妹よ、永遠に
「皆……今のうちに……」
蓮の決死の覚悟に、花音達は答えようとしたが、命の危険が晒されている今、何も出来ずにいた。
「皆……いくわよ」
大人の花音が動き出す。
「でも、お兄ちゃんが……」
「わかってる。わかってるけど、私達はやらなきゃ駄目なのよ……」
大人の花音は、涙声で舞に返した。
「俺のことはいいから、早く……」
「わかったわ。皆、やりましょう」
花音の言葉が皆を一つにし、ようやく戦闘体制に入る。
蓮は、未だに必死でライパンにしがみついている。
「デルタイリュージョンよ」
「待って、花音。私もデルタイリュージョンに参加するわ」
大人の花音は、デルタイリュージョンに加わると言い出した。
しかし、デルタイリュージョンは三人の技。
四人で力を合わせるのは、困難と思われていたが、花音がある提案をする。
「私がとどめをさす係になるわ。名付けてデルタイリュージョン+。いい? チャンスは一度きりよ」
――そうだ、その勢いだ。妹達よ……こいつと一緒に、俺もいたぶってくれ……――
「こうなりゃ、貴様を盾にしてやる」
「やりやがれ。俺は妹達を信じる。花音達~、聞こえてるか? こいつ俺を盾にしようとしてやがる。俺に当ててもいいけど、その時はソフトにネ」
「……お兄様」
Mっ気も出てきた蓮に、花音はため息をついた。
「皆、準備はいい? スーパーイリュージョン~!」
――おい、さっきと技の名前違くないか? 大丈夫なんだろうな? ――
スクール水着姿の綾香が、たわわに実った巨乳を武器にライパンと蓮に突っ込む。
「い、息が出来ない。でも、幸せ」
蓮は、その胸の中で叫んだ。
一方のライパンは、無言だったが、力が抜け鎌を落としてした。
――こ、こいつ、意外と堪能してやがる。いける、いけるぞ! ――
そして、綾香に続いたのは、舞だ。
空中で、大股を開きそのままレッグラリアットに持ち込む。
「かはっ、何故俺まで巻き沿いに……だが、この柔らかな太ももは最大のご褒美だ」
ライパンはと言うと、幸せそうな顔をしている。
何故か反撃をしようとしない。
むしろ、攻撃されることに喜びを感じている。
――こ、こいつ変態か? ――
更に大人の花音が、チェッカーフラッグで、ペチペチとライパンと蓮のお尻を叩いた。
「いて、いて。さすがにそんな趣味はねぇぞ」
ライパンの方は、ほんのり顔を赤らめている。
「お兄様、避けて! とどめをさすわ」
「花音! 任せた!」
蓮は、全てを花音に任せ、ライパンから離れた。
ライパンは、逃げようともしない。花音は、お尻からライパンの顔にのし掛かった。
ライパンはピクリとも動かない。
「やったぞ! お前達すげ~な」
「お兄様も」
若干冷ややかな目で、蓮は見られたが新しい世界を見出だした蓮は満足そうな表情を見せた。
「そうだ、花音の本当の兄さんを助けなくては」
「うん」
五人はオフィスを抜け、上の階に続く階段を急いだ。
「お兄様~」
花音が囚われていた、本当の兄に近付く。
――だよな。花音には、本当の兄さんがいるんだもんな。俺の夢物語も、ここで終わりか? ――
「花音すまない。助けに来てくれたのか?」
「うん」
しかし、蓮はその目を疑った。
「こ、こいつが花音の兄さん?」
「うん」
「俺と全然似てねぇじゃん。俺こんなに不細工じゃねぇし」
「君があっちの世界の蓮か? 酷い言われようだな。感謝はする。だが、君もなかなかの不細工ぶりだよ」
「な! いやいや、お兄さんには負けますよ」
「いや、君には負けるよ。ハハハッ」
このやり取りが三十分続いた。
「なんにしても、ジャックナイフを、殲滅したんだ。これで、世界も平和になるってことだよな。それじゃ、俺は元の世界に帰るよ。皆、元気でな」
「私も滅びの未来に帰ります。歴史が変わったことで、未来が少しは変わったと思うわ」
蓮と花音は、それぞれの世界に帰ることにした。
「それじゃ」
「待ってお兄様……ん~ん、何でもない……」
花音は何か言いたげだったが、それ以上は何も語らなかった。
それから半年が過ぎた。
「母さん、腹減った飯は?」
「何か適当に食べて」
「大丈夫か? 顔色悪いぞ。それに何か太った?」
「もう隠しておけないようね。お腹に、あなたの妹がいるの」
「マジかよ。年離れすぎじゃね? ていうか親父のやつやるな~」
かくして、更に半年後、蓮は念願だった妹が出来た。
――妹が成人する頃、俺は四十歳近いんですけど――
と、言ったか、言わなかったかは、定かではない。
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