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第5話

また良く確認もせず投稿します(笑)


誤字脱字や、表現のおかしい所などございましたら教えていただけたらと思いますです(汗)

「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」


日もやや傾き始め、鎮守の森と呼ばれる鬱蒼とした原生林に一層闇が濃くなる頃、小龍は、勇ましくも猛々しい雄叫びをあげ、森の中を駆けていた。


「おおおおおおおおおおおおおおお!やってやる…。やってやるよ!!俺にはできるはず、いや、できないはずがない!!!!はっ!ていっ!どおりゃあああああああああああああああああ!!!」


小龍は持ちうる限りの全力で森の中を駆け抜け、目の前に聳え立つ大樹を駆け登り、枝から次の木の枝へとまるで地面でも走るかの如く身軽に飛び移っていた。


「ふはははははははは!!見さらせー!流石俺!やればできる子!!所詮は獣よのう。木の上にまではついて来れまい!!」


木から木へと飛び移りながらもちらりと後方に一瞥をくれると、尻尾の先の白以外は全身灰色の毛で覆われている、身の丈三メートルはあろうかと云うやたらと巨大な狼が颯爽と樹木の上を駆けていた。


「……あれ?嘘ですよね?…何でだよ!?そこは枝が折れるなり、登ったは良いけど怖くて降りれません的な場面になってくれてもいいだろ!?何で地面を走るより早いわけ?いぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁ!聖龍の嘘つきー!出ないって…大したものは出ないって言ったのにぃぃぃ!?」


木の上では不利とみた小龍は、軽く十メートルはあるであろう木の上から躊躇することなく飛び降り、着地際にほんの僅かばかり回復していた魔力を全て足に集中させることで怪我一つ負うことなく、再び走り始めた。


後を追っている狼も小龍が飛び降りるや否や即座に追従していく。


狼は灰狼フイランと呼ばれ、この森にて、極々普通に出てくる魔獣と区分される生き物だ。


何故この魔獣に小龍が追われているかと言うと、話しは三十分前に遡る。


「腹へったー…。なんか身体にも力が入らないし、目が回る…。もう立てんです、はい。まじで。」


この森に入ってからというもの、ずっと休むことなく魔力で形成した球を歩きながら操作していたお陰で、今となっては二つを同時に操れるようにまでなっていた。


本来ならそこまでの成長は極一部の天才と呼ばれる者にしかあり得ないのだが、星々の祝福の効果もあり、小龍は急激な成長を遂げていたのだ。


難しさで言えば、ピアノに触れたことのない者が、半日とかからず両手で引けるほどになっていたという程には異常な上達ぶりだ。


だが、魔力が切れる感覚というものを小龍は未だ掴めていないため、気が付けば身動きがとれない程まで生命力を犠牲にしていたのだった。


「…気持ち悪い。でもお腹減った…。はぁぁぁ。」


深い溜め息を吐くと、うつ伏せの状態から仰向けへと向き直り、フリエに作ってもらった弁当を食べようと聖龍に渡された鞄を漁る。


目当てのものを探り当て、丁寧に風呂敷に包まれていた箱を開けると、おにぎり三つと肉をふんだんに使ったおかずが詰められていた。


「肉とか今はほんと無理。……なんかこんなことまで実は聖龍の嫌がらせなんじゃないかと疑ってしまうわ…はは。」


力の入らない身体に鞭を打ち、なんとか大木を背に座位をとりながらおむすびに手を伸ばす。


「生き返る…。何か飲み物ないかな?」


離れた場所に置かれた鞄を足で手繰り寄せ、飲み物らしき物を探すと、鞄の中には竹筒が入っており、軽く左右に降ってみせると、ちゃぽん、と気持ちの良い音が響いた。


「ふぅ…。中身はお茶か。助かった…。にしてもこれは多分話に聞いていた魔力切れの後気付かずに生命力を使ったっていう症状なんだろう………な。」


おにぎりを二つほど平らげ、竹筒のお茶を一気に飲み干すと、強い眠気に小龍はゆっくりと意識を手放していく。


壁に飾られた蝋燭の火が部屋を照らし、二人の男が寂しそうに佇んでいた。


一人は良く見慣れた背中をこちらに見せ、もう一人は黒髪に赤い瞳を持った男。


肉付きはよく、服の上からでも鍛えられた体が見てとれた。


『とうとう此処まで来てしまったか…。できればそなたとは戦いたくなかったのだが、運命と云うものはかくも思い通りにはいかないものなのだな。』


(あれ?これ…夢だ。)


