昨日の私を止めたい今日
ページを開いていただきありがとうございます。
日常に転がっている楽しかったこと、後悔したこと、面白かったこと。
ここではそんな日々のちょっと考えすぎてしまうヒナの日常をお届けします。
よかったらゆっくりしていってくださいね。
風呂から上がり、寝るまで少し時間があったので私はぼんやりとスマホで動画を見ていた。
夜も更け、ただいま22時38分。
夕飯を食べてから2時間ほど経過している。
お腹が空いているわけではないが、食後2時間が経つと少し小腹が空いてくる。
スマホで流している動画はスイーツの大食い。
次々に口へ吸い込まれているスイーツを見て甘いものがどうしても食べたくなってくる。
いやいや、この時間に甘いものを食べるなんて…
と、考えつつふと冷蔵庫にアイスが残っていたのを思い出し、冷凍庫の方へ視線をやる。
画面の向こう側で美味しそうにスイーツを頬張る姿に我慢できず、私は冷凍庫の扉を開けると冷気が足元を通り抜ける。
アイスが入っている引き出しを開け、アイスを一つ手に取りスプーンを持ってリビングへ戻る。
寝る前に甘いものを食べることに少し罪悪感を覚えながらも、誘惑に負け冷凍庫から取り出したバニラアイスの蓋を開け、スプーンですくって口に運ぶ。
口の中に広がるミルクとバニラの柔らかい甘さと香りが甘いものを食べたい欲を満たしていく。
小腹と同時に心まで満たされるような感覚に自然と笑みがこぼれる。
二口、三口と手を止められずに食べ進めていると、脱衣所の扉がガラッと開き同棲している彼氏が風呂から上がってきた。
「あー、さっぱりしたー。…て、あれ?アイス食べてるの?」
リビングに来るなり私を見て聞いてくる。
彼氏は私の隣に座り、冷蔵庫から取り出した水を喉を鳴らしながら飲み干す。
「ちょっと、小腹がすいちゃって…」
私が少しバツが悪そうに言うと、彼氏は笑いながら「俺も食べよー♪」と冷凍庫へ向かう。
冷凍庫からアイスを一つ持ってリビングへ戻ってきた彼氏は包装を破って、アイスに齧りついている。
「うっま。やっぱ風呂上がりのアイスは最高だわ。…そういえば、ヒナは今食べて平気なの?」
唐突に問われて思考が停止した。
寝る前に食べて大丈夫かって質問だろうか。
誘惑に勝てなかったとこも合ってちょっと罪悪感が出てくるが、別に食べたって問題ないと思うが。
「いいの、今日はどうしても食べたかっただけだから!」
「ふーん。でも、明日は健康診断って言ってなかったっけ?」
少しムッとして返した言葉に対する返答に私の動きがピタッと止まった。
冷やりと冷たい汗が背中をつたう。
ーーそうだ、すっかり忘れていたーー
明日は健康診断だということを。
口の中に広がる柔らかい甘さが、やってしまった…と、後悔の味に変わる。
食べ進めたアイスはすでに半分ほどなくなっており、スプーンをもった右手が止まる。
彼氏は固まる私の隣で「あ、忘れてた?w」と笑いながらアイスを齧っているが、私の頭の中はそれどころじゃない。
普段から特に節制しているわけではないが、健康診断前日の夜中に甘いものを食べるなんて大丈夫なんだろうか。
いや、確かに明日は健康診断だが、アイス一つで何が変わるというのか。
健康診断は午後からだしもうすでに半分は食べてしまったのだから全部食べても良いのでは…?と、私の中の悪魔が囁く。
この半分のせいで結果が変わる可能性があるのであればやめたほうが良いのだろうか。
ぐるぐると思考を巡らせているうちに彼氏はアイスを食べ終わったようだ。
なんの心配もなく食べられる彼氏を恨めしく思いなが、半分残ったアイスを見つめる。
そうだ、別に前日に食べようが食べまいが結果は同じこと(たぶん)
だから、食べても大丈夫!
