第一話
修正はするかもですが、書き足しはしません…多分(笑)
次は二話にする予定です。
感想カモン!!(笑)
「文章が稚拙」とか「おもんない」とかそういった文でもいいんで(テンション下がるからできれば誉める方向性でお願いします(笑))続きを書きたいという原動力をください(笑)
小鳥の囀りがそこかしこから聴こえ、頭が少しずつクリアになってくる。
身体が妙にだるく、未だ目を開けることはできない。
頬を撫でる風や、差し込む陽光が心地好く、意識は再び闇に引き摺られていく。
完全に意識を手放しかけたそのとき、誰かが傍に寄ってくる気配を感じとり、そのストレスが男の目を強制的に開かせた。
「おや?小龍様。お目覚めでしたら朝食の準備ができていますよ。」
小龍は昔から誰かが傍に居るときは、まともに睡眠を摂ることができないでいた。
そんな彼が唯一安心して寝ることができたのは、家族の前だけ。
つまり、両親亡き今、兄以外が自分の部屋に入るような事になると、この様に強制的に目を醒ましてしまうのだった。
(…誰?)
眠たいながらも、自分の部屋に入ってくるであろう可能性の有る人物を、頭を巡らせ考える。
しかし、いくら考えても心当たりは全くなく、結局はまた(…誰?)に行き着くのだった。
部屋に漂ってくる匂いを鼻が敏感に感じとり、意識がハッキリとしてくる。
目の前の白髪混じりの女性が言った朝食の臭いなのだろう。
「それじゃあ…よろしくお願いします。」
香ってくるその匂いが、懐かしい母お手製の味噌汁を思い出させ、目の前の白髪混じりの女性が誰かということよりも、朝食を頼むことを優先させた。
「はい。ただいま持って参りますね。」
部屋の片付けをしていた女性は穏やかに微笑み、出口へ振り返るとそこには膳を抱えた聖龍がちょうど部屋に入らんとしていた。
「おやおや、聖龍様。そのような些末事はわたくしがしましたのに。」
「いえ、いつまでもこの家の家事や炊事を貴女一人に頼りきっていては私達兄弟が駄目になってしまいますから。この位はさせてくださいね。」
そうにっこり微笑むその顔は、あの真っ暗な空間では見たことのないほど無邪気な笑顔だった。
「まあまあ…わたくしのような一介の使用人に…この家に仕えることができて私は本当に幸福者です。」
「それは私とて同じ気持ちです。
さあ、ここはもうよろしいので、あなたもそろそろ朝食を採られてはいかがです。
…あぁ、そうそう。ついでに竈の火を消しておいてください。
私はもうお先に頂きましたので。」
恭しく頭を下げ土間へ向かう女性を見送り、手に持っていた膳を部屋の中央に設置されている机に置く。
「お目覚めは如何ですか兄上。朝食は食べられそうですか?」
どこか思案顔の聖龍は、小龍に近づき、額に手を当て下から顔を覗かせる。
「熱はもう引いたようですね。
さあ、御召し物を替えられたら朝食を採ってください。
食べやすいようにおじやにしておきましたから。」
熱がないことを確認すると、ホッと胸を撫で下ろし、先程女性に向けていたものと同じような笑みを浮かべる。
(………誰これ?)
先程の女性とは違い、この男の顔には確かに見覚えがある。が、あるが故に小龍はそう思わずにはいられなかった。
(こ、こんな奴知らない……
妙に人間味はあるし、どこからどう見ても温厚で優しそうだし、何より俺の事を本当に心配してたきらいが………有り得ない!!)
あの真っ暗な空間で出会ったあの青年と、今この場にいる青年とで全く印象が異なるため、小龍は所謂恐慌状態に陥っていた。
「声がしっかり漏れていますよ。
頭の中の考え事を整理されないまま口にすることは愚者のすること。
これからはもっと気を付けてくださいね。
まあ…もっとも、兄上の実に残念な能力値では私の事を本当にお忘れになっていても、個人的には何ら不思議には思いませんが。」
先程と寸分違わず、誰が見ても慈悲深いその表情から紡がれたその言葉を耳にして「………よかった。こいつなら知ってる。」と思わず一人呟く。
普通であれば、憤慨してもおかしくない台詞を聞いて尚安堵をしてしまう小龍は、確かに聖龍が言う「残念な」がしっくりくるだろう。
一通り着替えも終わり、用意された食事が冷めない内にと手をつける。
ある程度出された食事を平らげたところで、気になっていたことを訊いてみることにした。
「そういえばさっきの人は誰?
