第3章 アルゴ進化への道 第23話 静かなる準備
第23話です。
物語は少しずつ決戦へ向かって動き出します。
今回は大きな戦いの前の“準備”の回です。
静かな中で、それぞれが何を選ぶのか。
そんな空気を感じていただけたら嬉しいです。
ヴァルディア外縁の拠点。
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加工装置の低い駆動音だけが響く中、
修一は設計図を見つめていた。
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そのとき。
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――コツ、コツ……
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静かな足音。
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扉の前で止まる。
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そして、
ゆっくりと開いた。
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ノクスだった。
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修一
「どうした」
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ノクスは短く言う。
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「動きがあった」
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空気が変わる。
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「ルーヴェンハイムだ」
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クロウ
「……またか」
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ノクス
「リジェネカプセルを他大陸へ輸出する」
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カイゼル
「輸出……?」
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ノクス
「魔導船三隻。上級魔道士十五人が護衛についた」
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クロウ
「ごっそり出たな……」
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ノクス
「海へ向かった。戻るには時間がかかる」
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修一がゆっくり口を開く。
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「……ってことは」
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ノクス
「今、ルーヴェンハイムの守りは薄い」
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沈黙。
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クロウ
「チャンス……だな」
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修一
「……いや」
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「チャンスにするしかない」
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カイゼル
「でも、まだ残ってるわよね」
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ノクス
「上級魔道士はおよそ十五」
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クロウ
「半分か……」
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修一
「問題はそこだな」
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ノクス
「全員敵に回せば、勝てない」
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修一
「なら――」
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「敵じゃなくすればいい」
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クロウ
「簡単に言うなよ」
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修一
「簡単じゃない」
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「でも、やり方はある」
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修一は一つずつ言葉を置く。
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「まず――金」
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「ルーヴェンハイムは金で上級魔道士を集めてる」
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「忠誠じゃなく、条件で動いてるってことだ」
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カイゼル
「……そうね」
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修一
「次に弱み」
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クロウが口元を歪める。
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「コロシアム、カプセルの売り方……」
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「掘ればいくらでも出てくる」
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ノクス
「……それだけでは足りない」
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修一はうなずく。
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「だから最後に――見せる」
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「医療だ」
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空気が少し変わる。
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「俺たちは助ける」
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「向こうは選ぶ」
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「どっちにつくか」
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「自分で選ばせる」
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静かな沈黙。
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カイゼル
「……それなら」
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「動く人はいるかもしれない」
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ノクス
「半数動けば十分だ」
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クロウ
「で、一番の問題は?」
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ノクス
「グラディウス」
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空気が重く沈む。
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ノクス
「元・大賢者」
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「今は操られている」
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クロウ
「それ、どうすんだよ」
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修一が言う。
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「……魔法を使わせなきゃいい」
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全員の動きが止まる。
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ノクス
「……魔法を無効化するのか」
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修一
「できるだろ」
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ノクスは少しだけ間を置く。
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「……可能だ」
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「24時間限定ではあるがな」
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修一
「十分だ」
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クロウ
「いや、その間に倒すってことか?」
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修一は設計図を広げる。
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人型のシルエット。
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カイゼル
「……アルゴ?」
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アルゴ
『新形態案:人型戦闘特化』
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修一
「魔法が使えないなら」
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「殴るしかない」
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クロウ
「……発想が雑すぎるだろ」
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修一
「いいだろ別に」
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カイゼルが小さく笑う。
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「でも、理にかなってる」
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ノクス
「……勝てる保証はない」
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修一は迷わない。
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「それでもやる」
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「ここで止まったら」
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「全部、無駄になる」
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静寂。
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やがて。
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ノクス
「……協力する」
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「最後までだ」
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その一言で、
すべてが動き出す。
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修一は設計図を見つめる。
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「……行くぞ」
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アルゴ
『了解』
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静かな準備は終わる。
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次は――
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戦いだ。
第23話を読んでいただきありがとうございます。
ルーヴェンハイムに対して、
どう動くのかが少し見えてきた回になりました。
そして次は――
いよいよ“戦うための力”を形にしていきます。
ここから一気に展開が動いていきますので、
引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです




