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第二話

終わらない冬がないように、明けない夜もない。


この言葉は、この地に住まう人々の希望の象徴である。


だが、ある家の一室で布団にくるまる青年は明けない夜を必死に願っていた。


そんな青年の願いも虚しく、今日も世界の闇を払うように、太陽は空に姿を表す。


「…お腹減った。」


布団にくるまり、引き籠ってからというもの、何も口にしていない事を思い出すと、[グゥ]とお腹が鳴った。


一睡もすることもなく昼、夜と何も食べずにいたのだから当然だろう。


更に言えば、扉の向こうからなんとも言えない匂いが薫ってきていたのが一番の原因だ。


匂いに誘われるまま部屋を出ると、土間で聖龍が熱心に調理していた。


「間もなくできますから、そこにお皿を並べててもらえますか?」


小龍が土間に来る気配に気づくも、振り返ることをせず調理を続ける。


言われるがまま、棚にある大皿を土間の中央にある机に並べていくと、次々と皿に料理が盛られていく。


それが自分の好物ばかりが並んでいくことにはすぐに気づいた。


「今日はフリエさんにはお休みいただいているので、お粗末ながら、私が作らせていただきました。」


そう言いながら二人は席に着き、箸を動かしはじめる。


「………うっま!?何これ?もしかすると俺より上手いんじゃないか?」


家ではいつも家事をしていた小龍は、料理にはそれなりに自負があったのだが、目の前に並ぶ料理はどれも舌を巻くほどだった。


「喜んでいただけて幸いです。初めての料理だったので少し不安だったのですが、安心しました。」


「いや、ほんとに旨いよこれ!…って初めて!?能力値が反則なら技術も半端じゃないってことか……まあ、旨ければなんでもいいや!」


聖龍は、子犬みたいに笑う小龍に、クスリと笑いを漏らす。


「そんなに急いで食べたらお腹を壊しますよ。」


「う…兄貴みたいなことを言うんだな…はいはい、よく噛んで食べます。」


「はいは…」


「一回ですね。はい。」


「「……。」」


プッ、と二人は思わず洩らすと、「「あはははは。」」と二人の笑い声が家中に響き渡った。


「御気分が晴れられたようで安心しました。」


「死ぬほど寝不足だけどな。」


「まあ、今日は魔法を使うに当たっての魔力操作と、意識下にある自分の身体能力と比べてのズレを矯正するため、軽い運動を予定していますから今晩はぐっすり寝れますよ。」


「ズレ?能力値が変わってないのに?」


「確かにポイントでは上がっていませんが、兄上は星々の祝福を使用していますから、実際に自分が想像しているより遥かに運動能力が向上しているはずです。」


「あ、そっか。」


忘れてた、と苦笑いしながら最後の一口を食べ終わると、今度はせっせと小龍が片付けに勤しむ。


手伝おうとする聖龍に対して手を挙げて制する。


「さすがに食べるだけってのは落ち着かないからさ。」


そう言いながら手早く片付けていき、食後のお茶をさりげなく用意するところは普段の賜物だろう。


「これはまた…」


「巧いだろ?昨日の朝作ってくれたのを見てて、料理はさておき、これだけは俺の方がうまく淹れれる自信があったんだ。」


お茶で一息いれた後、小龍は聖龍に連れられ、町外れにある広い空き地に向かった。


道中多くの人が聖龍に声をかけていく。


その後は何故か決まって「やっとお会いできましたね。」から続き「おめでとうございます。」等と小龍に激励の言葉を送っていく。


不思議に思いながらも愛想笑いを浮かべ「どうもです。」と頭を軽く下げる。


声をかけられる度に首を捻る小龍に、聖龍は「後ですぐにわかりますよ。」と、何やら楽しげに微笑むだけだった。



小龍は皆の妙に生暖かい視線が気になるも、二人は大きく拓けた空き地に辿り着いた。


「さて、まずは身体能力の認識の改めからいきましょうか。」


「ほんとにそんなに変わってるのかな?全然そんな気がしないんだけど。」


「今まで染み付いた感覚がありますからね。

身体に無理が来ないよう、脳に刻まれた無意識下の記憶ですから無理もありません。しかし、兄上の身体能力は既に昔のそれとは比べるべくもなく上昇しています。勿論、それにともない、記憶能力や動体視力などあらゆる能力が上がっていますよ。」


