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からくり競艇外伝(日常編)

『ポンコツたちの晩餐 ―脂と煙と、うどんの矜持―』

掲載日:2026/02/04

「おらぁ! 今日は無礼講だ! 飲め飲め、西野さんの奢りだ(経費で落とす)!」

西野貴志の威勢のいい声と共に、ジョッキがぶつかり合う。テーブルの上には、山盛りの豚バラ串と、福岡名物の鶏皮が並んでいる。

「西野さん、奢りとか言って、結局また負けたレースの反省会にするんでしょ?」

渡辺優子が、すでに赤くなった顔で串を頬張る。

「優子、あんたの今日の1マークのダンプ、ありゃあ『殺人未遂』よ。でも、あれのおかげでウチが展開拾えたわ、サンキュー!」

武田静香が、精密な旋回技術を語る時とは別人のような、気の抜けた笑顔でビールを煽る。

そんな騒乱の真ん中で、一人、静かに**「マイ割り箸」**を取り出した男がいた。森田勝司である。

「……西野、その鶏皮も悪くないが、やはり最後は『麺』で締めんといかんだろう」

森田の前に置かれたのは、彼が店に無理を言って持ち込んだ、香川から取り寄せた生うどん。

「出たよ、森田さんのうどん談義!」

西野が呆れたように笑う。

「いいか、西野。スタートと一緒だ。うどんも『コシ』がコンマ01秒でもズレれば、それはただの小麦粉の塊だ。このエッジ、この艶……お前の爆炎属性で茹でたら、表面が溶けてしまうわ」

「森田さん、それ絶対うどん馬鹿にしてるでしょ! 山口のあかりちゃん(野田あかり)に『おじさんたちの飲み会、マジ加齢臭する』ってSNSに書かれてましたよ!」

渡辺優子がスマホを見せると、森田は一瞬だけ表情を崩した。

「……あかりか。あいつは誠の弟子だからな。機体もネイルも派手だが、中身はしっかりしてる。だが、あいつにうどんの良さを教えるには、あと10年は早い」

「硬いこと言うなよ、勝司! ほら、静香も優子も、明日からまた地獄のペラ叩きだぞ。今日はこのポンコツな頭、アルコールで洗浄しちまおうぜ!」

西野が再びジョッキを掲げる。

爆炎の西野、神速の森田、旋回の武田、剛腕の渡辺。

それぞれが致命的な欠点(ポンコツな性格や属性の偏り)を抱えながら、この場所でだけは、最高のチームとして笑い合える。

「……ふん。次は、お前の爆炎の熱を利用して、究極の釜揚げうどんを作ってやる」

森田がボソリと呟くと、ピットでは決して見せない柔らかな笑みが、その口元に浮かんでいた。

店の外には、福岡の夜風が吹いている。

明日になれば、彼らはまた「最強のポンコツ」として、水面を焦がしに向かうのだ。

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