『自分勝手な奴だとお前は思うかもしれないが、俺はお前を倒さなきゃ元居た場所には帰れないんだ…。俺は…帰りたい。ここに来て気付いたんだ。例えもう誰も待っていない場所だとしても、両親が居たあの世界が俺の居場所なんだ。』


(兄、貴?と、黒い髪の人は…誰だろう…。どっかで見たことあるような、ないような…………変な夢。)


未だ身体が強く睡眠を求める中、何かが近づく気配に小龍の意識は強制的に浮上してくる。


(誰だよこのクソ眠い時に…。)


気配自体はもう既に目の前まで来ているのだが、あまりの眠気に小龍は目を開けようとせず、目の前の誰かは無視して寝ることにした。


心地の良い眠気に呑まれ、再び意識を手放しそうになった時、湿り気を帯びた何かが自分の手に触れる。


「ちょ…やめろって。」


相変わらず目は閉じたまま眉間にシワを盛大に寄せ、だらしなく広げていた手を引っ込めると、今度は口の近くに相手の鼻息が当たりだした。


「いい加減に…。っ!?」


さすがにこのような状況で二度寝をする気分になれず、不満たらたらに眼を開くと、目の前には大きな狼が円らな瞳を輝かせてこちらの様子を伺っていた。


小龍が起きたことを確認した狼は、鼻を器用に使って地面に置かれていた弁当箱を小龍の方に差し出す。


狼が中身を平らげた後舐めたのだろう。


弁当箱はまるで洗ったかのようにピカピカになっていた。


(び、吃驚した…。こんな場所で寝てたなんて一歩間違えてたら死んでたな。弁当残したまま寝てて良かった。そうじゃなかったら、今ごろ俺がこの狼の弁当になってるところだよ…。)


「ォン!!!!」


あまりの現状に瞬き一つすることなく固まっていると、待ちきれなくなった灰狼は小龍の目の前で大きく声をあげた。


「うわぁっ!?もう吃驚した…。餌?が欲しいんだろうな。何かなかったかな。というかお願いあって。じゃないと俺が食われそう。」


見た目よりも何故か数十倍は中に収容できる不思議な構造をした鞄の中にならと、必死に探すと晩御飯と思わしきお弁当があったのでそれを急いで取りだし、目の前に広げる。


中身は卵焼きや煮物など、先程の弁当より遥かに胃に優しそうなものが敷き詰められていた。


「昼飯と晩飯間違えた…。間違いなくこっちが昼飯じゃんか。」


はぁ、と深く溜め息を吐くと、逃げる準備に取りかかった。


(うまそうに食いやがって。俺も食いたかったのに…。とりあえず距離をとって、と。)


狼から眼を離さずゆっくりと距離をとり、情報収集とばかり相手のパラメーターを確認すると、は?っと、小龍はなんとも間抜けな声をあげてしまった。


灰狼


力=50(筋力70 防御力30)


器用=82(命中44 回避120)


知能=26(魔力20 学習能力32)


魅力=40


加護=森


(俺より超強えじゃん!?ヤバイ、本格的にヤバイよ。俺なんかこれよ!?)


心の中で愚痴を言いながら自分のパラメーターを見るべく頭に意識を集中させると、目の前にゆっくりと映像が現れていく。


小龍


力=56(筋力52 防御力60+30)


器用=130(命中160 回避100)


知能=164(魔力48 学習能力280)


魅力=117


加護=不明


「…やだ何これ?恐い。何かすさまじく成長してましてよ奥さま……。って、そうか。星々の祝福とかいうアイテムのお陰か。にしても学習能力が怖いぐらい成長してるんですけど…。今度どんな効果があるのか聖龍に聞いてみよ。…何はともあれ逃げますかね。」