実感が全く湧かない話しに訝しげな顔をする小龍。


「信じられないのはわかりますが、そこまで疑いに満ちた目で見られると…」


口角を僅かに上げ、ククッ、と声を洩らす聖龍に、小龍は背筋が凍る。


「さ、さあて、それじゃあ早速始めようか!!何からすればいいのかなっと。」


不穏な流れを払拭しようと大袈裟に明るく振る舞う。


「そうですか?…残念ですね。」


何が残念だったのかは敢えて訊かない。いや、正確には訊きたくない。


さてと、と聖龍は呟くと、辺りを見渡しはじめた。


「兄上。もうちょっと此方へ。

…もう少し、もう、そう、そこで少し右に向いて…。

ちょっと向きすぎ、少し戻して。はい。そこでいいでしょう。」


細かく出された指示に嫌な顔ひとつせず従う。


ここでまた藪をつつくわけにはいかない、という判断故にだった。


「ではそこで腰を落としてください。もう少し、そう。

足を肩幅より少し大きく開いて。

開き過ぎです。それでは実践では読まれやすい。

いいですか、そこから思いっきり左に跳んでください。左ですよ?いいですか?…まった!止めてください。

そんなに重心を左に傾けてはそちらに跳びますと言っているようなものです。

重心はあくまで身体の中心線に…」


「そんなに言われてもよくわからん…。

実際にやってみてくんない?」


聖龍は、小さくため息を吐くと少し身体を落とし、次の瞬間には小龍の前に現れていた。


「かなり手加減はしたつもりではあるんですが…。

参考にはならなかったみたいですね。」


目を外した覚えはない。


ただ単純に、小龍に追える速度ではなかっただけ。


それだけに、自分が今いる場所が以前とは違い、人間の想像を遥かに越えた力があることに、小龍は興奮を隠しきれなかった。


「俺もそんなに速く動けるようになるかな!?」


「そう遠くない未来に必ず。」


ニッコリと微笑む聖龍に、興奮のあまり「クウゥゥ。」と声を上げ地団駄を踏む小龍。


その一歩一歩が地面に深く傷を付ける。


それは確かに以前の自分では考えられない力だった。


「…おぉ。」


興奮によりタガが外れたのだろう。


小龍は自分のつけた傷を呆然と見やる。


「ふむ…少し位置を変えましょうか。

地面がそれでは意味がありませんから。」


何やら意味深な言葉を発しているのだが、興奮している小龍は、聖龍の細やかな指示に再度従って身構える。


「そうです。どんな体勢の時も、中心線を常に意識できるようになれば、魔力を使わずとも、そこら辺の雑兵にはまず負けることはありませんよ。いいですか?左です!その体勢のまま思いっきり左に跳んで!!」


指示に従い、思いっきり左に跳ぶと同時に大きく土煙が上がる。


その直後に「フギャ!?」とけたたましい悲鳴が響き渡った。


小龍の左には、十メートル程離れた地点に巨木が聳え立っており、小龍はその巨木に凄まじい勢いで突っ込んだ結果、現在痛みにのたうち回っている。


「無駄に力を使いすぎです。

その証拠に土煙が立ち昇るほど地面を抉っています。

………どうですか?

身体能力がかなり上昇していたでしょう!

