久しぶりの月城家で。
あれから…
私はまだ東京にいることができている…。
そしておそらく、今こそが一番幸せな日だと言い切れる日だ。
4月…
私は今、
一人息子の三緑の入学式に参列することができた。
ホントに今まで、ほとんど放置状態だったというのに、この場にいられるだけでも幸せだ。
隣には月城さん。そしてまたその隣には小野坂夫婦が座っている。
「あの…月城さん。」
「なんだい?」
「ありがとうございます。」
本当に息子の初の入学式に参列できただけでも感動している。
「本当は私なんかがここにいる資格なんかはないのに…。」
ほんとにそれだ。
「いいんだよ。さすが君の子だ。あの有名私立小学校の受験をクリアできてしまうほどの実力だ。」
どうやら三緑は知らないうちに初等部から、お受験をしていたらしい。
本当は幼稚園からお受験をさせようとしていたらしいが、三緑がじゅけびに体調を崩してしまって、受けれなかったらしい。
「それにしても、今回は合格を辞退してしまったが、本当にそれでよかったのかね?」
「はい、私には子供を私立に通わせるような経済力はありませんから…」
そうです。
とてもじゃないけど、そんな養育費を払っていけるわけなどない。
「そんなこと気にすることは無いんだよ。お受験だって、私が君に断りもなく勝手に受けさせたのだから、むしろ遠慮なく利用してほしかったぐらいだよ。」
とはいうものの、この人のことだ。
あとになって、とでもない代償を支払えみたいなことを言ってきそうだから用心に越したことは無い。
「そういうわけにはいきません。
二央の場合は、元々資産家だったから、私立の学校に行けれていたわけですよね?
でも私は…」
「勘違いしてもらっては困るよ。
二央の学費は全部私が支払っていた。
もちろん、サキもユキもだ。」
「え?」
「まぁリキの場合は、母親の教育の考えで、他の子よりもより多くの教育費をこちらに払っていただけのことだ。」
「ということは…」
「まぁ基本、私は子供の教育費にかけてはケチることは無いよ。」
何とまぁ…ほとんどの子どもを中卒になるように追い込出来た鬼かと思っていたけど…
「ただし、自分の実力で這い上がってくることができた者のみにだけだがな…」
やっぱり鬼やん…
一瞬だけ見直して損した…
「ただ…二央に関しては、やっぱり火口家のとも関係があったので、私一人の判断だけでは通らない点があった。結果、火口家との希望もあって、二央に中学受験をさせたというのはある。」
やっぱりな…
「しかしだ。三緑は優秀過ぎる。
どちらにしても中学受験はさせるつもりだ。」
「それはちょっと…」
「いいや。
でないとあの子の才能的にもったいなさ過ぎる。
今度とばかりは君が止めようと決定事項だ。」
「…」
どうもこれ以上私が何言おうが無理らしい。
「学費のことは一切気にすることは無い。
いいね?」
もはや、私には何も言う権利などなかった。
何せこの入学式に参列できたことだけでも、私の大きな我儘だったのだから…
ホントにこの人の決定事項には、永遠に逆らえないとは思った。
「それから、これから先も出れる限りでいいから、三緑の授業参観や学校行事にもなるべく参加することを命ずる。」
「え?」
「私みたいな、おじいちゃんばかりが参加していると、三緑も不憫すぎるからな…。
どちらにしても、子供の行事に参加できる母親は参加していたから、そこも気にすることは無い。」
じゃあ今日の入学式もそれってことか…
なんだ…すごく気にして損した…
それでも、あまり来れないのだろうな…
今までだって、滅多に顔出せなかったし…
なにせ、三緑のことは実家にはバレてはいけない存在なので、そこまで三緑の周りをうろうろするわけにもいかない。
私も曜子も子供はもうできない体であり、兄も曜子に結婚を破談にさせられてから、一生独身を決め込んだとなると、琴金家の血を継ぐ孫は三緑一人となる。
それが、実家に知れるとなるとそれこそ大変なことになる…
私はそのことについて、月城さんにも話した。
「なるほどね…。
それで三緑を徹底的に匿ってほしいぐらいだと…」
もうこの際、三緑の学費や学校や進路先のことなどどうでもいい。そんなことより、三緑が私の子ではないということを実家には隠すということの方が、まさに重要なのであった。
「わかった。
大丈夫だ。そこのところは任せてほしい。
三緑は私の孫だ。
他の誰にも渡さない。」
そこのところは信用できそうだ。
まぁこの人のことだから、とんでもないほどの汚い手も使いそうだが、それも背に腹は代えられない。
そして、私は遊学式終了後、月城家にて気になることを聞いてみた。
「あの…大変聞きづらいことなのですが…」
「なんだね?」
「あれから、二央や希実やリキちゃんはお元気でしょうか?」
「ああ、君の教え子たちのことかね?
