表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

41/69

4章ー11 南洋沖海戦(後)

 「やりましたね司令官。」

 副司令官のルイはバイエルに新兵器の成果を報告していた。


 「その通りだ。これほどとはな・・。」

 海上には意識を失った魚人たちが数多く浮いている。

 この新兵器は魚人に対してここまで有効的だったとは。


 「だがこれだけの海域をすべてカバーするとなるとやはり搭載している全ての雷鉄槌ミョルニルを発動しないとダメだったな・・。魔力装填はどれだけかかる?」


 「はい。ただいま大型船に乗っている全ての魔術師が魔力充填を行っておりますので、あと数十分程度だと思われます。」

 バイエルの言葉に、ルイが頭を下げながら答える。


 この雷鉄槌ミョルニル、威力は凄まじいが魔力消費が大きすぎる・・。

 実戦にはまだまだ課題が山積みだな。

 だが、今回はこれのおかげで海中の魚人共を一掃することが出来た。

 残るは海上の大型船のみ・・。


 「司令官。ところで海上に浮かんでいる魚人達はいかがいたしますか?」

 バイエルはルイの言葉に笑みを浮かべながら答えた。

 

 「奴らは魔族だ。捕虜にするつもりはない。船上から矢を射かけ皆殺しにするのだ。」

 

 「了解いたしました。」

 ルイはバイエルの元から離れると、全兵士に掃討戦を命令する。


 「くたばれ魚人共!!」

 アスティロン軍の兵士達は、次々と海上の兵士に矢を放っていく。


 「た、助けてく・・ッ!!」

 意識がある者も体が動かず次々と矢の餌食となっていき、アスティロン艦隊の周りの海は血に染まっていった。









 「ザディアスさん! 大丈夫ですか!?」

 優一ゆういち達はザディアスの船に自分たちの船を横づけると、そちらへと飛び移った。


 「ヴィンデル殿。私は大丈夫です。しかし海中の兵士達は・・。」

 ザディアスは甲板に引き上げられている兵士達に目を移す。


 これは一体・・。さっき突然アスティロン軍の方から閃光と爆発音が聞こえたと思ったら、この有様だ。

 やっぱり魚人に対して何らかの対抗策をもっていたのか・・。


 「ザディアス様! アスティロン軍が逃げ遅れた兵士に向かって矢を射かけ始めております!!」

 

 「何だと?!」

 ザディアス様の表情が一気に険しくなる。


 「奴らそこまで腐っているのか・・。すでに動けない兵士を無差別に殺していくとは・・。これでもはや関係修復の道はない!」

 「全軍に伝えよ! 全艦隊これより敵軍への攻撃を開始する!」

 おぉぉぉぉぉ!! ザディアスの言葉に兵士達は一斉に声を上げる。


 「ルミリア様! あなた方 妖精族エルフのお力をお借りしたい。」


 「はい! もちろんです! 作戦通りお任せください!!」

 ルミリアはザディアスに一礼すると船の後方へと移動した。


 「さあ行くわよ! 風の精霊よ、その力をお貸しください! 風の息吹 (ウィンドブレス)!」

 ルミリアが魔法を発動させると、帆に向かって猛烈な風が吹き始めた。


 「凄い・・。これが精霊魔法。」

 確か精霊魔法は、この世界に存在する精霊の力を借りて発動する魔法で、魔力消費がほとんどないんだよな・・。

 普通にこれだけの風を起こし続ければすぐに魔力が無くなってしまうだろう。

 これも妖精族エルフだからこそ出来るものか・・。


 ブォォォォ・・。 周りの船も次々と帆に風を受け動き始める。

 全ての船に妖精族エルフが乗っているのはこのためだ。

 これで風向きを気にせず戦うことが出来る・・・。


 「よし! これなら一気にアスティロン軍の元まで距離を詰めることが出来る! さぁ、奴らの行いの報いを受けさせてやるのだ!!」

 オォォォォ!! ザディアスの言葉で兵士達は剣を抜き、再び雄叫びを上げる。


 南洋国家連合の艦隊は通常の何倍もの速さで進み始めると、一気に大型弩砲バリスタの射程距離に入った。

 