俺の事をシャオロンって言ってたけど、俺の名前は小龍のはずなんだけど…後、ここは…ネバーランドじゃないよね、やっぱり。」
「おや?一応その程度の認識力はお持ちなのですね。安心しました。」
「ああ、うん。一応誉められたことにしておく…」
相変わらずの極上スマイルで毒づく聖龍だったが、突っ込みを入れれば入れるほど精神ダメージを深く負う事になると自覚し始めた小龍は、敢えてそれには触れずに話を促した。
「…そうですね。では、順を追って答えましょうか。
まずは彼女は誰かということですが、端的に言って、この家の使用人です。
名前はフリエ。私達はフリエさんと御呼びしていますね。
兄上の名前についてですが、これは私につけられた名前が原因です。」
フリエについては納得したが、名前については、それだけでは意味がわからず首を傾げる。
「絶対に…いや間違いなく…いや、多分…いやいや、恐らくは…うーん…そう!!奇跡的に、もうお気づきとは思いますが…私が先程フリエさんに『しょうりゅう』と呼ばれていましたよね。」
どんどん下がっていく可能性に(嘘つけ!絶対思ってないだろ!?)と内心思うのだが、話の腰を折ると脱線しかねないので大人しく続きを聞き入る。
「兄上は私を聖龍と名付けられましたが、この世界において聖龍とは<光輝龍>の事を指します。
光輝龍とは数多の龍や龍人の始祖。
龍人でさえ『せいりゅう』と名付ける際にも、<聖龍>の二文字を用いることは畏れ多い事とされており、同音語を用いるそうです。
ましてや、私は兄上と同じ純粋な人間種ですから<聖龍>と書いて『せいりゅう』と名付けることは龍人や龍からすると侮辱されたとなるわけです。
ここで、苦肉の策ではありますが、聖龍と書いて『しょうりゅう』とさせていただきました。
この程度であれば軽い反感程度で…済むはずはないんですが…まあ、そんな理由です。」
相手がただの憧れにより付けたのだと解釈してくださればいいが。と、呟く姿はいつになく弱気だった。
「俺の名前と被るから俺の名前の呼び方変えたんだ。
じゃあ、聖龍じゃなくて何か別の名前に自分で変えれなかったの?」
「不可能ではありませんでしたが…」
(兄上が私に授けてくださった名前を変えるのは…)
小龍の問いに、どこか物悲しげな表情で微笑む。
その顔は、いつもの計算によるものとは異なり、心から滲み出たものだった。
「…聖龍?大丈夫か?」
「あぁ、はい。…名前でしたね。」
「いや、そうじゃなくて…」
「兄上の小龍という文字は、遺失言語から『小龍=シャオロン』と呼び方を付けさせていただきました。
確か、かつては中国語とか呼ばれていたかと…。
どちらかと言えば、この世界では半分以上の人がこの遺失言語から名前を付けますから、シャオロンとした方が不自然ではない呼び方かと。」
小龍の言葉は、重ねられた聖龍の言葉に宙空へと消える。
それは小龍に続く言葉を遮るためのほんの僅かな抵抗。
それをなんとなく肌で感じた小龍は、黙って聖龍の話しを聞くことに徹したのだった。
「後は…此処が何処であるか、でしたね。
ここはネバーランドではなく、ソウルガイアと呼ばれる世界です。
その中でもここはもっとも南に位置する、名前もない小さな村です。」
<ソウルガイア>には大きく分けて三つの国に別れている。
北の大国アイスゲート、西の大国ヘントリウム、東の大国ヤマト。
北は主に精霊種である龍人の率いる国で、東は純人間種。
西は亜人に種別される<オーガ>、向こうの世界での鬼と呼ばれる姿に似た人種が率いている。
そして今現在二人が居る南の大陸。
ここには目立った国もなく、色々な人種が集まり細々と暮らしている。
そして、未だ決まった名称もないことから、多くの人々は無名と呼んでいる。
もちろんアイスゲートやヘントリウム、ヤマト等の3大国といえど、それぞれがそれぞれの大陸全土を支配しているわけではなく、今現在戦線拡大中だ。
「……話の途中で腰を折るのが俺の悪い癖なのは理解してるつもりなんだけどさ…」
「構いませんよ。
何か質問があれば………忘れない内にどうぞ。」
「妙に棘のある優しさをどうもありがとう…
確か、ナビゲーターの話では、国、街、村と、規模に関係なく初めから領主で始めれたはずなんだけど、なんでこんな辺鄙な場所からスタートしてんの?」
「…はて?」
聖龍は、小龍の質問の意図がわからない、と言いたげな表情で首を傾げた。
「もしやとは思いますが、兄上は御自覚がおありでないのですか?」
聖龍の質問の意味が理解できず、小龍までもつられるように小首を傾げる。
それでもなんとか理解しようと考えた結果、出た言葉が「ごめん…全く意味がわかりません。」だった。
「はぁ…しょうがありませんね。
いいですか?
