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令嬢当主は今日も頭を抱えている  作者: 夢崎飽和
学園編
16/44

Vの内情/14

 お嬢様が先に帰られたという話しを聞き、早くそばに戻る様にと学校側から促される。ここには麗帝国の人間がいるからだろう。今やっている仕事を手早く片付け、お嬢様へのもとへと走る。


 女子寮の前にはお嬢様にダンスを申込み倒れたレヴィ・フロイトが立っている。空を眺めていたようだが、俺の走る音に警戒したような視線を向けてからホッとしたように視線が緩む。


 レヴィ・フロイトは優秀な男だと聞いている。ヴィトン領にいた頃も、神童として噂になっていた。フロイトは俺に向かって頭を下げてから男子寮のほうへと歩いていく。俺のことを待っていたのだろうか? と思いながら寮へと入り、お嬢様の部屋へと音を立てないように走る。

 部屋に入れば、ソファーに引っかけられた制服があり、ベッドルームには下着姿のお嬢様が寝ている。あまりの無防備さに顔をしかめ、掛け布団を上からかける。起きる様子はなく、起こさないように髪を梳き、化粧を落とす。


 フロイトはここの警備の薄さを見ただけでわかっていたということか。


 部屋ある椅子に腰かけながら、すやすやとお眠りになられているお嬢様を眺める。顔色が本家にいるときよりも良くなった。本家にいるときよりも自己主張をするようになった。その変化がとてもうれしくて、それ以上に本家に返したくなくなる。


「守らなければ」


 お嬢様を苛むすべてから。

 例えば、アルフレット・グロリア。

 例えば、ルシアン・ヴィトン。

 例えば、麗凱紀。

 例えば、ジェシカ様


 余計なことをしないように先手を打たなければ。


 椅子から立ち上がり、お嬢様から頼まれていることを済ませてしまおうと部屋を後にした。


 ■□■


 中央の帝領。北東のヴィトン領。南東のエンワイズ領。南西のサディ領。北西のグロリア領と簡単に地図をかくとしたら真ん中に丸を書いて、それに重ねるように十字をかき、丸の中を空白にすると国の地図となる。そう分けられる。


 保持魔法師の勢力図として、帝領に固まってはいるがそれ以外にも駐留軍がいる。八機将と称し八名いるが、そのうち三人はずば抜けた力量に性格の良さだが、ほかの五人が何かが欠けている。力が強くとも女好きだったり、男好きだったり依存癖があったり、魔力が足りないだとか最悪だ。

 帝下四族、王家、八機将を総称して円卓の騎士と呼ばれている。今は八機将の大半は北部に配置していて、あとは帝領に四名と南には私含め三人しかいない。


 クレージュ帝国は横長の大陸の最西端に位置している。帝国には最西端があるだけで上も下も西側も他の国に囲まれている。東側の三つの国を挟んだ麗の国はもう一つの国、ウォルズ公国を挟んだだけとなっている。戦火はすぐそこと噂されている。


 私は今薔薇の庭園、隠れ家のような温室に入りベンチの中膝を抱えている。ヴォルフラムは私の視界に入らないところにいる。


 麗からは正式な謝罪状が王宮経由で届いた。こちらが徹夜で図書館、図書室の検閲をしたことはバレているだろう。不本意ながら許さなければいけないのだけれど、どうしても負けてはいけない気がしてならない。あの人に一つ譲れば全部持っていかれてしまう気がしてならない。


 ふわり、と揺れる空気の流れ。


 姿勢を正し、認識疎外をかければ相手も使い始めたようだ。ヴォルフラムも私に合わせて使ったようだ。


「――失礼、誰かと逢瀬の約束でもあったか?」

「いいえ、物思いにふけっていただけです」


 薔薇の中から現れたのは男性のようだった。相貌失認の軽いものの一個上、失認を使っているようだ。服装もあまり記憶できない。ただ、士官学校にふさわしいしっかりとした体つきだということ。どれほどかも覚えられないのだから相当しっかり魔法をかけている。


「あなたは何かお約束がおありで?」

「いや、迷い込んでしまった」

「それなのに、随分としっかり魔法を使うのね」

「あなたが私に知られたくないようだったので、私も使ったまで」


 背中合わせで並べられている椅子の反対側に座る彼。皮肉も簡単に受け流されてしまう。


「座っていいと言ってません」

「これはあなたの椅子か?」


 立ち上がって出ていこうとすれば、ガゼボの植物、薔薇等が鳥かごのようにうごめいて行く手を阻む。振り向けば楽しそうに笑い声を上げている彼。


「嫌がらせですか」


 アルフレット……、ではないだろう。魔力の質が違いすぎる。知り合いにはいない魔力の質だ。


「何か悩んでいたんじゃないか? この名前も顔も、身分もわからない俺にしゃべってみたらどうだ?」

「顔も名前もわからない方にしゃべるつもりはありません。嫌がらせ、止めてくださいますか」


 困ったように笑っている彼。燃やしてしまおうか? いや、それは自分の物でもないからまずいだろう。

 ここが自分の領地なら多少の横暴は許されただろうけれど、ここは違う。


「頑なだな」

「……それで、私はいつまで無駄な時間を過ごせばいいのです?」


 スッと魔法を解除するように彼は大げさに右から左へ一本線をかくように右腕を動かす。そうすれば植物の檻はもとの位置へと戻り、道が開ける。


「また会おう。口下手令嬢」

「二度と会いません」


 ああ、イライラする。このイライラの原因は麗凱紀だからだろうか? 確証は、ないけれど。

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