第2章 冴えないオッサン、魔法至上の世界へ 第40話 ヴァルターローレンの過去
第40話です。
今回はこれまで触れられてこなかった過去に、
少し踏み込む回になっています。
物語の中でも重要な部分に関わる話ですので、
ぜひ読んでいただけたら嬉しいです。
地下施設。
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人の流れは止まらない。
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誘導係
「次の方、こちらへ!」
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セリナ
「この人は重症です!」
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アスクレア
「処置開始」
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光。
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命が繋がれていく。
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だが。
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すべてが救えるわけではない。
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セリナ
「……この人は……」
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アスクレア
「回復不可」
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沈黙。
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付き添いの男が、
崩れる。
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「……頼む……」
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「助けてくれ……」
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セリナ
「……っ……」
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言葉が出ない。
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修一が静かに近づく。
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しゃがむ。
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「……すまない」
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短く。
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男は目を閉じる。
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「……分かってる……」
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そのとき。
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男の視線が、
カイゼルに止まる。
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じっと見る。
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沈黙。
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「……その目……」
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カイゼル
「……?」
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男はゆっくり言う。
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「……お前……」
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一拍。
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「ヴァルターの……娘か……?」
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空気が止まる。
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セリナ
「……え……?」
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カイゼルは否定しない。
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それだけで十分だった。
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男は苦く笑う。
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「……そうか……」
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「生きてたか……」
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少し目を伏せる。
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「……あいつ……」
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「娘とはうまくいってなかったからな……」
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空気が揺れる。
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カイゼルの指が震える。
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男はゆっくりと話し出す。
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「……俺はヴァルディアから来た」
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「ヴァルターローレン……」
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「俺の親友だった」
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セリナ
「……親友……」
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男
「昔のあいつはな……」
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「真っ直ぐで……誰よりも人を助けるやつだった」
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沈黙。
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「だが……」
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「奥さんが病気になった」
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空気が重くなる。
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「ヴァルディア様の光魔法も受けた」
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「何度もだ」
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一拍。
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「だが……治せなかった」
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沈黙。
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「そんな時だ」
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「大賢者ルーヴェンハイムの……」
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「リジェネカプセルの話を知った」
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セリナ
「……」
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男
「同じ光魔法でも……」
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「大賢者の力なら……治せるかもしれない」
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「そう考えたんだ」
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カイゼルの目が揺れる。
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「やっとの思いで手に入れた」
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「借金までしてな……」
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沈黙。
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「でも……」
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「同じ時期に、もう一人倒れた」
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「イリーナの父親だ」
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「上級魔道士だった」
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「街を守るためには……必要な存在だった」
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空気が張りつめる。
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「時間がなかった」
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「どちらか一人しか助けられない」
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沈黙。
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男の声が震える。
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「……あいつは……」
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「そっちを選んだ」
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空気が止まる。
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カイゼルの拳が震える。
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男
「奥さんは……そのまま……」
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言葉が消える。
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沈黙。
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男はゆっくり続ける。
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「……あいつは変わった」
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「自分を正当化して……」
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「何も間違ってないって言い聞かせてた」
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沈黙。
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「でもな……」
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「最後まで苦しんでた」
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静かな声。
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カイゼルの目が揺れる。
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男は小さく言う。
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「……あいつは弱かった」
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「でも……逃げなかった」
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一拍。
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「お前のことも……」
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言葉が止まる。
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「……ずっと気にしてた」
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沈黙。
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カイゼルの呼吸が乱れる。
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男は目を伏せる。
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「……不器用なやつだった」
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静かな涙。
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その場に、
重い空気が残る。
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アルゴ
「患者 到着」
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現実が戻る。
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修一
「……次だ」
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短く。
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セリナ
「……はい」
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再び動き出す。
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だが。
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カイゼルは、
動けない。
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その場に立ったまま。
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拳を握りしめ、
震えていた。
読んでいただきありがとうございます!
今回はヴァルターローレンの過去と、
その時に起きた選択について描かれました。
単純な善悪では語れない出来事として、
どう受け取るかは読者の皆さまそれぞれに委ねたい部分でもあります。
そしてカイゼルにとっては、
これまで知らなかった事実に触れる大きなきっかけになりました。
この先、彼女がどう受け止め、
どう動くのかも重要になっていきます。
引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです!
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