第2章 冴えないオッサン、魔法至上の世界へ 第7話 消えた相棒
第7話です。
今回は少し日常寄りのエピソードになります。
軽い事件を通して、キャラクター同士の関係が少しずつ変わっていきます。
気軽に読んでいただけたら嬉しいです。
朝。
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静かな光が差し込む。
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修一はゆっくり目を覚ます。
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「……ん」
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視線を横に向ける。
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いつもいるはずの場所。
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「……あれ?」
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アルゴがいない。
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「アルゴ?」
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返事はない。
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起き上がる。
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「おい、アルゴ」
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沈黙。
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修一は眉をひそめる。
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「……どこ行った」
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食堂へ向かう。
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カイゼルとセリナがいた。
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「おはようございます」
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修一
「おはよう……なあ、アルゴ見てないか?」
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カイゼル
「アルゴ……ですか?」
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セリナも首をかしげる。
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「見ていませんね」
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空気が少し変わる。
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修一
「……まさか」
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そこへアルベルトが来る。
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「どうした」
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カイゼル
「アルゴがいないんです」
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アルベルトの目が鋭くなる。
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「盗難の可能性は?」
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修一
「……ありえるな」
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アルベルト
「この都市でも、魔道具の窃盗はある」
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修一
「まあ、珍しいからな」
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空気が一気に張り詰める。
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「探すぞ」
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ヴァルディアの中を歩く。
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通り。
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店。
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裏路地。
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修一は周囲を見ながら歩く。
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「そんな遠く行くやつじゃない」
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カイゼル
「自分で動くんですか?」
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修一
「まあな」
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アルベルト
「厄介だな」
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しばらく探す。
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だが――
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見つからない。
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セリナ
「家の中は確認しましたか?」
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修一
「いや……」
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アルベルト
「もう一度戻るぞ」
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家へ戻る。
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静かな廊下。
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ふと、
一つの扉の前で止まる。
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エリシアの部屋。
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「……まさか」
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ノックする。
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反応なし。
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アルベルト
「入るぞ」
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扉を開ける。
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そこには――
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ベッド。
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そして。
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アルゴ。
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そして。
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それを抱いて眠るエリシア。
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沈黙。
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修一
「……おい」
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アルゴ
「待機状態」
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エリシアが少し動く。
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「……ん」
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目を開ける。
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「……あ」
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一瞬、固まる。
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アルベルト
「エリシア……?」
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エリシアはアルゴをぎゅっと抱く。
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「……これは」
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少しだけ間。
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「私の」
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修一
「違うだろ」
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エリシアは目をそらす。
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「……借りただけ」
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修一
「黙って持ってくのは借りたって言わない」
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少し沈黙。
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エリシアはアルゴを見つめる。
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「……面白いから」
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小さな声。
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「……もっと知りたかった」
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その言葉に、
カイゼルが少しだけ目を見開く。
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修一はため息をつく。
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「言えば貸したぞ」
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エリシアは顔を上げる。
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「……本当?」
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修一
「壊さないならな」
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少し間。
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エリシアはゆっくりとうなずく。
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「……ごめんなさい」
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小さな謝罪。
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アルベルトは腕を組む。
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「まったく……」
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だが、
怒る様子はない。
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エリシアはアルゴを見て、
そして修一を見る。
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少しだけ、
ためらう。
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「……ありがとう」
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初めての言葉。
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修一は軽く笑う。
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「どういたしまして」
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エリシアはまたアルゴを見る。
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今度は、
少しだけ優しい目だった。
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修一はそれを見て、
何も言わない。
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ただ。
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「……まあ、いいか」
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小さくつぶやく。
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朝の光が、
部屋に差し込む。
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少しだけ、
何かが変わっていた。
読んでいただきありがとうございます!
アルゴをめぐるちょっとした騒動でしたが、
エリシアの変化が少し見えてきた回でもあります。
最初は距離のあった関係が、
ほんの少し近づいた――そんな小さな一歩です。
ここからさらに、それぞれの関係や価値観が動いていきます。
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