以前の兄上ならその速度で衝突すれば命に関わっていましたが、今は精々肋に少し罅が入っただけです。

そのうえ、自己治癒能力に至っては星々の祝福の追加効果により劇的な変化があります。

その程度の傷であれば一時間ほどで完治してしまいますよ。」



「うぅ……ま…まじで……死ぬ程痛い。」


あまりの痛みに聖龍の言葉は全く頭に入らない。


そんな小龍の姿に、聖龍は大仰にため息をつき「…しょうがありませんね。」とぼやきながら右手を掲げる。


「光よ。彼者に癒しの祝福を…降り注げ『星光』<シン・グアン>」


淡い光が小龍を包み、痛みがあっという間に引いていく。


「やれやれ…自分の自己治癒で治した方が成長が見込めるんですが。」


「殺す気か!?滅茶苦茶痛かったんだぞ!!」


目尻にうっすらと涙を浮かべ、全力で聖龍に抗議する小龍。


「これから先、やむを得ず兄上一人で戦わなければならない状況が出てくるはずです。

………その時に、敵は慈悲をかけてはくれませんよ。…この世界は既に、兄上が居た世界とは別だということを、どうぞ御自覚下さい。」


未だ地べたに座っている小龍に対し、片膝を着き恭しく頭を下げる。


「…わかったよ。確かにそう…かも。

………でもそれとこれとは話が違…」「わかっていただけたようで幸いです。」


小龍の疑問に被せるように笑顔で語りかける聖龍。


その笑顔から発せられる有無を言わさないプレッシャーに、結局これ以上の追求をすることをできなかった。

それからはひたすら運動をさせられ、昨夜の寝不足も重なり、精も根も尽き果てかけた頃、太陽はいつの間にか天高く昇っていた。


「……つ、疲れた。」


初めの頃こそ、昔の自分と比べ、異常に上がっていた運動能力に夢中になって身体を動かしていたが、繰り返し行わされた反復運動に、精神的にも肉体的にも疲れ果てていた。


「それではそろそろいい時間みたいですし、休憩も兼ねてお昼にしましょう。」


ぐったりしている小龍に比べ、聖龍の顔は妙にスッキリしていたのは秘密だ。


木陰に入り、休憩をとっていると聖龍から声がかかる。


「食事の準備が整いましたよ。此方へどうぞ。」


声は先程までは確かになかったはずの巨木から発せられていた。


その空き地には不釣り合いな程の大きな木の下には、いつの間にやらテーブルから椅子までがセットされていた。


それも、机も椅子もちょうど巨木の木陰にあり、地面から生えた形でセットされている。


「なにこれ?どうしたの?」


小龍の当然の疑問に聖龍は「植物は私の得意とする系統の一つですから。」と何食わぬ顔で答えた。


つい先程目の当たりにした、人間の能力を超えた力で動いてみせた聖龍になら、(まあこんな力があっても不思議じゃないな。)と一人納得する。


だが、机の上に並べれた皿には、ホカホカと湯気を立ち昇らせるおにぎりが用意されていた。


「いやいやいや…これは…ない。」


その数にして約二十個強。

手ぶらでここまで来た二人には、鞄のような物は当然なかったので、陶器の皿に並ぶ、できたてに見えるおにぎりには違和感を感じずにはいられなかったのだ。


「おや?どうなさいました?こういったものは、冷めれば美味しくありませんよ。」


聖龍にしては珍しく、心底不思議そうな顔で尋ねる。


「仮にだ…仮にこの皿は家からダッシュで取ってきたんだとしたら、聖龍にはできなくもないんだろうけど…

このおにぎりを、この短い時間に作り上げて、更にはホカホカの状態のまま持ってこれようか…

いいや、できるはずがない。…………まあつまりだ、俺が言いたいのはだ…」


話の途中から、いきなり長い時間口を閉ざしていた小龍は、意を決したように言葉を続ける。


「何このおむすび!?怪しすぎて食べるに食べれないんですけど!

今までの経緯から確実になんか仕込んであるっぽいよね?

