第2章 冴えないオッサン、魔法至上の世界へ 第12話 最初の患者
第12話です。
新しい拠点での最初の一歩。
これまでの流れが、実際の行動として形になる回になります。
少し緊張感のある展開ですが、
見届けていただけたら嬉しいです。
ヴァルディア外縁。
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小さな集落。
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都市の光から少し離れた場所。
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人はいるが、
誰も深く関わらない場所。
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「……ここだな」
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修一が辺りを見渡す。
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カイゼル
「はい。この辺りなら目立ちません」
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アルベルト
「管理も緩い」
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「だが、その分、何があっても気づかれにくい」
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修一
「都合いいな」
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セリナが前に出る。
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「……始めます」
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地面に手を当てる。
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「土魔法――展開」
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空気が震える。
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地面がゆっくりと沈み、
形を変えていく。
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空洞が広がる。
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壁が整い、
天井が支えられる。
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セリナの呼吸が荒くなる。
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「……もう少し……」
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最後に、床を固める。
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「……できました」
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そこには、
簡素だが確かな空間があった。
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修一
「十分だな」
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アルゴ
「構造安定 問題なし」
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アルベルトは腕を組む。
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「……本当にやるのか」
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修一
「今さらだろ」
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沈黙。
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そのまま、時間が過ぎる。
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誰も来ない。
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エリシア
「……来ますかね」
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修一は壁にもたれる。
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「来るさ」
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カイゼル
「……本当に広まっているのでしょうか」
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修一
「さあな」
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静かな時間。
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セリナは手を見ていた。
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少しだけ震えている。
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「……もし」
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小さな声。
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「失敗したら」
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誰もすぐには答えない。
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修一が言う。
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「その時は俺が責任取る」
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セリナは顔を上げる。
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修一は軽く続ける。
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「だからやれ」
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短い言葉。
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セリナはゆっくりうなずく。
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そのとき。
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足音。
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全員が顔を上げる。
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入口の方。
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「……ここか?」
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一人の男と、
それを支える別の男。
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「治せるって……聞いて……」
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修一は小さく息を吐く。
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「来たな」
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カイゼル
「紹介……でしょうか」
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修一
「だろうな」
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セリナが一歩前に出る。
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「こちらへ」
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男を地下へ案内する。
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まだ何もない空間。
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だが、
それでも“場所”だった。
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男を座らせる。
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足を見る。
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傷が腫れ、
少し膿んでいる。
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セリナの手が止まる。
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「……」
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呼吸が浅くなる。
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修一
「アルゴ」
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アルゴ
「処置手順を提示」
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修一が言葉にする。
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「まず洗う」
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セリナが動く。
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水で傷を洗う。
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男が顔をしかめる。
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「……っ」
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「大丈夫です」
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セリナの声は少し震えている。
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「次は?」
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修一
「炎症抑える薬草」
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アルゴ
「候補提示」
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セリナはそれを手に取る。
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一瞬、手が止まる。
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「……」
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修一
「やれ」
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セリナはうなずく。
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薬草を処置する。
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男の呼吸が乱れる。
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だが――
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少しずつ、
落ち着いていく。
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「……痛みが……」
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セリナは目を見開く。
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「引いています……」
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修一
「成功だな」
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セリナはその場で固まる。
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そして、小さく言う。
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「……できた」
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その声は、
震えていた。
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エリシアがそばで見ている。
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「……すごい」
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セリナは首を振る。
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「違います」
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「教えてもらっただけです」
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修一は軽く笑う。
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「それでいい」
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アルゴ
「再現成功」
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空気が変わる。
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そこには、
確かな実感があった。
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“救えた”という事実。
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修一は周囲を見る。
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「これを増やす」
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静かに言う。
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「ここからな」
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誰も反対しない。
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エリシアが小さくつぶやく。
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「……増えますよね」
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修一はうなずく。
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「増える」
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地下の空間。
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まだ小さな場所。
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だが――
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そこには確かに、
最初の一歩が刻まれていた。
読んでいただきありがとうございます!
ついに“最初の患者”を救うことができました。
小さな出来事ですが、ここからすべてが始まります。
セリナの決意と行動が、
これからの流れを大きく変えていくはずです。
まだ始まったばかりですが、
この場所がどのように広がっていくのか、
ぜひ見守っていただけたら嬉しいです。
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