死ぬ気で頑張れ!としか言えん!
あの後…私の部屋…
朝日くんと富田君…二人ともいる…。
こんな一人で住むのがやっとな狭いところに3人いるのはきつい。
そんな狭すぎる部屋に二人はびっくりしている。
「悪いけど、私も贅沢は言ってられない身分なの。」
そうあの曜子がまたいつ襲撃に来るかもわからないのだ。
なるべく何も持たずにシンプルに生活していた。
それも二人とも私の部屋に上がったとたん「せっまー」といわんばかりな顔をしている。
「なに?」
もう、なにも文句は言わせまいという勢いで、二人をにらんだ。
「い、いえ…何も…」
今はもう、誰にも文句を言われたり言ったりする余裕すらない。
私の背後で二人は…
「いったい何を…?」
「さぁ…」
とか言ってる声が聞こえてくる。
もう知ったことか!
私は引き出しにしまっておいた茶封筒を二人に差し出す。
「なんですか?これ?」
その封筒の中身を見て、二人は驚いた。
「…」
「マジかよ…」
私がかつて月城家にいた時、相原君からもらった小夜の写真だ。
もう、あられもない姿で写っている。
小夜の姿は曜子そのものにしか見えないほど似てるので、二人にはどう見ても曜子にしか見えないであろう。それも、曜子が通っていた環状大付属高校の制服を着て、いかがわしいことをしているのだから、これはどう見ても曜子にしか見えない写真だ。ちなみに感情ぢ付属高校の制服はいまだに変わっていないとのことなので、それは調べれば、誰でもすぐわかることだ。
「お姉さん?鬼…?」
と朝日くんに言われてしまったので、
「勘違いしないで!これは私がやったわけでも頼んだわけでも、この写真を撮ったわけでもないわ!」
「じゃあなぜ…」
「私のことを不憫に思った人が、私の知らない間に懲らしめてくれたというのが正しいかしら?」
2人ともそんな人がいるんか!?といわんばかりな顔をしていたが、それは本当のことだ。
私も別に曜子に対してここまでやれとは言ってはいない。
だがしかし、本当に知らない間にこうなっていたのは事実だ。
「ってこんなことをしてくれる人が、本当にいるんですか?」
と朝日くん。
「そうね。はっきり言ってこんなことって、とんでもないことよね。
でも…
信じられないことに鬼のような人間もいるところにはいるのさ。」
「じゃああの女。嘘つきじゃないか!」
「まぁあの子が言っていたことは、不妊とか隠していることはあったけど、おおよそのことは本当だよ。」
「?」
「あとその隠していることとはこの写真のことではない。」
「どういうことだ!?」
「これは曜子ではない。この写真の子はただ単に曜子に似てるだけだ。」
「は?そんなこと信じられるわけないだろ!?」
そんなこと言ったところで信じるわけがないであろう。
私は一つの古い雑誌を見せた。
「ほら、これ見てみな。」
実はこれは後で月城が私に一部無料でくれたものだが、一度曜子が小夜と一緒にホテルで双子コーデというコンセプトで写真を撮ったことがあったとは思うが、それが後日、本当にファッション雑誌の一部に乗せられていたのだった。
これを見て、二人はまたすごく驚いていた。
「まぁこの子小夜っていう子なんだけどさ、ホント他人の空似で曜子そっくりな子だったのね。
私も初めて小夜の顔を見た時はホントにびっくりしたんよね…。」
ホントそれだった。
そして二人は黙り込んでしまった。
「義姉さん…」
「なに?」
「この子がホントに曜子じゃないなら、一回合わせてもらえないか?」
といわれた時…マジで困った。
確かに、朝日くんや富田君目線、実際に小夜を見たわけじゃないから、まだ信憑性はないであろう。
おそらく小夜を見るまでは絶対に信じないであろう。
でも、確かに小夜という人物は実在する…それは確かだ。
だが小夜は、私が月城家を出ていく少し前に、どこかに売られてしまったのだ。
そうなると…まずい…
どうすれば?
