キンキンちゃん結婚する
私は今、曜子の結婚式に参加している。
まさか、能丸の言っていたことが本当になるとは思わなかった。
ニッこにこの満面の笑みでいる新婦と…
どこかげっそりしている新郎ではあるが、それでも何とか吹っ切れた感じにしか見えないのは私だけだろうか?本当にあれで大丈夫なのだろうか?
新郎本人は曜子とうちの父と母の熱意に負け、「もう、いいか…」と言ってはいたが、そんな精神状態での結婚である。どう考えてもいいはずがない。
何がいいんだろ?
なんか、はっきり言って自身の結婚式ではないにしろ、なんかしっくりこない結婚である。
まぁ自分も一度は結婚したことはあるが、それもまた形ばかりの書類婚で夫婦う生活なんざ一度もなかったというふざけた結婚だったからなぁ。あまり他人のことは言えないかもだ。
それに私は両親目線未婚であり、曜子以上に親から結婚についてあれこれ言われている。
まぁここで、反撃していい返せばいいのかもしれないが、おそらく私が両親に黙ってした結婚は、絶対にいい顔しないであろうから…
それに今、鈴木という素晴らしい苗字を手に入れることができたことを、親になんか話てなるものかとさえ思っている。だから、どれだけうるさく言われようが我慢だ。
さて、問題の…
なぜにこの二人が結婚することになったという経緯ではあるが…
私が曜子に啖呵斬った数日後…
曜子は性懲りもなく、また朝日さんの職場の前で朝日さんを待ち伏せしていたらしい。
もうほんとにここで朝日さんは、はっきり言ってストレスの頂点に達していたらしい。
ただでさえ、仕事終わったばかりでつかれているというのに、その疲れから解放されたと思った瞬間に見たのが、仕事異常にストレスの元である曜子の笑顔だったというのだから。
すっごい気持ちは判る。
私は曜子のあの笑顔が大嫌い!
普通「人の笑顔っていいじゃん」と思うかもしれないが、私からすれば、あの曜子の遠慮なさすぎる笑顔は凶器でしかない。ただでさえ、誰よりも目立つあの声の主と一緒にいるだけで恥ずかしいというのに…
おまけにそれ以上にテンション上がって、調子こいて声を張り上げるのだ。
それもそこまでうるさいというのに当の本人は、自分が一番うるさくて、迷惑をかけているという自覚は全くないのだ。そこで誰かがうるさいと注意したところで、以前曜子との話し合いをした時と同じように、あくまで他人のせいにする。で、そこで「おまえがいちばんうるさいんじゃー!」と言われたことが、小さい時から何度もあった。
そういう時に曜子がとる行動といえば、
すべての音を全部かき消すかのような大声でワンワン泣くか、
すごいシュンとした顔してイジケて何も言わなくなるか(そして反省などしない)、
あと一番ひどいときはいきなり耳をふさいで、相手の話を全く聞かないか、
いずれにしても、結局何も効果はないのである。
周りは一応は、曜子の直さないといけない悪いところを必死で曜子に伝えていたのだが、本人が他人の意見を何も受け入れようとしないのだから、未だに自己中で我儘な性格は全く治ってないのだ。
そして…
「今日は二人だけで、すごしてくれる?」
最初に曜子に言われたのがこれである。
あの日に既に終わったはずなのにまだこれだ。
「あの、もう話し合いは終わったはずだけど…」
そうだ。話し合いはすでに終わっている。
だが、曜子はしぶとい。
普通の人なら、終わっているはずだが曜子自身はまだ終わってなかったらしい。
いったい、曜子はあの時の話し合いで何を聞いていたのであろうか?
やっぱり、曜子のシステムは自分に都合の悪いことは全部聞こえないようにできているのだろうか?
「私、もう二度と弄ばれたくないの!」
例のごとくまた、このセリフを吐いたらしい。
それもいろんな通行人がいる中で大声でそれを言っていたらしい。
「僕は君に何も…」
と言いかけたとたん…
「曜子じゃないかーーー!」
そこでまた遠くの方から、負けじと大声が響いてきた。
その声の持ち主といえば、
「あーーーーーーーっ!おとーさーーーーん!おかーーーさーーーーん!
おおーーーーーい!」
そこへなんのタイミングの悪さか、うちの父と母に遭遇したらしい。
(というかこれ?曜子とうちの父と母が打ち合わせで模したんか?と思えれるほどのタイミングじゃね?って、ホントにやらせかどうかは判らないけど…)
そして極めつけ、
「ようこーーー!その人かい?婚約中の彼氏ってーーーーーっ?」
とよりにもよって母まで遠くの方から大声で、朝日さんのことを婚約者呼ばわりしたもんだ。
「うん!」
その問いに曜子がすかさず、大声で肯定するものだから、
もうこの時点で、朝日さんは逃げるにも逃げられなくなってしまったということらしい。
その様子を少し離れたところから、一部始終を見ていた富田さんはもう、目も当てられなくなったそうだ。
そして目の前に富田さんはいる。
「まぁさ、あれだけやられたら、腹をくくるしかないわな…。」
といっていた。
「でもまぁ、本人もさすがに根負けして、今ではあんな女でも一周回ってかわいいとまで言ってるぐらいだしな。それもまぁ元は美人だし…その美人から愛されてるんだから、悪くはないんじゃないか?」
まぁはっきり言って外見だけは曜子はかわいい系よりの美人なので、顔だけは曜子の唯一のとりえだろう。
ただ…問題は…
「でも、曜子さんちょっと太ったかなぁ…。」
それだ
「幸せ太りか?だったらいいけどー」
んなわけない。あいつは少し前まで巨デブでいきなり痩せたんだから、明らかにリバウンドだ!
