『ポンコツたちの晩餐 ―脂と煙と、うどんの矜持―』
「おらぁ! 今日は無礼講だ! 飲め飲め、西野さんの奢りだ(経費で落とす)!」
西野貴志の威勢のいい声と共に、ジョッキがぶつかり合う。テーブルの上には、山盛りの豚バラ串と、福岡名物の鶏皮が並んでいる。
「西野さん、奢りとか言って、結局また負けたレースの反省会にするんでしょ?」
渡辺優子が、すでに赤くなった顔で串を頬張る。
「優子、あんたの今日の1マークのダンプ、ありゃあ『殺人未遂』よ。でも、あれのおかげでウチが展開拾えたわ、サンキュー!」
武田静香が、精密な旋回技術を語る時とは別人のような、気の抜けた笑顔でビールを煽る。
そんな騒乱の真ん中で、一人、静かに**「マイ割り箸」**を取り出した男がいた。森田勝司である。
「……西野、その鶏皮も悪くないが、やはり最後は『麺』で締めんといかんだろう」
森田の前に置かれたのは、彼が店に無理を言って持ち込んだ、香川から取り寄せた生うどん。
「出たよ、森田さんのうどん談義!」
西野が呆れたように笑う。
「いいか、西野。スタートと一緒だ。うどんも『コシ』がコンマ01秒でもズレれば、それはただの小麦粉の塊だ。このエッジ、この艶……お前の爆炎属性で茹でたら、表面が溶けてしまうわ」
「森田さん、それ絶対うどん馬鹿にしてるでしょ! 山口のあかりちゃん(野田あかり)に『おじさんたちの飲み会、マジ加齢臭する』ってSNSに書かれてましたよ!」
渡辺優子がスマホを見せると、森田は一瞬だけ表情を崩した。
「……あかりか。あいつは誠の弟子だからな。機体もネイルも派手だが、中身はしっかりしてる。だが、あいつにうどんの良さを教えるには、あと10年は早い」
「硬いこと言うなよ、勝司! ほら、静香も優子も、明日からまた地獄のペラ叩きだぞ。今日はこのポンコツな頭、アルコールで洗浄しちまおうぜ!」
西野が再びジョッキを掲げる。
爆炎の西野、神速の森田、旋回の武田、剛腕の渡辺。
それぞれが致命的な欠点(ポンコツな性格や属性の偏り)を抱えながら、この場所でだけは、最高のチームとして笑い合える。
「……ふん。次は、お前の爆炎の熱を利用して、究極の釜揚げうどんを作ってやる」
森田がボソリと呟くと、ピットでは決して見せない柔らかな笑みが、その口元に浮かんでいた。
店の外には、福岡の夜風が吹いている。
明日になれば、彼らはまた「最強のポンコツ」として、水面を焦がしに向かうのだ。




