捨て身の攻撃
裏口の錆び付いた階段を昇ると、非常口が見えてくる。
幸いこちらには、見張りがいないようだ。
舞が扉を蹴破ると、薄暗いオフィスへと繋がっていた。
「よし、誰もいないぞ」
誰も居ないことを確認すると、一行はオフィスへと雪崩れ込んだ。
途端にオフィスに明かりがつく。
「かかったな?」
そこに待ち受けていたのは、紛れもないあのジルだった。
「お兄様を返して! お兄様は何処にいるの?」
ジルに向け、花音がそう言い放つ。
「馬鹿め! これから死ぬ奴に教えるとでも思うか?」
ジルがそう言い終わる頃には、ジャックナイフの一員に取り囲まれたあとだった。
「やれ!」
ジルがそう言うと、ジャックナイフの一員達は一斉に蓮達に襲い掛かった。
しかし、こちらも負けてはいない。
飛び掛かってくる敵を、花音達は手際よくさばいていく。
その様を見ていたジルは、呆気にとられた後、逃亡をはかろうとするが舞に出口を塞がれ、動揺を見せる。
「わかった。観念する。欲しいのは、金か? ん? なんだ、言ってみろ?」
「その薄汚い顔を見せないで!」
大人の花音が、ジルに回し蹴りをヒットさせる。
ジルは吹き飛び、デスクに寄り掛かった。
「うぐぐ……」
「何事だ! 騒々しい……」
「ラ、ライパン総帥……こいつらが……」
「ほう、こいつらがあの蓮の……して、お前は何をしている?」
「油断してしまって……」
「そいつは、大変だったな……もう大丈夫だ」
「すみません、ライパン総帥……」
「何てことはない。……死ね!」
ライパン総帥は、持っていた鎌を振り上げ、ジルの首を斬りつけた。
「ぐはっ! な、何故……ライパン総帥……」
「貴様のような使えん部下は、いらないと言うことだ……死ね!」
ライパン総帥は、ジルの首を跳ね、血のついた鎌をなめ回した。
「お見苦しいところを見せてしまったな。我が名はライパン。ジャックナイフを取り仕切る長だ。悪いが、お前達には死んでもらうぞ!」
ライパンは、波動を放ちながらその姿を露にした。
「味方を殺すなんて……酷すぎますわ」
綾香は、ライパンの取った行動に憤りを感じていた。
「酷いだと? 最高の誉め言葉だな。まずはお前から殺してやろう」
綾香に向けて、鎌が向けられた。
「デルタイリュージョンを仕掛けますわ」
綾香は、デルタイリュージョンを仕掛けようと、花音達に呼び掛けるがライパンをそれを阻止した。
「お前から殺してやろうと、言った筈だ!」
ライパンの鎌は、綾香の喉元スレスレの場所に、あてがった。
「うぉぉぉ」
蓮は、妄想をやめ綾香を救出に向かった。
丸腰の蓮が、ライパンに立ち向かうことは、自殺行為である。
でも、危険を省みず蓮は立ち向かいライパンにしがみついた。
――俺には戦うことは出来ない。でも、可愛い妹達がやられるのを見ていられるほど、お人好しじゃないんだよ――
蓮のまさかの行動に、ライパンはおののいた。
「離せ、こいつ、しつこいぞ」
「死んでも離すもんか。綾香ちゃん、今のうちに逃げるんだ」
蓮の捨て身のしがみつきにより、綾香は事なきをえた。
だが、これで終わりではない。
「離せと言っている!」
「絶対に……絶対に離すものか」
蓮は、死を覚悟した。