多分だが、あと一年もすれば少し前のトラグエのブストロールみたいなデブに戻ると予想!
「もしくは実はおめでたか?朝日もやるなーw」
妊娠だとしたら、それはそれで都合がいい。
妊娠が原因で太ったということにしてしまえば、ある程度はごまかせる。
え?それでは朝日さんがかわいそうだって?
知ったことか!
ここまで、面倒は見てやったのに、その挙句結局あの曜子と結婚を決めた男だ。
そんな、煮え切らない男のことなんか、今更知らん!
もうこれから先は私の代わりにどっぷりと曜子の餌食になってもらいましょ。
これでいい生贄ができたと思えば、私としてもうれしい限りではないか!
今、私はすごいひどいことを考えていることは判っている。
それでも私は今回のこの結婚が、曜子から解放されるものだと信じるしかない。
そして、それでも曜子はまたここでもやらかした。
披露宴、最後の新譜からのメッセージという、お涙ちょうだいな場面で…
「お父さん!お母さん!放蕩に今まで育ててくれてありがとう!」
またあのキンキンした声で、小学生が読むかのような無駄に元気でパワフルで、全く花嫁らしくない強い口調だった。
そう文末に必ず「!」という、エクスクラメーションマークを付けたような無駄に強い口調。
もう、それ聞いているだけで耳がキンキンしてマジで疲れた。
「そして、お兄ちゃんお姉ちゃん。私が先に幸せになってしまってごめんね!」
ん?
「私は今日お嫁に行きます!」
は?
兄の結婚を破談にさせたのはおまへだろうが!
「お姉ちゃんも早くいい人が見つかって、結婚できることを曜子は心から祈っています!」
それに私は黙ってるだけで一回すでに結婚してるわ!
それに、あれだけ一人称で自分の名前を言うなとさんざん言われていたのに、こういう時に素が出て一人称が「曜子」になっていた。
「正直、富田君がお姉ちゃんとくっついてくれたら、曜子はホッとしますが、うちの姉はいかがですか?」
なぁんて余計なことまで言っていた。
「ふぁ?」
それを聞いた富田君ですら、あきれていた。
ホンっと!余計なお世話だ!
そしたら、よりにもよって品のない父が
「お、それいいかもだー。さっすが曜子だー。がははははー」
と酔いながら、変なことを言うものだから、せっかくの結婚式のクライマックスも全部曜子と父のせいで台無しになった。
まぁそれでもここはご愛嬌になってしまった空気になったので、一応、ここまで来て破談になることは無かった。
さんざんマウント取られて嫌な思いをしたが、まぁここは自分を守るためにひたすら辛抱だ。
それにしてもあの誰よりもくそ我儘な曜子が結婚できたことがマジで奇跡でしかなかった。
まぁ朝日くんも言っちゃ悪いが、仕事ができる出世コースを約束されたエリート以外ではイマイチな男だ。顔は中の下でさえないし、センスや体型だって年の割にはおっさんくさいし、性格的にもお人よし過ぎて押しが弱いし、なによりパッとしない。
私と同い年らしいが、ホントに全体的におっさんにしか見えないんだよね。
まぁ曜子が選んだ相手は、日本人がよくやりがちな一点豪華主義な男を旦那に選んだというわけだ。
朝日さんも朝日さんだが…
曜子も曜子で…ほんとにこれでいいのか?と結婚式の最後の最後でそう思えていた。
私もここで学んだことは、若いうちにここまで結婚相手のスペックを思いっきり下げれば、割と簡単に結婚できるんだなということはよく判った。
それは私自身の結婚を思い返してみてもそうだなと改めて思えた。
結局、結婚というものは全部が全部自分の思い通りにはならないもの
それは曜子に然り、朝日さんに然り、同じってわけか…
それでも私はどう考えても、親まで巻き込まれた状況に陥っても曜子みたいな女と結婚するなんて、絶対にイヤだな…
あの時点で四面楚歌だったかもだが、私なら慰謝料払ってでも逃げるけどな…
まぁ事情はどうであれ…
結婚式と披露宴はなんとか無事に終わった。
で
この新郎新婦いわく…
どうやら二人は今夜がガチな意味で新婚初夜らしい。
つまりは律儀にも朝日くんは今まで本当に曜子には手を出さなかったらしい。
何か聞いてるだけで、朝日くんが不憫になってくる。
「てかありえないよな。普通…。」
「全く手を出してないというのに「弄ばれるのはイヤ!」と言い切られてな…」
兄と富田君はあの二人を見て口々にそう言っていた。
ホントそれだ。
「俺、今後は朝日とは距離を置くわ…」
と富田君。
彼は思っていた以上に賢い思った。
「うん、それがいいと思う」
マジで正解思えた。
この結婚で…もう私には被害がなくなるといいんだけど…
やっぱり曜子が絡むとなるとただ単に被害者が増えるだけな気がしてならないのであった。