いや、ある!!」


「ふむ…今までの経験から確実に経験値を得てきているようですね。

本来であれば感心すべき所なんでしょうが、今回は兄上の御期待に添えることができず、心苦しいばかりです。

次からは必ずや、御期待以上の物を御用意させていただきますよ…。」


不適に笑う聖龍の顔には、決意や誓いのようなものが感じとられる。


「いや、すんな!!絶対にしなくていいから!!」


「そこまで前もって前振りをされなくも大丈…」「前振りじゃねえよ!!何もしてないんならそれでいいんだって…本気でやめて!わかった、俺が悪かった。」


小龍は慌てて机に額を擦り付ける。


「そうですか?…残念ですね。とても面白い事を思い付いたんですが。」


(この世界にもし時間が戻せる力があったら、星々の祝福より先に…)と一人決意する小龍であった。



「…とりあえず一つ聞いていい?いや、疑ってる訳じゃあないんだけど…そう!ただの探求心から!!…なんだけどさ…

いや、ほんとに違うって!聖龍君?目が笑ってませんよ!?」


「まあ…いいでしょう。おにぎりが何故まだ温かいのか、ですか?」


小さくため息をつくと、聖龍はおにぎりが何故未だ温かいのかを簡単に説明した。


この世界では、魔力を使い異空間を造りだし、物をその空間内に納めることが誰でもできる。


しかし、その空間は有限であって無限ではない。


正確に言えば、空間自体は無限なのだが、その空間内には物を入れれば入れるほど自身の魔力を消費するのだ。


魔力は自身の生命力とも密接な関係を持っている。


本来魔力と生命力は別々に存在するものだが、魔力を使い果たした場合、生命力を使うことになる。


そのうえ、余程熟練した者でなければ自分が生命力を使っていると気付くことができない。

気付いた時には疲労困憊で動くことすら出来なくなっており、命を落とすことがままあるのだ。


空間に物を入れている場合、その量や質に比例して魔力を常に消費する代わりに、入れたもの全てを入れる前の状態で保管できる。


つまり、魔力を多く持たない者からすると、いつ魔力が切れるかわからない空間を利用するよりは、手荷物として持った方が遥かに安全との事だった。


ちなみに、魔力は例外を除いて常に徐々に回復していくのだが、聖龍の保持している膨大な魔力は、空間をちょっと使った程度では回復量の方がうわまっているらしい。




「ふーん。そんな便利な物が使えるようになるんだ。」


小龍は適当に相づちをうちながら、おにぎりを次々と平らげていく。


「まあ、兄上の魔力の保有量では、まだ使われない方が懸命でしょう。

気付かないうちにピンチに陥ってあたふたする…というのも、ある意味美味しい光景ではありますが、万が一面白味のない死に方をされては目も当てられませんからね。」


「死ぬのはいいのかよ!?」


「面白い、が限定ではありますが………って、一応言っておきますが、冗談ですからね。」


疑念に満ちた眼差しを向ける小龍に、聖龍は少し愉しそうな、しかしどこか寂しげな眼差しで微笑んでいた。


それから2人は机に並ぶ握り飯を胃袋に片付けていき、最後に巨木を除き、聖龍は机や椅子を小さな芽に変えていく。


「いよっしゃ、いよいよ魔法か!くぅー!!ワクワクしてきた!」



「では、魔法を使うにあたっての、魔力の使い方の実習をいたしましょうか。」


魔法とは、この世界に存在する森羅万象を自身の魔力を通して発動させる事の呼称である。


簡単なものだと、何もない場所に種火程小さな火や、水溜まりほどの規模の水を発生させたりできる。


術者によっては津波のようなものや、溶岩のように高熱の火を放つことができる者もいる。


また、使う規模により、必要とする魔力が大きく変わっていくことは言うまでもないだろう。


「兄上は元々こちらの世界の住人ではありませんから、自身が持ち合わせている魔力について感じることからはじめなければいけません。」


「そうなの!?俺はてっきり呪文みたいなのを唱えれば使えるもんだと思ってたんだけど…。」


「確かに使えないわけではありませんが、今のままではまともな力を発揮することはできません。

例えば、薪を燃やそうとして炭にしてしまったり、逆に火を着けることすらできない場合まである。

ムラをなくすためにも魔力の操作は必須です。また、魔法とは少し異なりますが、魔力を身体の一部に通わせることによってその能力は飛躍的に上昇します。」


そう言い、聖龍は聳え立つ巨木に対し向き合うと、人差し指を巨木に突き立てた。


「…まじっすか。」


木にできた小さな穴を呆然と見やる小龍。


「この程度であれば、思わず涙を誘ってしまう程非力な兄上の実力でも、魔力さえうまく扱えればできますよ。」


「お前は一々貶さなきゃ喋れないのかよ!?」


「そんな!?…私はただ純粋に兄上の…そう!例えば悲しみに染まった顔。例えば不幸を体現した顔。

例えば苦汁に満ちた選択に迫られた時の絶望的な状況にのみ見せる顔。

そんな…色々な兄上を見たいだけなんです。」


あなたをもっと知りたいだけなんです!と豪語する聖龍だが、内容に説得力が欠片も見られない。


「お前は…そんなに俺が四苦八苦してるとこ見たいのかよ!?」「はい!」


一拍の間も置かず、なんともさっぱりした面持ちで答える聖龍に(忠誠度100って、まだ最高値じゃないのかもしれない…)と疑いを持たずにはいられない小龍であった。


「さて、本音を話し合うことでお互いの距離も縮まったことだし、そろそろ始めましょうか。」


「縮んでねえよ!!寧ろ、これでもか!って位容赦なく広がっちゃったよ!!最早光年レベルだよ!」




「まあ、冗談はさておきそろそろ魔力操作の練習に入りましょうか。このままでは日が暮れてしまいます。」


「え?なに?それって俺のせいなの?俺のせい?どっちかというと聖龍に非が…」




「それでは兄上、そこに背を向けて座ってください。」


この話題には厭きた、という表情で淡々と告げられる。


「…腑に落ちない。すっっっっっごく腑に落ちない。」


ぶつぶつと不満を漏らしながらも、渋々と聖龍に従い背を向けてその場に座り込む。


「いいですか?兄上が身体に備わっている魔力を扱うには、まず自身の中に眠っている魔力について感じ取らなければいけません。

ですから…」



元々この世界の住人ではない、居ないはずの小龍は本来魔力を持ちあわせておらず、この世界に来る際に自身の能力に相応しい魔力が授けられた。


それは彼にとってはもちろん異物であり、違和感を感じずにはいられない筈だった。


だが、この世界に来るときに、小龍は星々の祝福による副作用で意識がなかったため、目覚める前に身体に馴染んでしまい、尚且つ、一度も行使しなかったために、魔力が身体の奥底に眠っている状態なのだ。