…と、どうやら誘惑に負けてしまったようで、きれいに完食したアイスのカップがテーブルに置かれる。
食べてしまったものは仕方ないと開き直り、私は歯を磨きベッドへ向かう。
きっと、きっと大丈夫。
大したことない。
と、言い聞かせて眠りに落ちていった。
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目が覚めると時刻は8時48分。
昨日、アイスを食べてしまった罪悪感なんて忘れて清々しい朝に気分が良くなる。
朝ごはんを食べることはできないが、いい朝である。
隣で寝ている彼を起こさないようにベッドから這い出て、身支度を整える。
近くの病院で受けるなら良いのだが、いかんせん会社でまとめて予約された病院のため電車で1時間ほどかかる。
いくら午後からの受診で時間があるとはいえばそこまでのんびりもできないのだ。
顔を洗って化粧をして着替えると意外と時間が経っていることに気がつく。
11時56分。そろそろ駅に向かわないと予約時間に遅れてしまう。
まだ、起きてこない彼氏を放置して玄関へ向かい、靴を履く。
昨日のアイスのことなんて忘れて少し重い扉を開けると小春日和の暖かい風が全身を吹き抜けて爽やかな気分になる。
太陽の暖かさと風が気持ちよくて気分があがり、小走りしながら駅へと向かった。
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病院には予約時間より20分ほど早く到着してしまったが、流石にカフェに入るわけにはいかないのでまっすぐ病院へ向かう。
現在、13時6分。
ちょうど昼食を終えたサラリーマンやこれから休憩時間に入る人達で、街は人でごった返している。
普段はお弁当を持って仕事へ行く私はなかなかお昼に外に出ることがないので、ちょっとドキドキしながもワクワクもしていた。
どこからともなく漂ってくるスパイスの香りや出汁の香りが、朝から何も食べていない胃を刺激する。
普段ならとっくに食事を済ませている時間のため、空腹でお腹を鳴らしながら泣く泣く通り過ぎていく。
…終わったら絶対美味しいもの食べるんだ……!、と心に決めて病院のあるビルのエレベーターを待っていた。
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「番号札5番の葉山様ー、2番の窓口へどうぞー」
ぼんやりと待合室で待っていると、自分の名前が呼ばれ窓口へ向かう。
お腹が空きすぎて眠気まで出てきたが、もう少しの辛抱だ。
健康診断を受けるに当たっての説明や着替えについて、さらっと話を聞いて記入表を持って更衣室へ入る。
毎度思うがこの院内着がキツかったらどうしようと不安になる。
念の為、大きめのサイズを選んで割り振られたロッカーの扉を開けて着替え始める。
ズボンのウエスト部分を少し手で伸ばしてみると結構伸びるようで、履いてみても不安だったったウエストや太もも部分に余裕があり安心する。
学生の頃や20代前半の頃は下着まで脱いで着替えることに少し抵抗があったが、もうすぐ30歳になる私には恥ずかしさよりも健康かどうかに重点をおいているのでなんの躊躇もなく下着を脱ぎ院内着に着替える。
バイダーに挟まれた記入表とスマホを手に持ち検査ブースに繋がる引き戸を開ける。
2,3人の看護師が出口付近で受診者を待っており、私もバインダーを渡す。
「1532番の方ですね。お名前等に間違えがないかご確認いただき、1番のお部屋にお入りください。まずは身長、体重、視力、血圧を測りますね。」
私は促されるまま診察室へ入り、計測がサクサクと進んでいく。
身長、体重を測り終え、腹囲のサイズを測っているときに看護師が怪訝そうな顔で「ちょっと失礼しますね。」と何度も測り直してはパソコンの画面を睨んている。
何があったのかと不安になり、されるがままになっていると「去年と体重はほとんど変わってないのですが、腹囲が増えていますね。」と、言いづらそうに言ってきた。
私はふと昨日のアイスのことを思い出しながら、ちょっと太ったかなと笑っていたが内心ガックリきていた。
看護師がすかさず、「測る場所とか呼吸の仕方でも変わりますし、去年の人の測る場所が違ったのかもしれないですね。ただ今年はこの数値で記録しますね!」とフォローしてくれたのが余計に刺さる。
ただ付け加えるように「少し浮腫んではいますけど、基準値内なのでそこまで心配しなくても大丈夫ですよ」と言われた。
浮腫については心当たりしかないので、私も苦笑いしか出ない。
その後も流れるように検査は進んていき、想像よりも早く検査が終わり更衣室へ向かう途中で「1532番の方ですか…?少々お時間よろしいでしょうか。」と、最初の診察室へ入るように促され入室した。
私は検査結果に何か問題があったのかと思ったが、どうやらあまりにも腹囲のサイズを増えていたので念の為別の人が測り直すように言われたんだとか。
最初より年齢が上のベテランそうな看護師が「念の為ですよ。」と笑いながら測っているが、私としては恥ずかしさやら申し訳ないやらで苦笑いしか出ない。
しばらく測っていたが、どうやら数値には差が出なかったので今回はこの数値で記録することになった。
確かに昨日のアイスが大幅に健康的なダメージを与えたわけではない。
ただ、昨日の私が作った今日の私の身体は嘘をつけなかったのだ。
着替えを済ませて家路につき、何度となく決意したことを今日も決意する。
もう夜中に間食なんてしない。
………たぶん。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
初めて書き上げた作品なので、拙いところも多々あったかと思いますが、ここでまたお会いできたことに感謝しかないです!
未熟ながら細々と続けたいと思うので、またお会いした際はよろしくお願いします。