兄上がもし三大国のいずれかの領主から始めたとしましょう。
この世界の事はおろか、国や民のことすら理解されていない者が上に立てば必ず波風がたちます。
況してや、規模の大きい国であればあるほど自国を掌握することは容易ではありません。
そのような不安定な情勢を私達だけで何とかしなければならないのです。
想像できますか?
気が付けば、顔の見栄えが良いだけの何も知らない馬鹿が自分達の領主になっており…
「ねえ、それってもしかしなくても俺のこと?なぁ?なあ!?」
…そしていきなり軍師に抜擢された顔は言うまでもなく、凄まじく優秀な年端もいかない青年と、唯一私達が信頼を寄せることのできる僅かな仲間。」
「無視かよ!?てか自分だけ美化しすぎだろ!?」
「…客観的に見た事実です。
この様な状況を不満に思わない者はおおよそ兄上のような者達だけ…」
「…つまり馬鹿だけと。」
「っ!?
…また一つ御成長なされたようで。
臣下として、また、弟として嬉しく存じます。」
(何なのこの子!?何でこんなに辛辣なの?………って、あれ!?)
頭の中で何度も繰り返される聖龍の言葉の中に、妙に引っ掛かる単語が含まれていたことに気付く。
─「…唯一私達が信頼を寄せることのできる僅かな仲間…」─
何度もエコーがかかったように、聖龍のこの言葉が頭を巡る。
「仲間…仲間?あっ!!そういえば他の仲間はどんなの?てか俺のパラメーターはちゃんと上げてくれた?」
つい先程までの不満そうな表情を、満面の笑みに変える子供のような反応に(あぁ…兄上のこのお顔も、あの事を話せば絶望に染まってしまうのだろう…早く…いや、ゆっくりと楽しまねば。)と、聖龍は思いを走らせ、恍惚に緩む顔を必死に堪え、口を開いた。
「えぇ。それは勿論、何処に出しても恥じることのない強者ばかり揃えておきましたよ。…4人ほど。」
「4人か。想定していたのより一人多いけど、
やっぱりいまいちイメージが固まってなかったから?ツンデレ美人はさておき、双剣か槍の使い手って言っちゃったもんな。
まあいっか…それで、俺のパラメーターは?」
少し気まずそうに頭を掻きながらぼやくも、すぐに瞳を輝かせ、机越しの聖龍にグイッと身を乗り出し距離を縮める。
「兄上。私は四人と言いましたが。」
いつものように微笑むわけでもなく、只々無感情に言葉を続ける聖龍の感情は、小龍には読み取れなかった。
「え?だから、聖龍に、双剣と槍の使い手、後は………え?まさか…四人って言うのは…」
「はい。私を除いてあと四人ってことですよ。」
輝くような瞳が段々と濁っていく一方と、堪えることなく、顔に恍惚とした笑みを漏らし始める一方。
どちらがどちらとは言わずもわかるだろう。
「…作成は一人10ポイントだったよな。」
「そうですね。」
「それで、俺が持ってたポイントは…」
「きっかり50でしたね。」
「五人作成したってことは…」
至福の表情を浮かべる聖龍は「使いきっちゃいました。」と、悪びれもなくそう告げた。
「………。」
何やら言葉を発しようと口を動かすが、空気を吐くだけで、うまく言葉にならない。
やがて、パクパクと金魚のように動いていた口が動きを止めると、同時に、糸が切れた操り人形のように小龍はその場に倒れた。
「あれ?兄上?……。」
きっと狂気乱舞するに違いないと楽しみにしていた聖龍の期待とは裏腹に、まるで事尽きた様に倒れた小龍に戸惑いながらもゆっくりと近づいていく。
(…気を失っていますね、完全に。)
「よもやこんな話の序盤で気絶されるとは、この先の展開にとてもついていけそうにない…か。
今回は少し残念ではありましたが…これはこれで鍛えがいがありますね…。」
「兄上、今は未だ…御健やかにお休みください。」と、妖しく笑う聖龍。
その成果を、随分後で身をもって体験することになるのだが、今はまだ、彼には知るよしもなかった。
********
近くに何かが居る気配に目を醒ますと、椅子に座り、優雅にお茶を啜る男の背中が目に入る。
「夢であって欲しかった…。」
目の前の人物に聞こえないよう、一人呟く小龍。
「おや。お目覚めがよろしいようで、安心しました。」
小龍の気配に気づいたらしく、聖龍は後ろに振り向くと、そんな言葉を投げ掛けた。
「ありがとう…人生において最悪の目覚めだよ。」
「ふふっ、それはそれは…
まあ、これから事を経ていけば、今日の寝覚めはそれなりに悪くないと思えるようになりますよ。」
これまで見た中で、これ以上ないと言えるほど、心から愉しそうに、ほっこりと無邪気な笑顔をみせる聖龍。
「………。…帰りたい。お家に帰りたい!!