 「矢に火を付けよ! 一斉に放て!!」

 シュッ!! 兵士達がアスティロン軍に向け一斉に火矢を放つと、敵船に次々と火が移っていく。

 

 「続けて大型弩砲バリスタも放つのだ!!」

 バンッ! 大型弩砲バリスタは敵船に当たると、船底をも突き抜け浸水を引き起こし始めた。


 「くそ! こちらも火矢を放つんだ!」

 アスティロン軍も反撃を始めるが、南洋国家連合の艦船を包み込む風に阻まれ全て吹き飛ばされる。


 「あれは精霊魔法か・・! そうか妖精族エルフの力だな!! おのれ、ではこれならどうだ!!」

 火弾ファイアーショット!。 アスティロン軍の魔術師が攻撃を加え始める。


 「ザディアスさん、ここは俺に任せてください。」

 ヒュッ! 優一ゆういち身体強化ストレングスを使い空中へと浮き上がると、南洋国家連合の艦隊に迫る火弾ファイアーショット全てに向かい獄炎鳥ごくえんちょうを放った。


 「何だこれは・・!!」

 ドォン!! 獄炎鳥ごくえんちょう火弾ファイアーショットを吸収すると、それぞれの敵船へと命中した。 

 

 「これはすごい・・。ヴィンデル殿、あなたお一人でも十分勝てそうですな!!」

 船に降りてきた優一ゆういちにザディアスが笑いながら話しかける。


 「いえ、これだけの数の敵では流石に多すぎます。先にこちらの魔力が無くなってしまいますよ。」

 優一は苦笑いを浮かべながら答えた。


 アスティロン軍の大型船は魔術師も乗っている・・。恐らく防御魔法を使ったのだろう。力を抑えたとはいえ、獄炎鳥ごくえんちょうを受けても甲板や帆が燃えているくらいだ。

 あれだと沈むことは無いだろう。


 「皆の者! この機を逃してはならん! 一気に敵を押し戻すぞ!!」

 ザディアスの言葉で南洋国家連合軍はさらに進撃を進める。


 ドンッ!! しかし突如、優一ゆういち達の隣を進んでいた船が炎を吐きながら沈んでいく。

 なんだ? またさっきの攻撃か??


 ドン! ドン! ドン! 連続する爆音と共に、南洋国家連合の大型船が次々と沈み始める。


 「くそ・・。ついに魔導船が出てきたか。」

 ザディアスの頬に一筋の汗が流れ落ちる。


 魔導船・・。あの戦列艦のことか!!

 優一ゆういち達の前に、大型船の数倍はある巨大船が姿を現した。


 「すぐに救助に回るんだ!」

 沈められた船の場所には大勢の兵士達が海上に浮かんでいる。


 ドン!! しかしアスティロン軍の大型船から再び雷鉄槌ミョルニルが放たれ、兵士たちは次々と意識を失い、アスティロン軍の矢の餌食になっていく。


 マズい! このままじゃ全滅するかもしれない・・。

 俺が攻撃するか? いやこれだけ敵と味方が密集しているとザディアスさん達を巻き込んでしまう。

 それに敵の数が多すぎる・・。全ての敵を倒すのは無理だ。


 ドンッ!! 魔導船からの攻撃はさらに続き、アスティロン軍の味方船をも巻き込み始める。


 「奴ら味方まで・・。ザディアスさん、このままじゃやられます! 一刻も早く陸まで後退しないと・・。」

 優一ゆういちの言葉にザディアスはすぐに首を左右に振った。


 「これだけ密集していては船が旋回できないでしょう。乱戦に持ち込めば、魔導船も攻撃してこないと思っていたのですが浅はかでした・・・。それに船を捨てようにもあの兵器がるのなら逃げることも・・・。」

 ザディアスは拳を握りしめる。

 

 くそ、あの兵器さえなければザディアスさん達は海へ逃げられるのに・・!

