第2章 冴えないオッサン、魔法至上の世界へ 第26話 潜入
第26話です。
いよいよルーヴェンハイムへの再侵入となります。
時間も限られる中で、
慎重に、そして確実に進んでいきます。
少しずつ核心へ近づいていく回になりますので、
ぜひ楽しんでいただけたら嬉しいです。
夜。
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ルーヴェンハイム外縁。
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高い城壁の影に、
四人は身を潜めていた。
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誰も大きな声は出さない。
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空気そのものが、
張り詰めている。
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そのとき。
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セリナが小さくつぶやく。
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「……あれ」
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修一が視線を向ける。
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城壁沿いの裏手。
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灯りが動いている。
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担架。
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運ばれている人影。
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そして、その横には――
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小さな透明の容器。
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淡く光っている。
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アルゴ
「リジェネ・カプセル 確認」
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沈黙。
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セリナの顔が強張る。
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「……まだ、続いてるんですか」
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修一は目を細めたまま、
その光景を見ていた。
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人が運ばれ、
物のように扱われる。
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救いのためのはずの医療が、
別の何かになっている。
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修一は小さく言う。
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「止める」
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短い言葉だった。
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だが、
その声に迷いはない。
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ノクスが低く言う。
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「……時間はない」
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アルゴ
「残り約1時間」
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空気がさらに張り詰める。
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セリナ
「……間に合いますか」
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修一は軽く笑う。
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「間に合わせる」
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その言葉に、
セリナも小さくうなずいた。
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修一は全員を見る。
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「取り返す」
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一言。
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それで十分だった。
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「行くぞ」
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セリナ
「……はい」
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ルーヴェンハイムの外縁。
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少し離れた地面に移動する。
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修一
「前に見つけた地下施設」
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「そこに繋げる」
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セリナはうなずく。
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「……やります」
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地面に手を当てる。
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「土魔法――展開」
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静かに。
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音を抑えながら、
地面が沈んでいく。
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細い通路ができる。
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アルゴ
「振動抑制 良好」
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ノクス
「……急げ」
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順に潜る。
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暗い地下。
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冷たい空気。
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土の匂い。
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修一
「アルゴ」
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アルゴ
「侵入ルート 表示」
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地面に薄く立体図が浮かぶ。
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推定構造。
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通路の先に、
前回見つけた施設の一部。
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修一
「このルートで行く」
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セリナ
「……はい」
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進む。
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足音を殺しながら。
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しばらくして、
壁に突き当たる。
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アルゴ
「内部空間 確認」
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修一
「開けるぞ」
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セリナが壁に触れる。
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「土魔法――展開」
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壁が静かに崩れる。
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その先。
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石造りの通路。
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人工的な空間。
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カイゼル
「……これは」
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修一
「やっぱり繋がってたな」
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進む。
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床には紋様。
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壁には薄い光。
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アルゴ
「魔法陣 検出」
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ノクス
「……監視系ではない」
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修一
「助かる」
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さらに進む。
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分岐。
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アルゴ
「左 推奨」
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「右 危険反応」
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修一
「左だ」
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慎重に進む。
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そのとき。
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修一が手を上げる。
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「……待て」
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全員が止まる。
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床。
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わずかな違和感。
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アルゴ
「圧力感知 検出」
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セリナ
「……罠です」
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修一
「やっぱりな」
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慎重に避ける。
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さらに奥へ。
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空気が少しずつ変わる。
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冷たさの中に、
別の圧が混ざる。
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アルゴ
「魔力反応 増大」
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修一
「近いな」
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足音をさらに抑える。
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静かに。
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部屋の手前で止まる。
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扉が少し開いている。
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中を覗く。
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セリナが息をのむ。
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「……あっ」
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修一も視線を向ける。
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そこには。
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椅子に拘束された人影。
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鎖。
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そして、
手首に光る手錠。
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アルゴ
「魔力遮断装置 確認」
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修一
「……魔法封印の手錠か」
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セリナ
「魔法が……使えない」
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沈黙。
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その中に。
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見慣れた姿。
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カイゼル。
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「……っ」
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セリナが声を押し殺す。
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カイゼルはゆっくり顔を上げる。
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そして、
気づく。
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一瞬だけ、
目が見開く。
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だがすぐに、
小さく首を振る。
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(来るな)
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声には出さない。
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だが、
それだけで伝わる。
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修一は静かに言う。
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「……見つけた」
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その瞬間。
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背後で、
気配が動く。
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アルゴ
「接近反応」
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修一
「来たか」
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扉の向こうに、
影が伸びる。
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静かに。
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だが確実に。
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何者かが近づいてくる。
読んでいただきありがとうございます!
今回は潜入からカイゼル発見までの流れとなりました。
罠や監視の中を進みながら、
徐々に緊張感が高まっていく展開になっています。
そして、ついにカイゼルの姿を捉えることができました。
ただし、ここからが本番です。
次は大きな山場になりますので、
ぜひ続きも楽しんでいただけたら嬉しいです!




