわ。
触ってみたくもなるってもんよ。
なんかの映画でこういうのあったな~、なんて思いながら手を伸ばす。
…………ん!?
なにこれ。
指も白くって細い。スラッとして、すごくキレイ。
つい見とれちゃう。
爪まで手入れされた、細い指。
窓から差し込む光に透き通りそうなほど白い。
うわ~、なんかホントに姫さまみたい。
コンコン。
いきなりドアがノックされ、心臓が飛び出しかける。
「お目覚めでしょうか」
「あ、はいっ!!」
わかんないけど、返事をする。
重々しいドアを開けて入ってきたのは、初老のオバさん。ややふくよかな身体、キレイに結い上げた髪には白いものが混じっている。
…誰!?
少なくともお母さんじゃない。というか、お母さんなら「早く起きなさーい」って、布団ひっぺがすもんね。「お目覚めでしょうか」なんて聞かないもん。
オバさんに付き従って、数名のメイドさんが部屋に入ってきた。
おおお。
メイドさんだあ。
なんて感心してる間に、彼女たちはテキパキと何かを準備を始めた。
…………んん!?
「お召し替えを」
なんて言って、私をベッドから立ち上がらせた。
手を引き向かうのは、大型のドレッサーの前。
…………え!? なにこれ!?
鏡に映ってたのは、長い金の髪をまとわりつかせた、透き通るような肌の少女。
目は青く、パッチリとしてまつ毛がバシバシ動く。
胸は、さっき確認したように豊かに実っている。腰は、ネグリジェで隠れているけど、これ、多分キレイにくびれてるよ、絶対。
つまり。すっげーキレイな典型的お姫さまが、そこに映っているということ。
そして。
私が腕をヒョイっと上げると、鏡のなかの姫さまもヒョイっと上げる。顔をかしげると、姫さまも首をかしげる。笑いかけると、笑い返す。
そっくりそのまま。
つまり。
これ、私じゃんっ!!
ちょっ、ちょっ、ちょっと待ってっ!!
何これっ!?
いったい、何がどうなってるのっ!!
こちらのサイトでは、はじめまして。
いもあん。と申します。初投稿です。
普段は「PIXIV」サマにて、チマチマアップさせていただいておりますが、この作品のみ、こちらでもアップさせていただこうかと、思っております。(調子に乗ったら次作も…ということもありえるかもしれませんが)
一応、「毎日!!」投稿を目指しております。
コメントなどいただけると幸いです。
ゼヒ、よろしくお願いいたします。