第2章 冴えないオッサン、魔法至上の世界へ 第8話 救える命
第8話です。
今回は少し緊張感のある展開になります。
これまでとは違う形で、主人公の力が描かれる回です。
どのように物事が動いていくのか、
見ていただけたら嬉しいです。
昼下がり。
ヴァルディアの通りは、いつも通り賑わっていた。
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エリシアはアルゴの横を歩く。
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「それで?」
「どうやって動いてるの?」
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アルゴ
「エネルギー供給:太陽光および代替燃料」
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「……難しい」
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修一
「だろうな」
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少し後ろからついていく。
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そのときだった。
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「うああああっ!!」
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悲鳴。
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一瞬で空気が変わる。
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振り向く。
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男が倒れていた。
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足を押さえている。
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地面に広がる血。
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「……おい、やばいな」
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修一はすぐに駆け寄る。
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「大丈夫か!」
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男は苦しそうに顔を歪める。
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「足が……!」
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見る。
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太ももが深く切れている。
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近くには砕けた魔道具の破片。
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「……切創か」
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周囲の人間がざわつく。
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「血が止まらない……!」
「どうするんだ……!」
「誰か何とかしろ!」
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だが――
誰も動かない。
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修一は即座に判断する。
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「アルゴ」
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「止血」
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アルゴ
「圧迫止血を推奨」
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修一は布を取り出す。
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「押さえるぞ、我慢しろ」
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「ぐっ……!」
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強く圧迫する。
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血がにじむ。
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「そのまま呼吸しろ、意識飛ばすな」
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アルゴ
「出血量:中程度 致命傷ではありません」
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修一は周囲を見回す。
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「薬屋はどこだ!」
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一人が慌てて指をさす。
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「通りの先!」
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修一
「カイゼル、押さえててくれ!」
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カイゼル
「はい!」
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修一は走る。
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店に飛び込む。
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「傷に使える薬草あるか!」
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店主が驚く。
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「え、ああ……これとか……」
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並ぶ薬草。
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修一は即座に言う。
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「アルゴ」
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「止血・消毒に使えるやつ」
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アルゴ
「候補を提示します」
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いくつかの薬草。
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修一は一つを掴む。
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「これだ」
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すぐに戻る。
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「離すなよ!」
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カイゼル
「はい!」
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修一は薬草を潰す。
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「しみるぞ」
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傷に当てる。
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「ぐああああ!!」
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だが――
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血の流れが弱まる。
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周囲がざわつく。
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「止まってきてる……」
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「なんだあれ……」
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修一は布で固定する。
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「よし……」
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男の呼吸が落ち着いていく。
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「……助かった」
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修一
「まだ終わりじゃない。安静にしろ」
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一息つく。
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周囲の視線が変わっていた。
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「魔法じゃない……」
「どうやったんだ……」
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カイゼルが呟く。
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「……すごいです」
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修一
「知識があれば誰でもできる」
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エリシアが近づく。
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じっと見ている。
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「……魔法じゃないのに」
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修一
「違うな」
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「でも助かる」
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エリシアは黙る。
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そして、小さく言う。
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「……誰でも?」
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修一
「やり方知ってればな」
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少しの沈黙。
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エリシアはゆっくりと口を開く。
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「……助かるんだ」
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その声は、どこか震えていた。
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修一は軽く笑う。
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「当たり前だろ」
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エリシアは、もうアルゴではなく修一を見ていた。
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その目は、
これまでとは違っていた。
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空は青く、
街は変わらず賑わっている。
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だが――
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この瞬間、
何かが確かに変わった。
読んでいただきありがとうございます!
魔法ではなく、知識によって救われた命。
この出来事は小さなものですが、
この世界にとっては大きな意味を持っています。
そして、エリシアの中にも
少しずつ変化が生まれてきました。
ここから先、価値観や常識が少しずつ揺らいでいきます。
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