第2章 冴えないオッサン、魔法至上の世界へ 第6話 帰る場所
第6話です。
ヴァルディアでの生活が少しずつ見えてきます。
今回は会話が中心の、静かな回となっています。
この世界の仕組みや背景を感じていただけたら嬉しいです。
アルベルトの家は、
ヴァルディアの中でも静かな区画にあった。
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派手さはない。
だが、
整えられた庭と建物には品がある。
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「ここだ」
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修一
「落ち着くな、いい家だ」
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アルベルト
「普通だ」
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扉が開く。
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「おかえりなさい」
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現れたのは、一人の女性。
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柔らかい表情。
落ち着いた立ち振る舞い。
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「妻のセリナだ」
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セリナは軽く頭を下げる。
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「はじめまして」
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修一
「どうも」
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一瞬だけ、
セリナの視線が修一に止まる。
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観察するような目。
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だがすぐに微笑む。
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「どうぞ、中へ」
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食卓につく。
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エリシアも座る。
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「いただきます」
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静かな時間。
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食器の音だけが響く。
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修一が口を開く。
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「この街、やっぱすごいな」
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アルベルト
「当然だ」
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「賢者が治めている都市だからな」
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修一
「そんなに違うもんか?」
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セリナが答える。
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「この都市の結界は、賢者様が維持しています」
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修一
「……あの見えない壁か」
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カイゼル
「はい」
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「賢者以上でなければ張れません」
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修一は少し考える。
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「ってことは」
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「いなくなったら終わりか?」
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空気が、わずかに変わる。
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アルベルト
「……その通りだ」
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短い言葉。
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「結界が消えれば、この都市は守れない」
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セリナが続ける。
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「光魔法も同じです」
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修一
「光魔法?」
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カイゼル
「回復や高速化の魔法です」
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セリナ
「ですが特別な魔法で……」
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「代替わりのときにしか継承されません」
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修一
「引き継ぎ制か」
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アルベルト
「途絶えれば終わりだ」
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修一は小さく笑う。
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「……不安定だな」
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アルベルトの目が細くなる。
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「それがこの世界だ」
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少しの沈黙。
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セリナが話題を変えるように言う。
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「上級魔道士の存在も重要です」
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修一
「どれくらいいる?」
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カイゼル
「ノースガルド全体で、約500人です」
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修一
「少な」
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アルベルト
「この都市には、かつて5人いた」
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「今は3人」
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「……実質2人だ」
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修一
「足りてないな」
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アルベルト
「わかっている」
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少しだけ、苛立ちが混じる。
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カイゼル
「そのため、イーストリアからのスカウトも行われています」
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修一
「東の大陸か」
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アルベルト
「だが簡単ではない」
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「向こうも余裕はない」
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セリナ
「魔力の強い者同士の婚姻も推奨されています」
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修一
「完全に血統主義だな」
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アルベルト
「否定はしない」
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静かな現実。
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修一がふと聞く。
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「そういえば、船を見た」
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カイゼル
「魔道船ですね」
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アルベルト
「イーストリアへ向かうためのものだ」
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「上級魔道士が直接動く」
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修一
「大変だな」
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そのとき。
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セリナが静かに言う。
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「医療も、問題になっています」
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修一
「回復魔法があるだろ?」
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セリナは首を振る。
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「賢者以上でなければ使えません」
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修一
「……そうなのか」
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アルベルト
「簡単に頼れるものではない」
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カイゼル
「致命傷の場合は、賢者に頼るしかありません」
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修一
「一般の人は?」
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少しの沈黙。
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セリナ
「……自然回復か、薬草です」
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修一
「それだけか」
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アルベルト
「それが現実だ」
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修一は少し黙る。
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「……非効率だな」
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アルベルト
「またそれか」
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修一
「助かる命、結構あるだろ」
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セリナが静かに言う。
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「……そうですね」
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初めての同意。
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修一はそれ以上言わない。
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だが。
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その目には、
何かが宿っていた。
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カイゼルが静かに口を開く。
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「……私は」
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「グランウェストへ向かっていました」
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空気が変わる。
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「調査のために」
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「ですが、嵐に巻き込まれて……」
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言葉が止まる。
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「仲間は」
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沈黙。
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「……亡くなりました」
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重い空気。
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修一は何も言わずに聞く。
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やがて。
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「それで」
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カイゼルは修一を見る。
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「修一と出会いました」
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短く、まとめる。
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アルベルトは目を閉じる。
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「……そうか」
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それだけだった。
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少しの沈黙。
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修一が口を開く。
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「なんで探索に出た?」
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カイゼルが少し驚く。
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アルベルトは答えない。
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「……それは」
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言いかけて、止まる。
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「簡単な話じゃない」
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修一
「だろうな」
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それ以上は聞かない。
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アルゴ
「空気 重い」
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修一
「言うな」
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少しだけ、
空気が緩む。
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夜は静かに更けていく。
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それぞれが、
この世界の“現実”を抱えながら。
読んでいただきありがとうございます!
魔法によって支えられているこの世界。
その仕組みや現実が、少しずつ見えてきました。
そしてカイゼルの過去や、
それぞれが抱えているものも描かれています。
まだ表には出ていませんが、
ここから先に繋がる大事な要素がいくつかあります。
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ぜひ続きも読んでいただけたら嬉しいです!




