サバサバ鯖サバイバル
数か月前から日本はディストピアと化していた。
あちこちに飛び散った赤い血、止まったインフラ、歩き回るゾンビ。
こうなった原因は、アイツらだ。
無人ビルの割れた窓から外を見る。
『ほら、私ってサバサバしてるからぁ』
『遠慮しなくて良いのよ~』
ビチビチ跳ねながら喋る鯖が徘徊していた。
数か月前、マッドサイエンティストの鯖津翼という奴のせいで世界は遺伝子組み換えされた喋る鯖に侵略された。
海から陸に飛んできた鯖の一部が建物に突き刺り、日本中が鯖の血まみれ。
生き残りは人間様の頭上で自称サバサバ系美女を名乗り、うんざりするセリフを吐き、生臭い匂いで人々を目が死んだゾンビに変えている。
組み換え鯖は高い知能を持ち、繁殖力も通常の鯖の38倍。陸上でもある程度生存可能。人の頭に乗っかって寄生し、『私サバサバしているから~』という特徴的な鳴き声で鳴く。
ゾンビパニックならぬ鯖パニックだ。
あいつらのせいで、私は、私の彼女は……っ!
『ほらぁ、私ってサバサバしてるから。』
「ハイ、わかりマした。」
彼女があの寄生鯖に取られた!
彼女は、海から来たあいつらから私を庇って、あんな風に……。
息を整える。
階段を静かに下りて、彼女の後ろを尾行する。
この数か月、生き残りの板前のイバさんやフグに寄生されたカナ君、専業主婦のザエさんに助けられ、ここまで生き残った。
彼らはもう、鯖の餌食になってしまったけれど、彼らの思いは生きている。
そして、皆から教わった技術も。
「行くぞぉおおおおおおおお!」
鯖on彼女が振り返る。
『あら積極的なイケメン』
「うるさい!お前なんかに言われても嬉しかない!」
「もんちゃん?」
彼女の声が聞こえる。
「私が助けに、来た!」
板前のイバさんが最後、私に残してくれた包丁を手に、一閃!
骨を避け、肉を咲きつつ内臓を取り出す。
「イバさん、貴方の技、お借りします。『閻魔捌き』!」
三枚おろし、完了。
「もんちゃん!もんぢゃん!怖かった!」
泣きながら彼女が胸に飛び込んでくる。
「よかった、本当に良かった。」
震える体を力一杯抱きしめる。
そのせいで、上から降ってくる鯖の雨に気付かなかった。
『焼鬼鯖』
突如噴射された火炎が頭上を焼く。
それと同時に、焼き鯖が降ってきた。
「生存者確認、これから保護する。」
火炎放射器を持った男がこっちに近付いてきた。
「君は……?」
これが反変異サバ抵抗軍との出会い。
あのサバサバ鯖達との本当の戦いの始まりだった。
これぞホントの『サバを読む』てな、ガハハ!
ちなみに、こんなインフルの悪夢みたいなもの、続きません、絶対に。
もし大賞取ったら、その時は書きますよ、ガッハッハ!
年末のご多用な時期にこんな悪ふざけに付き合って下さった皆様、ありがとうございます。
阿呆みたいな内容ではありましたが、楽しくはありました。




