第2章 冴えないオッサン、魔法至上の世界へ 第21話 見てはいけないもの
第21話です。
ルーヴェンハイムの裏側に足を踏み入れ、
これまで避けてきた“選択”と向き合う回になります。
小さな出来事ですが、
大きな意味を持つ場面でもあります。
ぜひ楽しんでいただけたら嬉しいです。
夜。
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ルーヴェンハイムの裏通り。
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表とは違い、
人通りが少ない。
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「……こっちの方が、情報はありそうだな」
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修一が言う。
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カイゼル
「表は管理が強すぎます」
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アルゴ
「監視密度 低下」
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セリナは少し緊張している。
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「……でも」
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「少し怖いです」
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修一
「そういう場所ほど本音が出る」
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歩く。
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静かな路地。
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そのとき。
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「……っ、誰か……」
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小さな声。
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全員が止まる。
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路地の奥。
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倒れている男。
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苦しそうに呼吸している。
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セリナが駆け寄る。
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「……怪我が」
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腕から血が流れている。
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修一
「どうだ」
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セリナ
「このままだと危険です」
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沈黙。
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アルゴ
「治療推奨」
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カイゼルが低く言う。
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「……ここでは」
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修一
「分かってる」
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「違反だろ」
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セリナは男を見る。
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迷い。
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だが。
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「……助けます」
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修一は少し笑う。
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「だろうな」
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セリナは処置を始める。
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布で圧迫。
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アルゴ
「動脈位置 ここ」
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処置が進む。
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静かに。
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だが。
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アルゴ
「接近反応」
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修一
「来たか」
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足音。
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複数。
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カイゼル
「……兵士です」
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セリナの手が止まりかける。
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修一
「止めるな」
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「続けろ」
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セリナ
「……はい」
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足音が近づく。
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「何をしている」
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兵士。
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空気が張り詰める。
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修一が前に出る。
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「見れば分かるだろ」
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兵士
「無許可の医療行為は禁止されている」
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修一
「知ってる」
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兵士
「ならば――」
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そのとき。
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セリナ
「……終わりました」
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男の呼吸が落ち着く。
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沈黙。
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兵士の視線が鋭くなる。
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「……紋章を確認する」
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空気が凍る。
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カイゼルが一歩出る。
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修一
「待て」
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その瞬間。
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「……時間だ」
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ノクスの声。
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気づけば、
兵士のすぐ後ろ。
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「闇魔法――無効化」
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空気がわずかに歪む。
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兵士の動きが止まる。
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ほんの一瞬。
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ノクスが低く言う。
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「……動きだけ、止めた」
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修一
「十分だ」
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「走るぞ」
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セリナ
「はい!」
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カイゼル
「こちらです!」
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路地を抜ける。
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足音。
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追ってくる。
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アルゴ
「追跡あり」
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修一
「分かってる」
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曲がる。
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さらに奥へ。
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やがて。
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静寂。
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止まる。
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全員が息を整える。
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セリナ
「……大丈夫でしょうか」
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修一
「分からん」
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アルゴ
「リスク 増大」
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カイゼルは静かに言う。
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「……見つかるのは時間の問題かもしれません」
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沈黙。
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修一は小さく笑う。
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「いいじゃねえか」
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カイゼル
「……え?」
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修一
「面白くなってきた」
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セリナは少しだけ笑う。
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「……はい」
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だが。
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この都市は、
まだ本気を出していない。
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ルーヴェンハイム。
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その“管理”は、
こんなものではなかった。
読んでいただきありがとうございます!
今回は無許可の医療という形で、
ルーヴェンハイムのルールと正面からぶつかる展開になりました。
セリナの決断、
そして修一の迷いのなさが、
この物語の軸をよりはっきりと見せてくれたと思います。
また、ノクスの能力も少しずつ見えてきました。
派手ではないですが、
状況を大きく動かす力を持っています。
この出来事によって、
彼らの状況はさらに厳しくなっていきます。
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