「ちょっと待ってくれる…聞いた感じでは、聖龍が変なことしなかったら俺はもう魔力を扱えていて、魔法も使えていたってことじゃん!!」


此処まで聞いた時点で、小龍は不満を露にした。


本来此方に渡る際に済ませれていたことを、意識を失っていたせいで、二度手間を取らされているのだから当然だろう。


「あの時点での兄上の能力値では、魔力を渡されたときに生じる痛みに耐えかねていたと思いますが………まさか、自殺願望がお有りなのでしたか?」

と、素敵に微笑む聖龍。


その聖龍の言葉を耳にし、一瞬で表情が凍りつく。



「え…もしかして、今からやろうとしてることもそれなりに痛みを伴ったりなんかっちゃったり……」


「大丈夫ですよ。」


「な……………なんだよー。驚かせ」「死ぬことはありませんから。」


「い、いやー!!!!や、やっぱり痛いんじゃねーか!?」


小龍は頭を抱え、その場を暫く走り回っていたと思うと、急に立ち止まる。


「聖龍ならさ…聖龍なら痛みを感じないように、少しずつやるとか、なんとかできる…よな?」


振り返り様に見せるその表情は、全幅の信頼を込めた瞳と、子犬のような愛らしい微笑み。


それにはさすがの聖龍も折れざるをえなかったようで、小さくため息を溢す。


「はぁ、分かりました。こうしている間も、イベントは刻一刻と進み、兄上の生存率をガリガリと音をたてて削っているでしょうが、ゆっくりと、安全に参りましょうか。

………あ、今また下がりましたよ。」


ふわりと微笑む聖龍の瞳は、何故だか無性に怖かった。



即座に先程の指示通り再びその場に座り込み、聖龍に背を向ける小龍。


失礼します、と声をかけると小龍の背中に掌が添えられた。


その背中は僅かに震えており、それに気づいた聖龍は眉間に深い皺を作る。


(この状況は好ましくありませんね…しかし、これ以上時間を無駄にするわけには…)



いつになく緊張感のある聖龍の声に、自然と鼓動が早鐘を打ち、歯が微かに震える。


あまりの耐えがたいプレッシャーに「そういえばなんで後ろ向きなの?」と、小龍は特に意味もない質問をしていた。


ただの問題の先送りでしかないのだが、小龍からしてみれば、この気の張りつめた状況で相手の顔が見えないのは不安なのだ。


「前から向かい合えば非常に危険なのです。…とても、言い難いのですが…」


「い、いや。もういいから!だいたいわか」「吐瀉物がかかるのは避けたいので。」


「そんな理由なんだ!?ちくしょう!!」


「兄上と違って汚物にまみれる趣味はありませんので。」


「俺にもねえよ!!もういいからチャチャッとやって終わらせようぜ!」


まったく、とブツブツ悪態をつく小龍だが、先程とは異なり、震えは止まり、妙に落ち着いていた自分がいたことには気がつかなかった。


ましてや、後ろに居る人物が、優しく微笑みかけている事など知る由もなかった。



「それでは、今から私の魔力を兄上に流します。初めは覆うように。

そこからは、徐々に魔力の通り道、<魔力回路>に通していきます。」


この魔力回路は心臓から血管のように全身に行き渡っているが、小龍の回路は現在閉じているため、これを外部から強制的に開かせるというのだ。


この時に注ぐ魔力の調整が非常に難しく、魔力の扱いが未熟な者が行うと、相手の魔力を暴走させてしまう。



暴走とは、身体中に巡る魔力回路が破れてしまい、身体から魔力が漏れだすことだ。


魔力だけならば、暴走の反動で疲労困憊になり、一時的に動く事がしんどくなる程度で済む。


だが、暴走は魔力回路だけに止まらず、回路に沿った血管も同時に切ってしまう。


回路の中心部は心臓にあり、心臓の血管が切り裂かれ、大抵の者は息絶える結果に終わる。


つまり、一般的に、暴走とは死ぬことを指していた。






「目を閉じて、ゆっくりと深呼吸を繰り返してください。」


指示に従い、言われた通りにゆっくりと、深く呼吸を繰り返していると、不意に身体が暖かくなるのを感じた。



「なんか妙な圧迫感を感じる…」


「その感覚を忘れないで下さいね。兄上が戦闘するにあたっての基本であり、必殺になり得る技法の一つですから。」


「痛い、痛い痛い痛い痛い!?何これ超痛い!?い…たい…あ、が…う…」全身のあらゆる皮膚から異物が入り込んでくる感覚。


しかもその異物は、閉じかけている魔力回路を無理矢理抉じ開けて侵入してきている。


声にならない痛みは、彼の身体に更なる痛みをもたらす。


全身から汗が噴き出し、胃液は絶えず逆流してくるため、呼吸すらままならない。


唯一の救いは、さっき食べた物は何故か既に消化されていたことだ。


全神経を魔力に注いでいる聖龍の唇からは、先程から一筋の血が滴っていた。

全身を駆ける痛みに、意識を朦朧とさせていると、痛みが鈍い熱さに変わって身体を蝕み始めた。


(喉が…渇いたな。何で………何でこんな所に居るんだっけ?