リキは相変わらずうちにいるよ。誰に似たのか判らんが、相変わらず男遊びが激しいおてんばで手を焼いてるかもなーw」
誰に似たのかって?あんただろうがそれw
「希実はあれから一応真面目に学校に通っているらしいぞ。
学校の成績も最初はついていくのがやっとだったらしいが、今ではまぁそこそこな成績らしい。」
よかった…
私立中に入ったはいいけど、二央みたいに勉強についていけなかったらどうしようかと思った…
「どうやら、同じ学校の女の子で素敵な彼女ができたらしくてな。」
え?彼女?
「その彼女が割と優秀な子だったらしく、一緒に勉強しているうちに成績もあがっていったらしいよ。」
アイツやっぱり、隅に置けない奴だ。
まずここに来てから…というものの…、
キキちゃんのココロを落として…
沢口さんのココロを落として…
ユキまでプレゼント送って感動させているぐらいだ…
それに付け加え、あのイケメン過ぎる顔といい
そっちの現地での女の子を落とすことなどお手の物だろう。
「それもだよ…」
「なんですか?」
「あの子。12の身空で、女の子のことをあの火口家のおばあさまの目の前で、婚約宣言までしたらしい。」
「えーーーーっ!!」
それにしても信じられない…
12歳って言ったら…中学一年で卒業してすぐってぐらいではないか?
まさかね…
いったい希実も何考えてるんだか…
まぁ希実は勘のいい子だから、間違った選択はしないだろうけど。
あの子の生末も気になるところだ…
「んー二央のことなんだけど…」
やっぱり月城さんからも言いにくいのかな…
「今、シングルファザーらしい…」
え…?
「じゃ…奥様達は…?」
「奥様たちって?側室が複数いたということは知っていたのか?」
私は静かに頷いた。
「あいつあれから側室を4人も取ったのな。その4人のうち、3人は子どもを産んですぐ、亡くなられたよ…。残った一人は逃げるように出て行ったらしい。」
「え?逃げたって…?」
「それが…死んでいった側室たちの美しかった顔が、最期はとんでもないほどの醜女になっていたらしい。」
え?
「身内だけで葬儀を行われたから、真偽は判らないけど、聞いている限りそうだと聞いた。
ただ…3人のうち一人はなぜか醜くはならなかったらしいが…それはなぜだかも謎らしい…」
何そのホラー…?
まぁ私も一応、二央の子を産んだ。
それでいて唯一の生存者。
ひょっとしてそれって…
「まさか、そのうちの一人の方が産んだ子って…私と同じ男の子だったとか?」
「いや、その人が産んだのは女の子だったらしい…
ちなみに残りの二人が産んだのは男の子と女の子各一人ずつでそういった共通の問題ではないらしい。」
性別によっての共通とかと思ったが、そうでもないと。
「ついでいいうとね…。」
月城はさらに言いにくそうに…
「3人とも人工授精でできた子らしい…。」
「!!?」
「どうやら、二央は側室たちには一切手を付けなかったらしい…」
それで仕方がないから、二央から無理やり種だけ取ってあてがったとか?
滅茶苦茶だ…
「二央も二央でそんなことになるなら、やるだけやっときゃいいのに、もったいない話だよなぁ…」
やっぱりおまえはそっちかえー。
「二央もさすがにショック受けて、今では廃人状態だ…。
あれはもう、火口家の名ばかりな当主で仕切るだけ仕切っているって感じだな。
特になーんも仕事もしていないし、ただのニートだ。」
すごい恐ろしいことを聞いてしまった。
「実質上、現場で働いているのは希実の方だな。
火口家は直感力が優れているから、占いや拝みや稼業を生業いしててね。
今、そのほとんどの仕事を希実が引き受けているらしい。」
「でも、そういう能力って、お金をもらうと無くなるのでは?」
「それが…火口家は何代かに一人が生贄になることで、それを防いでいるらしい。」
「!?」
まさかそれが!!?
「あの子だったらしい…
今、辛うじて生きてはいるけど…そして子供たちの前だけでは辛うじて、気丈な父親を演じているみたいだけど、いつまで持つか…」
ホントにとんでもないことになっていた…
ここで希実が言っていたことが明らかにあったわけだ…
「これで一応は…なんとか火口家も、次の世代までつなげることができたから、火口家とはどうにかイヤなしがらみは切れたものの…」
ホント後味が悪い終わり方だ…
「多分…これで三緑までは取られないとは願いたい。」
あの火口家にそんな秘密があったなんて…
今まで特に欠点などないと思っていたあの火口家にも、そんな残酷な裏があったとは…
ホントに恐ろしい7つの族だ。
「そういや、ユキもいたはずだが…ユキのことはいいのかね?」
あ、やば
実はユキのことだけは知っていたから、聞くふりをするのを忘れていた。
「そうですね。あの子いったいどこに行ってしまったのだか…。」
「なんだー君もあの子のことは知らないのかー。
実は私もあの子には逃げられてしまって、心配してるのだよー。」
うむ。
実はユキからは、行先に関してはさんざん口止めされているから、いうに言えない…
それに私も実を言えば、ここ最近ユキとはさっぱり連絡を取っていないから、あれから伊集院さんと一緒に住むと聞いたっきり、それ以降のことは知らなかったりする…。
そしてそのユキのことは…またひょんなことから知ることになる。




