第2章 冴えないオッサン、魔法至上の世界へ 第44話 撤退
第44話です。
今回は戦いの中での判断と、
これからに向けた動きが描かれる回になります。
一度引くという選択が、
どういう意味を持つのかも感じていただけたら嬉しいです。
地下通路。
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暗闇の中を、
ひたすら進む。
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誰も、
振り返らない。
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ただ前へ。
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しばらくして。
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ようやく足が止まる。
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セリナ
「……ここまで来れば……」
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アルゴ
「追跡反応、消失」
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修一
「……逃げ切ったか」
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小さく息を吐く。
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ノクスは壁にもたれ、
静かに立っている。
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カイゼルは座り込んでいる。
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まだ完全には回復していない。
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沈黙。
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修一が口を開く。
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「……正直、きついな」
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誰も否定しない。
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「戦力が足りねえ」
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短く。
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カイゼル
「……すみません」
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小さく言う。
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修一は首を振る。
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「違う」
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「お前の問題じゃねえ」
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一拍。
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「相手が強すぎる」
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沈黙。
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ノクスが低く言う。
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「このままここに居続けるのは危険だ」
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「次はもっと来る」
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セリナ
「……はい」
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誰もが分かっている。
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ここは、
もう安全ではない。
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修一は考える。
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そして。
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「……一旦、引く」
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その一言。
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セリナ
「……戻るんですね」
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修一
「ああ」
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「ヴァルディアに戻る」
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沈黙。
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「戦力を整える」
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「このままじゃ勝てない」
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カイゼルは静かにうなずく。
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「……強くなります」
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その目に迷いはない。
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修一は少しだけ笑う。
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「頼む」
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そして。
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「ただ――」
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一拍。
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「全部捨てるわけじゃねえ」
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セリナを見る。
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「医療は残す」
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セリナ
「……!」
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修一
「アスクレアをここに残す」
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アルゴ
「遠隔補助、可能」
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修一
「現地の人間に任せる」
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「誘導係と補助のやつらだ」
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セリナは強くうなずく。
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「……できます」
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「やります」
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修一
「頼んだ」
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一拍。
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「完全には止めさせねえ」
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短く。
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ノクスが小さく言う。
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「……ルーヴェンハイムのシステムも、揺らいでいる」
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「証拠は広がる」
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「しばらくは動きにくくなるはずだ」
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修一
「その隙に、力をつける」
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沈黙。
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全員の意識が、
揃う。
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「……行くぞ」
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短く。
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撤退。
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だが。
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逃げではない。
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次のための準備。
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戦いは、
まだ終わっていない。
読んでいただきありがとうございます!
今回はルーヴェンハイムからの撤退という形になりましたが、
決して終わりではなく、次に繋げるための重要な一歩になります。
医療を完全に止めるのではなく、
現地に託して残すという選択も、
この物語のテーマの一つになっています。
そして一行はヴァルディアへ戻り、
戦力を整えるフェーズに入ります。
ここからさらに物語が広がっていきますので、
引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです!
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