静かな時に
墓石の下に白い器が座っていた
30年拝み続けた白い器に
いつか祖母だったことを思いだし
そこは暗く寒いでしょうと、
伺ってみた
答えはなく、ただ静かだった
死ぬことは荷をおろすこと
荷をおろしほっと息をつき
未だに生きている者に不憫な眼差しを
くれている
静かに静かに
今日、新しい白い器を納めた
そこは暗く寒いでしょうと、
伺ってみた
答えはなく、やはり静かだった
卒塔婆がカタカタ鳴って
線香の煙がゆるやかにのぼっていく
亡くなると魂は瞬時にどこへでも
行けるのよ、と母の言葉が
胸奥に響いて
静かな時の上をゆるやかに昇っていった