第3章 アルゴ進化への道 第4話 影の手
第4話です。
今回は新たな仲間となるクロウとのやり取りと、
少しだけその力の一端が見える回になっています。
ここからアルゴの進化も本格的に始まっていきますので、
ぜひ楽しんでいただけたら嬉しいです。
ヴァルディア外縁。
地下拠点。
静かな空間に、工具の音だけが小さく響いていた。
修一とクロウが戻ってくる。
セリナがすぐに顔を上げた。
「おかえりなさい」
カイゼルも視線を向ける。
修一はそのまま言う。
「ちょっと話がある」
軽く親指で隣を指す。
「こいつ、クロウ」
「職人だ」
クロウは軽く頭を下げる。
「……クロウだ」
短い。
余計なことは言わない。
セリナも頭を下げ返す。
「セリナです」
カイゼルも静かに言う。
「カイゼルよ」
その場に少しだけ間が落ちる。
ノクスはいない。
拠点の空気は、いつもよりわずかに柔らかい。
修一はすぐに本題へ入る。
「アルゴの調整、こいつがやる」
セリナが目を瞬かせる。
「え……?」
カイゼルも驚いたように見る。
修一はあっさり続ける。
「さっき見たけど、レベルが違う」
その言い方に誇張はない。
事実として言っていた。
クロウは何も答えない。
ただ、アルゴを見る。
その目が少しだけ変わる。
観察する目。
見ているようで、測っているようでもある。
やがて口を開く。
「……分解していいか」
修一は即答した。
「任せる」
作業が始まる。
クロウが動く。
速い。
そして正確だ。
迷いがない。
ネジの位置を見つけるのも、内部の配線に手を入れるのも、すべてが自然すぎる。
セリナが思わずつぶやく。
「……すごい……」
カイゼルも小さくうなずく。
「……確かに」
工具の音が続く。
カチ、カチ、と小さな金属音。
その手つきには無駄がない。
まるで最初から中身を知っているような動きだった。
そのとき。
クロウの手が、一瞬だけ止まる。
ほんのわずか。
見逃しそうなほど短い間。
だが、修一は見ていた。
次の瞬間には、また動き出す。
カチ、カチ、と微調整が入る。
そして。
「……終わりだ」
アルゴの目がわずかに光る。
「誤差、解消」
修一の目が細くなる。
「……今の」
クロウを見る。
「なんで止まった」
沈黙。
クロウは少しだけ考える。
言うべきかどうか、測っているようだった。
そして、小さく言う。
「……お前には見せておく」
修一
「……何をだ」
クロウはそれ以上説明しない。
「来い」
拠点の外。
人気のない場所。
風が静かに流れている。
クロウはポケットから小さな金属片を取り出した。
何の変哲もない、ただの破片に見える。
それを軽く放る。
金属片が落ちる。
その瞬間。
クロウの手が動く。
“落ちる前に”
もう掴んでいた。
修一
「……は?」
一拍遅れて、落ちるはずだった位置に視線が追いつく。
違和感。
明らかに、先に動いている。
修一は眉をひそめる。
「……今の何だ」
クロウは金属片を指先で弄びながら言う。
「少し先が見える」
「ほんの一瞬だけだ」
修一
「……未来予知か?」
クロウは首を振る。
「そこまで大げさじゃない」
一拍。
「次にどうなるかが、少しだけわかる」
「だから」
「失敗しそうな動きは、避けられる」
修一は納得したように息を吐く。
「……なるほどな」
だからあの調整も止まった。
壊れる動きを、先に見た。
クロウは淡々と続ける。
「ただし――」
少しだけ間。
「全部当たるわけじゃない」
「ズレることもある」
「だから、頼りすぎると危ない」
修一
「……完全じゃないってことか」
クロウ
「そういうことだ」
沈黙。
修一は少しだけ笑う。
「……それでも十分すぎるだろ」
クロウは何も言わない。
だが、少しだけ空気が緩む。
拠点へ戻る。
セリナがすぐに聞いてくる。
「どうでした?」
修一は短く答えた。
「……すげえのが来た」
その一言で十分だった。
カイゼルもクロウを見る。
その目には警戒よりも興味が強い。
ただの職人ではない。
だが、敵でもなさそうだ。
修一は空気を切り替えるように言う。
「よし」
全員の視線が集まる。
「始めるぞ」
アルゴが応じる。
「ユニコーン形態、設計中」
「試作可能」
修一はうなずく。
「いいな」
「やろう」
地下の空気が変わる。
新しい流れ。
新しい戦力。
進化が始まる。
その中心にいるのは、AIと人間。
そして――
影を持つ男、クロウ。
まだ何者かは分からない。
だが一つだけ、はっきりしていた。
この男が加われば、戦い方そのものが変わる。
読んでいただきありがとうございます!
今回はクロウの合流と、
その能力の一部を描いた回になりました。
一見するとただの職人ですが、
少し先を読む力によって、
普通とは違う立ち位置のキャラクターになっています。
修一との関係もこれから少しずつ変わっていきますので、
そのあたりも楽しんでいただけたら嬉しいです。
そして、いよいよアルゴの進化が本格的にスタートします。
ここからは試行錯誤や失敗も含めて、
新しい力を作っていく流れになりますので、
引き続きよろしくお願いします!
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