ありがちチート考察
アイデア出しのために、異世界転生ものでよく見るチート能力を列挙してみる。
また、これらの能力が設定上、あるいはストーリー上どのように働くか考察する。
【鑑定 / ステータス表示】
対象の状態を知ることができる。自身を対象にとればステータス表示となる。
転生元と転生先の名詞や常識の差異からくるトラブルを緩和する。毒性、可食性、犯罪歴などの安全性、危険性を可視化したり、隠れた敵を看破したりすることで、主人公の生存率を高める。
主人公の目を通して新しく登場した人や物の設定や、登場人物の「何が」「どのように」「どれくらい」強いのかを、数値や文章量などで端的に示すことができる。レベルアップまでの必要経験値やステータスの伸びしろを見せれば、登場人物のその後の成長に妥当性がうまれる。「状態を認識する」という概念を拡大解釈して、相手の嘘を見破ったり、危険察知を行うといったパターンも考えられる。
問題点として、テキストでステータスを示そうとすると冗長になってしまうことがある。見せたいものが「既存のキャラクターのステータスの変化」だけだったとしても、既知の情報も併記しなければならないのでテンポが損なわれる。また、敵を鑑定して事前に危険性がわかってしまうということは、勝負する前に勝敗がほぼ分かってしまうということでありスリルも失われる。読者に「なぜそれを鑑定しない、(鑑定があれば)避けられたトラブルだろ」と思われてしまうことも。
字数が稼げるので、外からは「文章量の多い小説」に見せかけることもできるかも。
【言語理解】
未知の言語を既知の言語に自動で翻訳する。
口語のみに限定されていたり字幕がついたように見えたりするなど、バリエーションがある。言語だけでなく通貨や数の表現(十進法?十六進法?)などが転生元のそれに自動変換されるパターンも。「言葉が正しく翻訳されないこと」によって、それが転生元にない概念だと知らせることもできる。転生先の世界に複数の言語がある場合にも使えそう。
現存する言語だけでなく絶滅してしまった言語が理解できるなどの拡大解釈も可能か。
【空間転移】
テレポート。
主人公は世界を旅して活動範囲を広げていくわけだが、活動範囲が広がるごとに移動にかかる時間もまた大きくなる。そのコストを抑え、たびたび発生してしまう移動の描写を避けることができる。しかしテレポートができることによって頻繁に場転が発生してしまうとそれはそれで読者にわかりづらくなってしまう問題もある。折衷案として飛龍や飛行船などで移動時間を短くしてしまうという表現もできる。
移動に伴う時間と危険性が下がるためなので、地域による需要供給差を生かして利ざやを得る方法で金策できるだろう。また生鮮物を鮮度を保ったまま輸送できるため、付加価値を生み出すこともできる。
テレポートを戦闘に使うことも当然考えられる。相手の技を回避したり、相手の視線を切ったり、死角に移動して攻撃したり。
【異空間収納】
異空間にアイテムを収納する。
多くの場合、生物は収納できない、収納量・収納個数に上限がある、などの制限が付く。収納したものの時間が止まって腐らない、収納中のものをリスト表示できるなどの付加価値がつく場合も多い。質量や重量を無視するので荷役や剥ぎとり、輸送のコストを抑えることができる。
窃盗や密輸などにも適していると思われる。主人公的ではないが。
【現代知識】
現代の知識を持ち越した状態で転生する。
多くは中世などの遅れた技術レベルの世界に現代の技術を持ち込むというもの。四則演算などの義務教育レベルのものから、調理や鍛冶などの生産技術、物理・化学などの知識を魔法に組み込むなど様々。主人公がなぜその知識を持っていたのか、リアリティを考慮しておく必要がある。半可な知識でチートをやらせると、その方法は現実的に無理、などと突っ込まれることも。
VRMMOものの場合、ゲームに関する攻略情報がある状態、と置き換えられる。
【ステータス強化】
特定のステータスが異常に高い状態で転生する。
「初期ステータスが高い」「ステータスの伸び率が高い」「ステータスの上限値が高い、あるいは無い」などのバリエーションがある。HPやMPなどだけでなく、動体視力や記憶力など、一般的なゲームでパラメータにならない数値が高い場合も。
全ステータスが高い純粋な無双型と、一部のステータスのみが高い特化型が考えられる。後者の場合、一部のステータスと引き換えに特定のステータスが低いなど、バランス調整されている場合も多い。
単純に敵よりもステータスが高い状態で戦うことになるので、無双向き。
【ステータスボーナス】
ポイントを任意のステータスに割り振り、自己強化することができる。
単純なステータス強化と違い、主人公が自分の意思でキャラメイクしていくパターン。バリエーションとしてステータスの振り直しも考えられる。
ボーナスポイントが発生する条件を設定しておく必要がある。分かりやすいのはレベルアップだが、必然的に世界観にレベルの概念を持ち込む必要が出てくる。
従って「徐々に無双し始める主人公」を描くことになりやすい。その他の条件として考えられるのは魔石などのアイテム入手、キル数などだろうか。
【全属性適性 / スキル習得制限なし】
武術・魔術・スキルなどを習得するための制限がない状態で転生する。
単純に敵よりも多い技・術で戦うことができるので、無双向き。技の多様性を武器に相手の弱点を突くなど、頭脳派主人公に仕立てることもできる。
万能型のキャラクターになるのでどんな展開にも持ち込める自由度があるのが強み。しかし、話の序盤から大量のスキルを持たせてしまうと読者の理解を損なうことが予想される。
【能力コピー】
ラーニング。他人のスキルをコピーする。派生としてコピーでなく奪取してしまう場合もある。
技を見る、相手を倒すなどの前提条件が付いていることが多い。敵との邂逅が主人公の成長に直結するので、話のテンポがほどほどに良い。難敵を倒すほど主人公の強化が図れるというインフレ具合も都合がいい。
多様な技を使う主人公を描くという点で全属性適性と似ているが、全属性適性はあくまで適正であり、新能力獲得のための修行編を挟む必要が出てくる。
難点として、ラーニングで身につけたスキルはオンリーワンのものではない。増やした手札をどのように組み立てるかがポイントになる。
【能力作成】
スキルメイク。
ラーニングの上位互換。参考にする敵の存在なしに自己完結した状態で成長していく。非常に強力。完全に無双向き。ラーニングと違いスキルの独自性も担保される。
【ダンジョン管理】
特殊な能力を持ったダンジョンが与えられ、これを管理する。主人公自身は無力な場合と、その他のチートを併用する場合がある。
ダンジョンの成長により主人公の成長を間接的に表現できる。またたくさんの配下を従えることが暗黙の前提になっているため、群像劇的な展開にも向く。
ダンジョンコアの破壊など、「敗北条件」が設定されている場合が多く、序盤はこれを避けるために話を進めることになる。