「つまりその小夜という人物を見ないことには納得いかないという意味ですよね?」
「まぁそうだな。実物見てないのにこれは別人です言われても信じられないぜ。」
「そうですよ。今時同じ人物で合成することだって可能なんですから、信じられません。」
そうなるとすごく困った…
んー
「あのさ、朝日くんはいつまで東京に滞在してる?というか滞在できるかな?」
「え?」
「時間かかるかもだけど、ちょっと聞いてみるね…」
私がかけた連絡先…
月城の娘のうちの一人である中川サキ…
「ええっ!?しってる?」
運がいいことに、サキは小夜の行き先を知っているとのことだった…
「あの、あと三日後ぐらいまでに何とかできないでしょうか?」
すごく無茶を言ってるなこれ…
「無理なお願いで申し訳ございません。」
一応どこに行ってしまったか知ってはいるらしいけど、多分難しいだろうな…
「わかりました。はい…はい…ありがとうございます。」
なんとか話はついた…ものの…
「あの…もう少しだけ伸ばせないですか?」
「え?」
「実はこの子、ずいぶん昔に私がいた場所から、離れてしまってて今、東京にはいないらしいの…。」
仮に会ったところで、あれから随分と時が過ぎている。私だって31歳だ。
曜子だってあれから、太ったり痩せたりバウンドしたりで、ずいぶんと姿は変わっている。
小夜だって、この写真の時のままの姿でいるとは限らないのだ。
「それにこれももう10年くらい前の写真でね。もしかしたら、この原形をとどめていないかもだけど、それでも会いますか?」
と一応聞いてみた。
やっぱり会う決意は変わらないらしい。
私も急遽の火曜日と水曜日仕事を休むことにして、二人と一緒に小夜に会いに行くことにした。
サキさん曰く…
小夜は今、かなりいかがわしい場所にいるとのことで、あまりお勧めはできないとまで言っていたというのにやっぱり二人とも行くらしい。
そして現場にたどり着くと…
「やぁ」
何とそこには月城さんがいた。
ああ一応は予想はしていたが、本当に来るとは。
「一応、気になってね。結局来ちゃったよ。」
「あ、初めまして、星子さんの義弟で朝日といいます。」
「あ、どうも。わざわざありがとうございます。」
「いいんだよ。私も相変わらずこういうとこ好きでね。」
あーあ、やっぱり相変わらずか…
「まぁたまにはいいじゃないかー」
というかこの二人、ここがどういうところか判っているのだかー
私はこっそり…
「いい?何があってもホントに知らないからね…」
「??」
「この人たち、マジでやることえぐいから…」
と2人に言っていたが…
「何を人聞きの悪いこと言ってるの?」
月城には思いっきりバレていたらしい。
「すでに指名はしてある。さぁ行こうではないか。」
って指名までしていたんか?
やっぱり月城さんだな…
そして久しぶりに会った小夜は…
すごいことに曜子とは違ってあの時の原型を年相応にとどめていた。
「君の妹は、いつの間にやら、トラグエのブストロールみたいになってしまったらしいが、小夜は偉いことにきれいなままだよ。」
ほぇー
やっぱり、こういう商売で生きていくためにはある程度、いろいろ手入れは必要だ。
それにこの商売も結局は見た目と若さが勝負なので、少しでも退化してしまうと簡単に切られるそういう世界だ。
それにしても、かなり年いってる月城ですら、あのブストロールというキャラクターを知っているとは驚きだ。
2人は小夜を見るや否や…
「マジか…」
とホントに驚いていた。
「どうしたのかね?彼女は滅多にお目にかかれない上層部専属の高級娼婦だよ。それ故にかなり厳しく管理されているから、性病の方も大丈夫だよ。」
と月城はいろいろ言っているが、彼らにとってそれが目的ではない。
だから、月城のその声はほとんど彼らにとってみれば「は?」な状態だった。
というか、あの小夜が今では高級娼婦って…
まぁ月城家の愛人やメイドは25歳で強制定年とされるから、こんなことになっていてもおかしくはないのだが、やっぱり月城のやることは本当にえぐい。
「というか、あなたがお相手すればいいんじゃないですか?指名予約したのはあなたですし…。」
と富田くんが月城さんにお役目をパスする。
「あー私は25歳以上の女は抱かん。」
「えーーーっ!?」
さすがに二人ともそれには驚いた。
そりゃそうだもう50過ぎのおっさんがこんなこと言っているのだ。
50過ぎでこんな主張はさすがに引く
そう、かくいう私も引いている…
「なんだね?君たち?そのまなざしは…?」
月城も私たちの様子にはさすがに刺さるらしい。
「私はまぁ優しい方だよ。」
それで優しいだと?
私ら3人はもう「はぁ?」と声が出そうだが必死で耐えている状態だ。
「25で別れてあげているだけ感謝こそしてほしいものだよ。」
何てこという奴だよ!それも上から目線で!
