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黄金に色に光り輝く魔力の鳥が急に私の周りを飛び回り、私は目を覚ます。ああ、魔力だけでもうるさかったのに、目を開けたらさらにうるさい。こんなやかましいのは一人だ。簡単に誰だか特定できる遠距離通信魔法だ。通信を許可するように指を出す。それと同時に防諜魔法をかける。そうすればいきなり映像までつながったことに驚いた顔をしているユルフェがいる。
「どうしたの?」
『お、お休み中でしたか? かけなおします』
慌てたユルフェに笑いかける。特殊中の特殊、古代魔法をまるで普通の魔法のように使うユルフェ。発動条件もわからないが発動してしまえば強力な古代魔法だ。帝下四族だって血統魔法の系統のみしか使えない。古代魔法を使うのは王家か帝下四族かユルフェのみだ。
だが、平民生まれのユルフェは事も無げに古代魔法を使い、現代魔法と言われるものをあると便利なツールぐらいの認識でしか使っていない。
ユルフェが異常な存在なのだ。王家の隠し子を疑ったりしたが、血のつながりは全くないことが判明したただのヴィトン領の元平民で現クレージュ帝国勲章付き騎士。つまり、称号的には騎士中の騎士でナンバーワン。
「平気、ちょっとサボっていたの。不良の真似事」
しぃ、と言うように横になったまま唇に指を当てる。そうすれば真似するようにユルフェも指を自分の唇に当てた。
『はい、内緒ですね』
ふふふ、と楽しそうにユルフェは笑っている。
『よう、ローズ! 学園生活謳歌してんな』
はっはっは、と高笑いと共にユルフェを押しのけて映り込んだ男はサディ卿。
「ユルフェ、そのやかましいのを排除して」
ユルフェ卿、と呼ばないのは彼が一番身分が低いから。この前ユルフェ卿と呼んだのは彼の部下の手前気を使ってだ。
ユルフェ自身それに気が付いているし、それを当たり前だと思っているから抗議してこない。
『え、えぇ……』
ははは、と苦笑いしながらユルフェが逃げるように画面から消える。サディ卿のみしか映っていない。
『相変わらずの嫌いようでなにより! ところで体調悪いのか?』
「特大物件を抱えて頭が痛いぐらいね。我慢できるわ。まあ、平気よ」
『……ふーん。ユルフェを指名するぐらいだ。よっぽどでかい案件なんだな……。まあ、何となくわかったわ。こっちの家に連絡は入れとく。ところでお前のワンちゃんはどうした? わんわん』
私の後ろを忠犬のようについて回るヴォルフラムのことを言っている。からかうように彼は犬の真似をしている。ぶん殴ってやりたい。
「ぶっ飛ばしたいところだけど、ありがとう。私もその方向で話を進めてる。ヴォルフラムは頼んだ資料を取りに行ってる。それより、用は? あなたじゃ私が出ないからユルフェがかけてきたんでしょう」
『おう、聞いてくれや』
「聞いてるわよ」
『ポーカーで陛下に十一連勝中で十五連勝したら長期休暇を貰えることになった』
「至極どうでもいいわ」
『つれないな。宮廷勤めは忙しいんですぅ』
「嫌味なら切る」
『タンマタンマ! 本題。ブラウエルからの伝言』
「グロリア卿から? 何? 毎日のようにアルフレットに振り回されているんだけど」
『はっはっは! ご満喫中で何より。仲いいのか?』
「良かったらこんなにブラウエル卿からの伝言にぶっきらぼうに対応してな――……」
緩やかな風の流れを肌で感じる。感じたが、今は窓を開けてはいなかったはずだ。
ふっ、と急に感じる違和感に起き上がって窓のほうへと振り返る。カーテン越しの窓から外を見ようとする。
『どうした?』
「映像とそっちからの音声切るわ。嫌な予感がする」
映像と音声は送ったままで、一見魔法は切れたようにも見える。盗聴、盗撮されていると意識しなければ他の人間はそうそう気が付かないだろう。
『何か感じたか? 我らが秘蔵っ子』
「はい、感じたので音を切ります。心配なら早く来てください。どこにいるのかは知りませんが」
からかうように言ってきたサディを締めるように改まって話す。そうするとサディの顔も締まり、「まだ一応王都だ」と返答がある。
「では、切ります」
「ご武運を」
滑り込むように言ってきたユルフェに笑みを浮かべる。
「ええ」
ぷつり、とあちらからの音声と映像を切る。私はそのままパタリと横になり、防諜魔法を解き目を閉じる。魔力の動き具合から推測を始める。
「……ああ、本当にめんどくさいことになりそう」
そうボソッと呟いたら、医務室の先生が「え?」と声に反応するように声を上げていた。