 ジル達位なら俺の転移魔法で陸地まで転移できる・・。 

 何か大型船だけでも無力化できる方法はないのか?!


 いや、あるじゃないか! 俺がこれまで喰らった魔法の中にふざけたやつが!!


 「ザディアスさん! ここは俺に任せてくれませんか?」


 「ヴィンデル殿?! 一体何を言い出すんですか?!」

 優一ゆういちの言葉にザディアスは驚きの声を上げる。


 「俺を信じてください!!」

 ザディアスはしばらく考えた後、口を開いた。


 「・・・分かりました。ヴィンデル殿のことです、何か考えがあるのでしょう。」


 「ありがとうございます。それで俺が空に飛びあがったらすぐに海に飛び込んで逃げてほしいんです。

ジル達も連れて。」


 「分かりました。 おい! 全軍にすぐにでも撤退できるようにと伝えるんだ!」

 ザディアスが部下に命令すると、兵士達は撤退の準備を開始した。



 「ヴィンデル殿! 準備が整いました。」

 しばらくするとザディアスが優一ゆういちに撤退の準備が出来たことを伝えた。


 「分かりました!」


 でも本当に俺に出来るのか?

 もし失敗すればここにいる全員が・・・。

 今更ながら手が震えてきた。


 パンッ!! ジルが突然俺の手を持つと、両手で力いっぱい叩いた。


 「ヴィンデル様。 しっかりしてください。あなたならできます!!」

 そう言うとジルは笑顔を見せる。


 痛ってえー・・。でもおかげで手の震えが無くなっている。

 はぁ・・。ジルにはやっぱり敵わないな・・。


 「ありがとうジル。よし、それじゃあ行ってくるよ!」


 「はい!!」


 身体強化ストレングス! 優一ゆういちの周りを風が吹き荒れると、一気に空高くまで舞い上がった。

 

 おぉー、すごい数だな・・。でもこれだけ密集してるならいけそうだ!

 えっと確か呪文は・・。


 「極大魔法 黒太陽の終焉 (エンド・オブ・ブラック)。」

 優一ゆういちの頭上に巨大な黒炎が出現する。


 「・・・ッ!! はぁ、はぁ。」

 何だよこれ・・。魔力消費量半端ないだろ! 魔王の奴こんなの使ってたのか。

 でも何とか俺にも使える様だ・・。

 これなら・・。


 「ザディアスさん! 今です!!!」

 

 「よし、全軍海に飛び込み、この場から出来るだけ離れるんだ!!」

 上空の優一ゆういちの言葉で魚人たちは一斉に船から海に飛び込み始める。


 「なんだあれは・・・。」

 アスティロン軍は突然上空に現れた巨大な黒炎に目を奪われ、魚人達が海に飛び込んでいくのに全く気が付かない。


 「よし・・。ザディアスさん達は無事に離脱し始めたな。」

 でも俺もそろそろ限界だ・・。もう少し待っていたかったけど・・。


 「いくぞ! これで終わりだ!」

 優一ゆういちが手を下ろすと、黒炎は艦隊に向かって動き始める。

 ブォォォォ!! 黒炎が近づいてくるにつれ、海上には熱風が吹き荒れた。


 「くそ! 全員海に飛び込むんだ!!」

 ウワァァァァ!! アスティロン軍の兵士は我先に海へ飛び込んでいく。


 くっ、敵でも出来るだけ被害を少なくしないと・・・。

 優一ゆういちが力を込めると、黒炎は上空で爆発を起こし、とてつもない爆風が艦隊を襲った。

 

 「凄いな・・・。」

 なんとか戦場を離脱したザディアスは海上から戦場を眺めていた。


 爆発が収まるとそこには多数の船の残骸が漂い、艦隊はその姿を消していた。





 

  

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