「考えても見なよ。ひどい奴だと女にとって貴重な20代全期間を吸い尽くした挙句、30代になったとたんゴミのように捨てていく男なんか、その辺にごろごろいるというのに、私は25できちんと終わらせている。そいつらよりかは優しいとは思わんか?」
ああ、そういう意味でか…
ホントにそう言う考えなら、三十路になった女を突然捨てる男よりかはましかもしれない。
男はいくつでもやり直しがきくものだが、女で30越えで捨てられるのは、やっぱりきついものがある。30で捨てられた女はなかなか次はないというのが現実だ。
なるほどね。だから月城は25歳以上の女はそこで切るわけだ。
「マリア君のことを覚えているかね?」
ああ、そういえば最初に私が見た月城の家から追い出されたあの人か…
「今では、普通のリーマンと結婚して普通に過ごしているよ。」
へぁまじか…あの時はどうなるかと思ったけど、なんとかなるものだね。
女の30はやり直しが難しいが、25はまだやり直しがきくという法則は、月城の経験談を聞いてすごく納得がいった。月城も鬼であり鬼ではないということが。
「で?君たちはどうするのかね?この子のことを相手していくのかね?どっちにしても今回ばかりは私ののおごりだ。好きにするがいい。」
と女をおごるなんて、かなり気前のいい話だ。
「マジかよ…」
富田君はホントに信じられない顔をしていた。
「じゃ俺は遠慮なく…」
「え?」
と富田君が行こうとしたら、
「うわーーーーーーーっ!!!」
とこれまた先に朝日くんが小夜に飛びついてしまった。
これには私たちもかなりびっくりした…。
そんな状況だったので、
「ま、ここは一先ずこの部屋を出よう…。」
そうですね…いくらなんでも人が…いやそれ以上に自分の義弟が…いくら娼婦であれど自分の妹以外の女と営んでいるところは見る気はしない…
「君には他の子を紹介する。」
と月城は富田くんにはそういって、部屋を後にした。
もう何にしても滅茶苦茶な結末だった。
そして待合室のサロンで私は月城とお茶することに…
「あの…」
「なんだね…」
「相変わらず、使用人とかを愛人にしているのですか?」
私も私で無粋なことを質問してしまった。
もう慣れたというか、なんというか…この人はすでに何でもありな気もして…
「まぁ…そんなとこだね…。」
やっぱりな…
「まぁでも…よほどの事情がない限りはもうさすがに小中学生を使用人として雇うことはやらなくなったよ…。最近は法律も厳しいからね…。」
「そのよほどの事情って何なのですか?」
「ああ、そうだな。君がいた最後の年に雇った小梅ちゃんいただろ?」
そういえばいた気がする…
「あの子。実は木橋家の三女で木橋家の習わしでうちで修業させて預かっていただけなんだよね。」
「習わしって…」
「まぁ家でもしつけのため、10歳から家事を手伝わせるという家庭方針があったように、木橋家では、娘は中学生活の3年間よその家庭にて家事を修行させるという習わしがあるらしくてな。あの時はうちが引き取ったわけだよ。」
「でも、なんでわざわざ良家のお嬢様が使用人に成り下がってまで、そのようなことをするのですか?」
「お嬢様だとつい付け上がってしまう子って割といるからね…。常に自分が一番ではないことをきちんとわからせるためにかな…。まぁ私が聞く限りでは、私たちの一族感はだいたいそうだった。」
そうとはいえ…それはこのご時世にはかなり反感を買いそうだが…
「水谷家を見ただろ?あのひどい暴走娘たちを…」
あーあれはひどかった…
「わしら、7つ族では娘に好き放題させているとしまいにはああなることが判っているので、娘たちの暴走を止めるためにあえてああしてるのだよ。」
なるほど…あれ?ということは…?