………此処は暑いな。暑い…あつい。)


広場に不自然なほど大きく聳え立つ大樹。



青々と木の葉を生い茂らせていたその大樹が急速に枯れ始め、大地を燦々と照らしつけていた太陽を闇が包み出す。


(馬鹿な!?未だ私の干渉下にあるというのに…)


季節で言えば、夏に近い気候を一年中保つこの大陸で、周りの草花は茶色く色褪せ、口から漏れる吐息は白く色付く程気温が低下していた。


「あ…つい。身体、が…あつい。………アツイ…………カラダガアツイ。」

辺りの光が一瞬小龍に集束したかと思うと、全身からは闇が滲みはじめる。


「厄介な…数ある属性の中で、まさかこの様な使い勝手の悪い属性に好かれるとは。」


聖龍の添えていた両の手を、闇は緩やかに黒く染めていく。


ジクジクと音を立て、徐々に腐りはじめる手の事など気にも掛けず、魔力を注ぎ続ける。


『邪魔だ。…下がれ。これは私のものだ。私が見つけた。』


聖龍の頭に無機質な声が響きわたる。


それはどこか寂しく、そして冷たい声だった。


(これでやっと行程の半分か…絶対に…………死なせたりするものか。

ここであなたが死んでしまうようでは…私は何故産まれてきたというのだ!?)



「それで脅しているつもりか?低級精霊風情が…」


フッと笑みを漏らし、聖龍は口を開く。


「ふざけるな!?貴様ごときに兄上をどうこうする器はない。況してや、この私に致命傷を与えることすらままならぬわ!!」


『ギ…』


聖龍の身体が光を放つと、ピシッ、とガラスに罅が入った様な音が辺りに響き渡り、広場を覆っていた闇は砕け散り、霧散していった。




(…ひとまず山は越えましたね。)


広場に明かるさが戻って五分程度の時間が経過し、聖龍は添えていた両手を離し、傷を負った両手の治癒を始めた。


小龍はというと、未だに虚ろな瞳で空を眺めている。


「水よ。我が心を映し出す、清く澄んだ水よ…我が呼び掛けに応え、猛威を振るえ!!<秋水・来勢凶猛>(チウシュイ・ライシィシオンメン)」


水面に一滴の水が落ちる様な音がしたかと思うと、滝のような水が小龍の足下から噴き出し、その身体を軽々と宙へと誘った。


「へ?ちょっ、は?はああああああああ!?…マジで死んだ!!」


訳も分からず空高く打ち上げられた小龍は、空中で体制を崩し顔から真っ逆さまに地面に落ちていく。


それを地面すれすれの所で聖龍に抱えられる形で助けられた。


「気を御確かに御願いしますね兄上。ここでまた気絶されては全て水の泡ですから。」


「…言いたい事は良く分かったんだけどさ、もうちょっと他に手は…やっぱりあったんだよなちくしょう!!」


口ほどにものを言う。


正にその言葉を体現するかのような聖龍の表情に思わず悪態を吐く小龍。


「私も私でそれなりに大変だったんですから、ちょっとくらいお楽しみがあっても許されるのではないかと思いまして。つい。」


「つい?ついで君は人を殺せるような水柱を上げちゃったりするわけ!?

危うく味方の手にかかってこの世とおさらばする所だったんだぞ!!」


「そんな、誤解ですよ。私が兄上を殺そうとするなんて…。

現に、本来なら水柱ではなく、限界まで圧縮された何本もの水の鞭で相手を切り裂く術を、全く圧縮させることなく撃ったのですから、先程のように顔から落ちたりしない限りは死にませんよ。」


