第2章 冴えないオッサン、魔法至上の世界へ 第27話 価値
第27話です。
ついにカイゼルとその父、
ヴァルター・ローレンが対峙します。
それぞれの考え方や過去がぶつかり合う、
物語の大きな山場となる回です。
ぜひ最後まで読んでいただけたら嬉しいです。
地下施設。
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薄暗い部屋。
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カイゼルは拘束されている。
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手首には、
魔法封印の手錠。
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魔力は使えない。
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だが、
その目は死んでいない。
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扉の影から、
修一たちが様子をうかがう。
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そのとき。
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「……侵入者がいると聞いたが」
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低い声。
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奥の闇から、
一人の男が現れる。
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整った身なり。
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無駄のない所作。
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冷たい視線。
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カイゼルの表情が変わる。
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「……父上」
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ヴァルター・ローレン。
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沈黙。
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父はゆっくりと歩み寄る。
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カイゼルの前で止まる。
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「……この騒ぎの原因は、お前か」
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静かな声。
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感情はない。
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カイゼルはまっすぐ見返す。
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「……ここで利用されている人たちを」
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一瞬、間を置く。
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「助けに来ました」
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父の目がわずかに細くなる。
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「無意味だ」
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一言。
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「その命に価値はない」
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空気が張り詰める。
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カイゼルの拳が震える。
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「……また、それですか」
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低く、抑えた声。
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「母のときも……そうでした」
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沈黙。
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父は表情を変えない。
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「……あれは正しい判断だ」
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短く、冷たく。
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「カプセルは一つだった」
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空気が止まる。
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「成功率、影響、価値」
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「すべてを考慮した結果だ」
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カイゼルの目が揺れる。
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「……イリーナの父に使った」
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父は否定しない。
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「上級魔道士だった」
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「都市にとって有益な存在だ」
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「救う価値があった」
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沈黙。
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カイゼルの声が震える。
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「……母も」
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「助けられたんです」
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一歩、前に出ようとして、
鎖が鳴る。
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「それでもあなたは――」
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「選んだ」
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空気が重く沈む。
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父は静かに言う。
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「当然だ」
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「すべては救えない」
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「ならば、選ぶしかない」
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「価値のある命を」
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その思想。
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その言葉。
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部屋の空気を支配する。
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そのとき。
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「……うるせえな」
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影から、
修一が出る。
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父の視線が向く。
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「……誰だ」
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修一
「通りすがりだ」
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「気に入らねえ話してるからだ」
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一歩、前に出る。
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「目の前で助けられるやつがいるのに」
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「見捨てる理由なんかねえだろ」
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父は静かに言う。
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「感情論だ」
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修一
「違うな」
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「現実だ」
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沈黙。
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父
「その結果、より多くが死ぬとしてもか」
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修一は迷わない。
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「だったら、そのとき考える」
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「今じゃねえ」
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空気がぶつかる。
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思想と思想が、
正面から衝突する。
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カイゼルは目を閉じる。
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そして、
ゆっくりと開く。
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迷いは消えている。
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「……私は」
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「もう、何もできないまま終わるのは嫌です」
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「見捨てません」
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その言葉は、
強く、
まっすぐだった。
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父はわずかに目を細める。
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「……変わったな」
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一瞬の沈黙。
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「いや」
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「弱くなったか」
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その瞬間。
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アルゴ
「戦闘可能性 上昇」
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ノクス
「……来るぞ」
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修一はカイゼルを見る。
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「今度は助ける」
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短く。
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カイゼルは小さくうなずく。
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次の瞬間。
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空気が裂ける。
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戦いが始まる。
読んでいただきありがとうございます!
今回はカイゼルと父の対立、
そしてその過去に踏み込む回となりました。
「誰を救うのか」という問いに対して、
それぞれが違う答えを持っていることが、
はっきりと描かれたと思います。
修一の考え方も含めて、
この物語のテーマが見えてきたのではないでしょうか。
次はいよいよ戦闘と救出に入っていきます。
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