表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

乙女ゲームの中で愛されたいと願う彼女と彼ら

僕のものになるなら愛してあげる

作者: あひる

いじめについて書いてあります。原因や過程はフィクションです。ご注意ください。

誰かに恋するよりも好きな時間を過ごしたい


サッカーしたり、カードゲームで対戦したり、漫画を読んだり・・・



クラスのイジメ問題とか将来のこととか、話し合う道徳の時間が嫌いだ


話し合って何が得れるんだ


人それぞれの考え方があって結論なんかでない

教師が自己満足で話し合わせて

生徒の心には何も残らない


生徒も自分の考えがクラスの中で異質だと思ったら

簡単に人に合わせた意見に変える

「私も○○ちゃんと同じで・・・と思います」


何の意味があるのだろうか

協調性?

違うね、クラスの雰囲気を作るんだ


個性をなくす雰囲気を、ね



「永井くんって、難しいこと考えてるんだね」


俺の国語のノートをもつクラスメイト

・・・名前は


「・・・返せよ」


「先生のコメントはー」

「返せよ!!」


俺はノートをそいつから奪った

俺のだから、取り返した、が正しいのか


「「道徳の授業感想を書きなさい」が宿題だったけど、そんなの書いたんだね」

「・・・国語係だからって」

「国語係じゃないよ、私」

「あ?」


「ついでに言うと先生からのコメントも書かれてないよ。だって永井くん提出してないでしょ」

「・・・なんでお前がもってるんだよ」

「朝、図書室に忘れてったよ」

「あっそ、」


どーでもいい


これもただのラクガキだ


「私はね、「道徳の時間」は人を殺させないために必要な授業だと思うな」


「なんだよ、それ」


「常識をつけさせるんだよ」


そうだ


こいつの名前は


ひな


高学年になれば自然と女子のことは名字呼びになる

なのに、こいつはクラスの男子から名前呼びをされている


・・・なんでだ?


「常識はその時代や育つ環境に大きく影響を与えられて身についていく」

教室には俺らしかいない


ひなと俺しか


「「人を殺すことは悪いこと」っていうのは当たり前かもしれないけど、自分は特別だとか、下の者は虐げてもいいんだとかいう常識を持っちゃうとだめだよね。社会から外れる。で、殺人を犯しちゃう。だから、道徳は異物を探して異物をみんなで消して社会に適合させる」


・・・こいつの言いたいことはわかる

貴族身分のあった昔のことを言っているんだろう

奴隷とか使用人、商人や農民の区別があった頃

でも


「それでも、それでも異物は生まれる。だから世の中から犯罪は消えない」

「うん、人間は自分と他者を比べて優位に立ちたい生き物だから、平等なんてないからしょうがないんじゃない?争いごとが消えないのは」


俺は手に持つノートを握りしめた


「教室は小さな社会だよ。だから小さな世論が生まれる。あまりにも世の中とずれた世論ができあがると困るでしょ?」

「誰が」

「先生が」


争いごとは消えない

世論によって、争いごとが生まれる


行き過ぎた世論は大人も制御できない


そう、例えば


「だから、ね、永井くんがいじめられてるのはその小さな世論のせいだよ」


・・・俺をバイキン扱いする世論


はじまりは

女子のリーダーである深山に

「栞が永井くんのこと好きなんだって」

と言われたことだったと思う



まわりの男子たちにバカにされるのが嫌で

「あんなブスに好かれてもうれしくねーよ」

と答えた



それからすぐに

小さな世論が生まれた



「どうして、あんな世論が生まれたと思う?」

「・・・お前、俺のことバカにしてんのか」

「してないよ。永井くんが本当は頭がいいこと知ってるよ。毎回、テストで手を抜いてることもね」

「っ!!なんで」

わからないはずだ、だって、こいつは


あのことを知らない


「だって、永井くんが間違えたところっていつも白紙なんだもん。もうちょっと考えた跡くらいつけた方がいいよ」


それは考えた

でもわかってる問題をバカみたいに書くのは嫌だった


「なんとなく、ね、みんなわかってたんだよ。永井くんがみんなのこと見下していたこと。だから、世論が生まれた。何事にも原因と過程があるんだよ。先生が気付けない、小さな原因がね」



俺は帰国子女だ

この「女」限定の言い方が嫌いだ

だけど、本当のだからしょうがない


10歳までアメリカで過ごした

向こうでは少しだけ飛び級制度を利用していた

日本語という言語の違いはあるけれど、こっちの算数や理科は簡単すぎた


転校してきた当初はテストでは満点をとっていたが

「外人はすげぇな」

と言われたことで怖くなって手を抜くようになった


それからはまわりに合わせてきた


・・・つもりだった


「国際感覚っていうのかな?海外のことにも偏見なくいられるっていいことだと思う。でも、日本人の感覚と違うよね。みんなだって敬語を使ってるわけじゃないけど上級生に対しては生意気な態度は控えてるよ。でも永井くんは生意気に感じられちゃった」


・・・そうか、それが


「原因か」

「ねぇ、教えてあげようか、みんなと仲良くできる方法」


まるで悪魔のささやき


だと思った


「俺も知ってるぞ」

「ん?」

「お前が嫌われない秘密」

「・・・」


ひなは誰にも嫌われないわけじゃない

確かに男子から名前呼びはされているが、それにも何か仕掛けがあるはずだ


女子にだってひなを嫌いなやつがいるはずだ

男子にからかわれたりしない、みんなに愛されるようなキャラ


でも、表立って発言できない雰囲気を作り上げている

誰が?

誰でもいい


今は



「世論を壊すのは難しい。でも新しい世論を作るのは簡単だ」

「・・・脅してるの」

さっきまでの笑みが嘘のように俺を睨んでいる


本当のこいつが見えた気がした


「俺に恩を売りたいのかもしれないが、俺はこのままでいいんだ」

「ノートにあんなこと書いてた人の言うことじゃないよね」

「今、決めたから、な」

そう、今、決めた


だから

「なぁ、ひな、俺と友達になろうぜ。秘密の、な」


ひなが俺のものにならないこともわかってる

雰囲気を作っている誰かのものだってことぐらい


その誰かがいても

俺を予備に欲しがるくらいだ


いつか


きっと


堕ちてくる



そのときは




愛してやるよ


お前だけを


不愉快な思いをした方々、申し訳ありません。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