「それじゃあやっぱり死にかけてたんじゃないか!?」


「まあ、確かに圧縮せずに放てるかどうかは今回初めて知ることができたわけですが、新たな知識も備わったということで、今回の事は水になが…」


「人殺しー!?もし出来てなかったら俺は今ごろ」「鯛の尾頭付き状態だったかもしれませんね。」


飄々と告げる聖龍に、言葉を忘れる小龍。


「お、おおお、おま、おまお…」


「<秋水・来勢凶猛>」


小龍が意識を飛ばしかけた瞬間、再び大きな水柱が吹き荒れる。


「それはもういいよ!!!!」


今度は見事に足から着地をしてみせた小龍が怒りを露にして叫ぶ。


「気絶をしようとされていたから前振りかと思ったのですが…。」


「そんな訳ないだろ!?どんな前振りだよ!?昨今の芸人でもそこまで身体張らねえよ!!…全く。」


フフッ、と無邪気に笑う聖龍に全身から力が抜け落ち、思わずその場に座りこむ。


「足は…お怪我はございませんか?」


「…ん?足?…………そういえば、あんな高さから落ちてきた割りには、何ともないな…。」


「良かった。それでは魔力回路は、無事に開通できたようですね。」



「そうなの?なんか実感がないんだけど…。」


「防御力から、更には攻撃力まで大幅に上がっているはずです。

現にあの高さから落ちたにも関わらず、傷一つ負っていませんからね。」


「パラメーターがアップしたってこと!?」


「いえ、パラメーター自体は何ら変わっていません。変わったのは魔力の使い方です。」





この世界の住人は、大なり小なり魔力を使い暮らしている。


つまり、パラメーターは魔力ありきで表示されている。


しかし、小龍は魔力の回路が閉じている状態だったため、何をするにしても本来の力の3分の2程度しか使えていなかったのだ。


「そうは言うけど、この状態を常に維持するのはかなり骨だぞ。

なんか延々と走ってるような感じでしんどい…」


魔力は、薄い皮膚の様に小龍の全身を包んでいる。


この状態で動かなければ、本来は魔力は消費されない。


だが、まだ魔力をうまく制御しきれていない小龍には、その状態を維持しきれず魔力が漏れだしている。


その為、自然と回復する量を遥かに凌駕して魔力を消費してしまっているのだった。


「こればかりはどうしようもありませんね。使って慣れていく以外方法がありません。

魔力回路を開通する直前に私が兄上にやったのを覚えられていますか?」


「あの妙に暖かい感じのやつ?」


「そうです。あの状態を維持できるようになれば戦闘に於いて、パラメーター20前後までなら差があっても善戦できると思います。」


小龍は眉間に皺を寄せ、その時の感覚を記憶から探る。


自分ではその感覚を確かに覚えているのだが、魔力回路をうまく扱いきれないのだろう、完成形とはほど遠い出来栄えに思わず舌打ちをしてしまう。


「先程と比べれば上出来です。そんなに焦らずとも、経験を重ねていく内に使いこなせるようになりますよ。

最初は部分的に使っていけば宜しいかと。」


此の様に、と言いながら聖龍は左手を掲げるが、小龍には何をしているか理解できず、ただ首を捻るだけであった。


「これは失礼しました。これで…如何でしょうか?」


そう言うと、聖龍の掲げられた左手が淡く光を放ち始め、小龍はその魔力の密度に怯まずにはいられなかった。


今自分がそれに挑戦したとして、到底できるものではないと判断した故にだった。


魔力を扱えるようになって初めて実感できる聖龍との実力の差。


それは成長したが故に感じられた絶望に等しい差だった。


力を手にした者が大抵考えることは、その強さを突き詰めること。


小龍とて例外ではなかったが、目の前の自分の想像を遥かに越えた存在に悔しさと、同時に嬉しくも感じていた。


(絶対に強くなってやる。ここまで強い聖龍が鍛えてくれる上に、護りもしてくれるなんて…………。

この先…ちょろいな。

………………あれ?というか…そもそも鍛える必要なくね?)