やっぱり、ハンターの仕事は危険と隣り合わせってのは本当だったんだ…」
危険な目に遭う、と云うよりは、危険を自ら呼んでいるのだが、それには小龍は気付いていない。
「安心してください兄上。私がいるではありませんか。
少々の事では兄上が危険に晒されることはありませんよ。」
本来上昇させることの出来たはずの能力値を、殆ど素のまま来ると云う、既にとてつもない危険に晒されているのだが、その危険を自身がもたらしたと自覚のある聖龍は、柔和な笑みをもって答える。
(はぁ……………。
どっちにしたってもう後戻りはできないんだよな。
パラメーターが上げれることもあの空間に行くまでは知らなかったし、初めからなかったと思えば…
それに、優秀な仲間が五人もお供に付いてくれるなら…良しとするか。)
この短時間で、もはや諦めの境地に辿り着いた小龍は、大きな溜め息を吐き出し「よし!」と声を上げると、本来の目的の為に頭を切り替える。
「いつまでも過ぎたことを考えても先には進まないよな…」
「その切り替えの早さはさすがですね!尊敬致します。」
「それ間違いなく褒めてないだろ!?
まったく…………
それじゃあ、これからどうするか相談したいし、皆を紹介がてら呼んできてくれ。
善は急げだ!!
今日から早速目的の物を手に入れる準備に取り掛かろう!」
「皆?と申しますと?」
「いや、だから…あと四人仲間がいるんだろ?どんな奴等か知っておきたいし。」
「あぁ。そういえばまだ言ってませんでしたね。」
まるで今正に思い出したかの様に、わざとらしく右拳で左手をポン、と叩く。
「彼等は話を進めていく内に登場するようにしておいたので、今はいませんよ。」
「…は?」
聖龍の言葉に思わず間の抜けた返事をしてしまう小龍。
「少しずつ任務を進めていく内に、いつか登場するはずですから大丈夫です。」
「……具体的に言うといつ頃?」
「この南の大陸に国を建ち上げる頃には揃うのではないかと。」
「…。」
さすがにこの言葉には言葉を失う小龍。
「大国から始めるならいざ知らず、領主でもない身空でいきなり反則級の仲間勢揃いでは、兄上の今後の成長の妨げになりかねませんから。
まずは地道にこの世界に慣れていきつつ能力を高め、最終的にはこの大陸を治めるに至る。
そこで初めて知力上昇アイテム入手に着手されるがよろしいかと。
今の状態で手に入れても、それを持ち帰るための任務をクリアすることは確実に不可能ですから。」
「…その口ぶりからすると、聖龍はどの程度の任務をこなすことで、星々の祝福を持って帰ることができるか目処がたってるんだな?」
「はい。御聞きになりたいですか?」
「…いや、今は取り敢えず堪えれる気がしないからやめとく。」
心底愉しそうにこちらを見据えていた聖龍だが、予想していなかった反応に少し眉をひそめた。
「そうですか………………。」
心底残念そうな表情の聖龍と、それを見て、どこか安堵をみせる小龍。
所謂、問題の先伸ばしにすぎない行為ではあるが、これまで度重なる問題の襲来にほとほと疲れ果てていたので、現状としてはある程度力がついてからの方が良いと判断したのだ。
少し落ち着きを取り戻しつつある小龍を横目で確認すると、聖龍はこれまた心底残念そうにポツリと呟く。
「はぁ……………確かに、南の大陸全土に厭きたらず、この世界その物を掌握しなければならないなんて…しかも、ソウルガイアに入る前に、目的を明確にしていたせいで、達成しなければならない任務を変更できないなんて………今聞いても気分を害するだけかもしれませんね。」
「…っと…これは失礼しました。」思わず呟いてしまった。という表情の聖龍と「ウアアアァァァァ!?」と叫びながらベットへ飛び込み布団にくるまる小龍。
(このような兄上を見ると、心が非常に痛むが、これはあくまで、問題の先送りをしていては、国は滅びの一途を辿りかねない、ということを教えるためであり、私の義務感故の所業なのだ。)
誰が聞いているわけでもないのに言い訳しながら、溢れでる愉悦…もとい………
愛しさに、肩を振るわせた。
その日、小龍はご飯も摂らず一日布団にくるまり、部屋に引き籠った。