「リキにしてもトキにしても結局失敗した。
まぁリキは元から実力あったし、将来の稼ぎも薬草されたようなものだし、本人も今の生活で納得しているから好きにさせとるが…
トキは…嫁いですぐに死んだよ…。」
「嘘…」
とは口にしてみたがやっぱりかと思った。
そりゃいきなり、孫異常に年の離れたジジイから、嫁扱いされるのはショックでしかない。
誰もがそんなことぐらいわかる。
「イヤホントに…娘二人に同じ男に嫁がせて、この有様とはな…」
「というか…」
「ん?」
「自分の娘をあんなヒヒ爺の嫁にすること事態が信じられんのだが!?」
それだ。
それはナキさんがそこに嫁いでからずっと疑問だった。
「それも二回も…」
あの時は自分も宿無し同然だったので、宿を提供してくれていた月城には何も口出しできなかったが、今ではその疑問を投げかけることだけはなんとかできる。
「まぁその子に会った実力に合わせて、この先生きていけるための場所を提供したまでだよ。
それに…」
「それに?」
「桜花院にはいろいろ借りがあって、断れなかったというのもある。」
借り…?それもまた疑問に残るが…
「まぁそこはホントにいろいろあったとしか言えない。
それに…」
まだ、「それに」があるんかい?
「男ってものはいくつになっても、若い女が好きだからなー。
まぁ好きとまで行かなくても、目の前に若い女がいたら放っておけないのが本音だろ。」
「もう」
「まぁ安心しなされ。桜花院もさすがにこれ以上は娘を要求してくることは多分ない。十分借りは返したつもりだ。」
どうだかな…
つもりって…こっち目線つもりでもあっち目線は違ってたりもするのでは?とも思えるが。
「まぁ族の予言通り、私のこの三分の一は、成人を待たずに亡くなったのも当たったしな…」
「そんな恐ろしい予言まであったんですか?
それって3人しか生まれなかった場合、二人しか残れないってことでは?」
「そう、だからこそあんなことがあってから、私は怖くなっていろんな女に子どもを産ませた。」
「あんなことって!?」
「……できれば聞かなかったことにしてほしいが…殺してしまったんだよ。アキとフキが、生まれたばかりの弟を…。」
「!!!」
「まさか自分の幼い娘たちが、あんな恐ろしいことをするとは思っても見なかったよ…。」
予言通りの三分の一の確率とはいえ、それはさすがにショックであろう。
だから、アキさんとフキさんは罪人だったわけだ。
人を殺してしまったのだから、もう真の意味で罪人でしかない。
月城のこの人とは思えれない奇妙な行動もここまで詳しく聞いてようやくわかった気がする。
「さてと…」
これを言った時、二人とも各部屋から出てきたようだ。
「どうだね?すっきりしたかね。」
「…はい……」
「あざっした」
2人とも…特に朝日くんはすっかり憑き物が取れた感じがした。
「うむ。おごりは今回だけだからな。」
2人ともこれを聞いて一瞬「え?」という表情は隠せなかったが、
「はい」
と次の瞬間にはしっかり返事をしていた。
「まぁ私も見なかったことにします。」
今回のことはどちらにしても朝日くんにとっては、曜子からの縛りから溶けた感じはするので、この先は彼なりに冷静に対処できそうだ。だからこそ私はあの時、朝日くんに他の女性を進めてみたというわけだ。まぁここでこんな形でこうなってしまうというのは想定外だったが、それはそれで良しとしよう。
「それで、曜子と小夜さんは別人だということは信じてくれましたか?」
まぁ何よりの問題はそこである。
「確かに、あの子と曜子は全然別人でした。」
「ホントビビったよな。結婚する前のあの女そのものを目にした時は…」
そりゃそうだろうよ。
「それもあの子、あの女と違って何一つ口きかなくておとなしいし、あの女の一個上らしいけど、未だにかわいいしでさ。」
「あと…あの声にはびっくりしましたね…曜子とは違ってその…とんでもないほどだみ声で吠えていて…。それもまたある意味怪物の叫び思ったけど…まぁそれは面白みもあった言うか…」
ホント男ってよく判らない…
要するに今まで抱いたことがある女よりかは飽きてないというだけにしか聞こえない。
それもまた男の本音だろう。
それはどうであれ。
「私が協力できるのはこれまでだけど、あとはあんたが離婚に向けて頑張るんだよ。」
そういうことである。
「その写真をどう扱うかはあんたに任せた。それ確かに偽の曜子だけど、使い方によっては有利に進むかもしれないからね。」
とそういうことだ。
「それはあんたにあげるよ。私は私で保存しておいたから。私もいざという時にそれを使う。」
「ありがとう…」
まぁ相手はあの曜子だ。
死ぬ気で頑張れ!死ぬ気で逃げろ!
としか言えない。
こうして、朝日くんと曜子は無事に離婚できるのか?
正直どっちでもいいけど、いいかげん曜子には現実を見て、おとなしくしてもらいたいものだと思った。