強さを突き詰めることを一瞬でも考えた人物とは思い難い思考内容だが、この考えが甘い事をそう遠くない未来に実感させられることになるのだった。





「そういえば大事なことを失念していました。」


「ん?何?」


「先程この状態の魔力を見ることが叶いませんでしたね。」


そう言うと、徐々に聖龍の左手の光は姿を隠していく。


「………駄目だ。やっぱり何にも見えない。なんか違和感があるような気がしなくもないんだけど…。」


「目を凝らすのではなく、目に魔力を集中させてみてください。」


「目に?」

一度全身に纏うように出していた魔力を全て消し、今度はそれをできる限り目の一点に集中させた。


「見えた!!でも…左手だけじゃないよな?身体全体も左手程じゃないけど魔力を纏ってるように見える。」


「正解です。そのままもうちょっと出力が上げれるようになれば、相手のパラメーターも見れるようになりますよ。

今私たちが住んでいる村の住民は、その程度の魔力操作であれば難なくできます。

兄上も練習すれば一晩もしない内にできるようになるはずです。

いえ…兄上の場合は星々の祝福の効果がありますから、数時間としない内にマスターできるでしょう。」


「そっか…まずは村人を越すことからってことね…はぁ。」


村人ならば誰でも出来ると聞き、深く溜め息をつき、肩を落とす小龍。


そんな小龍に、珍しく優しい言葉をかける聖龍。


「村人と言いましたが、この大陸に居る村人と、他の大陸に居る村人を一緒にしない方が宜しいですよ。」


この大陸には国もなければ街もない。


あるのは僅かに人々が身を寄せあって暮らしている集落のようなものだけだ。


整備されていない大陸というものは、魔物にとってみればそれだけで一つの国と等しい。


つまり、魔物が闊歩するこの南の大陸で、戦闘能力は生きていく上で切っても切り離せない条件となる。


故に、この大陸に住む者達は、幼いときから戦闘に関してはある程度の水準を持っているのだった。


「こ、こわ!?何その理由!?魔物も怖いけど、その中で普通に暮らせるだけの実力者だらけって…。

もし盗賊でも居ようものなら、とんでもない集団なんじゃ…。

何でまた最初の拠点をそんな大陸にしたわけ?」


「実力者が多いに越したことはありませんからね。

国を興した時点で優秀な兵士には困らないなんて、条件としてはこれ以上に最適な所はない。

そうは思われませんか?」


心底不思議そうに尋ねてくる聖龍に言いたい。

俺は果たして選べる立場なのかと。むしろ、現状としては彼等の格好の獲物なのではなかろうか……。


ガクブル震える小龍を、満足そうに見つめる聖龍には気付かぬまま、逃げ場すら奪われた小龍は、訓練に励むと一人心に誓うのだった。


そんな誓いをひっそりとたてているときに、聖龍はいつの間にかティーセットを木造の机に並べ、お茶の準備をしていた。


「今の兄上には相手のパラメーターは難しくても、自分のでしたら見れると思いますよ。」


聖龍は、お茶菓子の準備まで終わらせると、小龍を正面の席に促しつつそう口を開いた。




「自分のが?どれどれ…。」


小龍は、両目に魔力を集め自身の身体を見つめるが、特に変わったところはみられなかった。


「いえ、そうではなくてですね。頭の中心部に魔力を集めてみてください。

そうすれば自身のステータス画面が目の前に浮かぶはずです。」


「頭の中心に…集中させる……集中…。」








頭に魔力が集まりだすと共に、その中心部が僅かに熱を持ち始めた。


それに伴い、ゆっくりと頭の中に自分のステータス画面が表示される。




氏名=小龍シャオロン

字=飛龍

性別=男

タイプ=ヒモ、またはニート(だが、大器晩成ゆえに、今後激しい変動の可能性有り) フェロモン体質

性格=優柔不断、温厚

身長=175

体重=62


パラメーター


力=32(筋力34 防御力30+15)

器用=60(命中50 回避70)

知能=43(魔力24 学習能力62

魅力=107

加護=不明



称号=探求せし者:引き籠り(効果:防御力1.5倍)



「………この称号って何?」


「称号ですか?これはその者の行動により付くものです。

中にはパラメーターを向上させる効果の持つ稀な物もございます。」


「…俺が持ってるやつみたいに?」


「はい!」


聖龍の声はこの上なく無邪気で、顔に至っては興奮により赤く上気している。


「その称号は探求せし者の中でも最も手にし難い称号です。

ただ引き籠れば良いという訳ではありませんからね。時間にして10年の月日を自分の意思により一室に引き籠る必要があります。

その間に、少しでも引き籠ることを良しとしない場合は称号を獲ることは出来ません。

これを兄上に獲得していただくに当たり、どれだけ私が心を砕いたか。

これだけ不名誉な称号にも関わらず、効果に於いては防御力を1.5倍にするという恐ろしさ!

誰もが手に入れたくない不名誉な称号でありながら、誰もが欲する効果を持つ稀な称号。

例えどれ程不名誉…」「もういいよ!?何回不名誉不名誉って連呼する気だよ!?さすがに泣くぞ!!」


事実、小龍の目頭は、辛うじて男としてのプライドを留めている状態だ。


「大体十年ってなんだよ!?俺は昨日一日部屋に引き籠っていただけだろ!?

それだけでなんでこんな不名誉なあだ名を貰わなきゃいけないわけ!?」


「兄上。あだ名ではなく称号です。」


「知ってるよ!!てかどうでも良いよそんなこと!!」


「やれやれ…しようがありませんね。兄上は此処に来られてからどのくらい時間が経ちましたか?」


「だから一日だって!」


「では、兄上の年齢は?」


「18だよ。」


「それではこの世界での兄上の年齢は?」


「だから18だってば!」


「ですよね。だからです。」


「………は?ごめん…意味がわからないんだけど。」


「この世界において兄上は18になられます。これはいいですね?」


「え?うん。」


「しかし、兄上はこの世界に来られてから一日しか経っていない…この世界の住人なのに、です。これでは矛盾が生じますよね?」


「言われてみれば確かにそうかもしれないけど、そんなのどうしようもないんじゃ?」


「ええ。ですからその矛盾を解消するために、昨日一日でこちらの年月で18年過ごされたということになったのです。

18年間……ずっと部屋の中で。」


聖龍の肩は微かに震えており、それは間違いなく笑いを堪えたことによるものだ。


「っ!?………ここに来る前に、会った人達が妙に生暖かい眼差しで見つめてきたり、励ましの言葉を掛けてきてたのって…。

もしかして………。」


「皆さんは勿論、兄上のパラメーターを見れますからね。称号の引き籠りを。」


「やっぱりかチクショー。」、と声を辺りに木霊させ、家に向かい走り出す小龍。


「兄上!……そんな!?熟練度はもう上げなくても十分過ぎる程というのに。

さすが探求をせし者を手に入れただけはありますね。素晴らしい向上心です。」


聖龍は、フフッ、と小さく笑みを溢していると、急に厳めしい表情を浮かべる。


「どうやら、次のイベントが既に近づいて来ているようですね。」


「少々…骨が折れますね。」と、天を仰ぎ一人呟く聖龍の顔はどこか悲しげであった。

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