実際戦えば、パラメーターから鑑みるに勝てそうな気がしなくもないのだが、それはそれ。


目の前にいるのは元居た世界では考えられないほどの大きさの狼なのだ。


どう考えても自分がガツガツ食べられる結末しか思い浮かばないので、灰狼が弁当に集中している今の内にと、小龍はゆっくりとその場を離れていく。


灰狼が完全に視界から消えてから、小龍は脱兎のごとくその場から離れ、五分ほど適当に走ると、不意に目眩が起こり、近くにあった岩を椅子がわりに腰を掛け休むことにした。


「疲れた…。よくよく考えたら体力も魔力もほぼガス欠状態なんだった。調子にのって戦闘とかしなくてほんとに良かった。」


もし戦っていたらを想像し、小龍は軽く背中に寒気が走る。


しばらくボーッとしていると、お腹が再び空腹を訴え始めたので、鞄を再度漁っているとフリエが聖龍にと渡していたお弁当まで入っていた。


一瞬喜びを露にするが、次の瞬間には何かに怯える小動物のように小刻みに震えていた。


それもそのはずで、小龍からしてみれば、まるでこうなることを知っていたかのような周到さに深い戦慄が走る。


どうやって?と、頭を疑問符が埋め尽くすなか、小龍はあることに気付き、徐に立ち上がり、森中に響かんばかりに叫び声をあげた。


「つうか知ってたんなら教えとけよー!」


全く、と愚痴をこぼしながらとりあえず岩に座り直し、弁当を食べながら鞄の中身を調べる。


出せども出せども出てくるのでちょっと怖くなって、一つずつ鞄に戻していると、赤い丸薬と青い丸薬に目がいった。


丸薬(赤)


効果:生命力をやや回復させる


丸薬(青)


効果:魔力をやや回復させる


気になったので目に残りカスのような魔力を集中させると、とんでもない効果が説明書きに書かれていた。


「だから教えておけって…。」


何故かニヤニヤと笑みを浮かべ此方を見ている聖龍が頭を過り、頭をガックリと項垂れさせる。


この森に入って何度目かももうわからない溜め息を吐くと、とりあえず胃袋にご飯をかけ込み、試しに赤い丸薬を口にしてみた。


丸薬は約一センチほどの大きさで、味はほとんどしないためかなり飲み込みにくかったが、お茶でなんとか一緒に飲み込んだ。


すると身体が僅かに白く光、先程までの怠さが嘘のように消えていた。


「すげえ!!何これ?聖龍、いや、聖龍さんありがとうございます!!」


聖龍と出会ってから、これまでにないほど感謝を込めて謝辞の言葉を述べる。


気怠さはなくなったが、未だ心なしか身体が重たかったので、たて続けに三個飲み干すと 、一個目二個目と先程のように淡く光ったが、三個目は光が点滅を始め、急激に胃の内容物が込み上げてくる。


急いで近くの茂みに駆け込むと、堰が破れるように小龍はその場でもどしてしまった。


「だから………教えておけって。」


言い様のない怒りが込み上げてくるが、一先ずは帰ったら平和にお茶でもしているであろう聖龍の横っ面に一撃をいれることを心に誓う。


「ま、当たらないんだろうけどね。…はぁ。」


防御力は自身の耐久能力値と生命力を表すものだということは何となくだが覚えていたため、小龍はとりあえず青い丸薬については飲まないことにして鞄に戻した。


生命力と比べてあまり高くない魔力は下手をすると一個で要領オーバーして、再びリバースなんてことになりそうで怖かったのだ。


口を軽くお茶で漱ぎ、再度当てもなく歩き始めると、ガサガサっと茂みが揺れる音をたて、撒いた筈の灰狼が完全に獲物を狙う目でこちらに歩み寄ってきていた。


「ひっ!?なんで此処にまたこいつが。」


慌てて逃げ出そうとするが、恐怖に足がすくんでしまい、その場で転んでしまう。


先程荷物を確認したところ弁当はもう三つあるにはあった。


入っている食料から考えるに、今回の任務は一日ないし二日は掛かるということなのだろう。


さすがに命に比べるとご飯をあげるくらいはむしろ願ったりなのだが、パラメーターから考えると相手よりは恐らく自分の方が強いと思えてしまうだけにどうしても踏ん切りがつかないでいた。


(ここで一つあげて、その隙に逃げたところでこいつの体格からしてお腹一杯になるはずないからまた追ってくるんだろうけど、きりがないよな…。となると採れる手段は二つ!戦うか…逃げるか!!)


灰狼が瞬きをする刹那の隙に飛ぶようにしてその場から逃げ出す小龍。


体力は完全に回復したが、魔力はまだまだ回復していないので全力とまではいかないが、全身全霊をもって逃亡を始めた。


勿論、灰狼もその後を楽しげに、瞳をギラつかせながら追いかける。


図らずも、餌付けしてしまったことにより小龍は現在逃亡劇を繰り広げることになってしまったのだった。

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