キンキン現る。すべて無くす。
「ああ、うん大丈夫。うまくやってるよ。」
あれから4年たった…
ユキは卒業後、あの部屋を出て行った。正直あの部屋を受け継がせようとしたのだが、「あのオヤジからの干渉がうざい」とのことで、今は伊集院さんと二人で住んでいるらしい。まぁ、実家から逃げたいという気持ちはイヤというほど判る。
あれからいろいろあった。
なんと、あの問題児だった美鳥おじさんがあの後すぐっていうぐらいな時に死んだ。
死因は転落事故らしいが、何がどうなってそうなったのか?謎らしい。一応、家に軟禁させられていたものが、なぜに崖がある場所まできて、そこに落ちたのか?いろいろ謎すぎて、そこは突っ込んではいけない気がするので、誰も突っ込んでないという。とにかく、一族のお荷物であり、同じ村に住んでいた住民ですら、嫌われていたので、不謹慎であるが美鳥おじさんの死は誰もがすっきりしていたとのこと。
「最低だな…」
とは思うが、ここまで嫌われているのってある意味すごい思う。
あと、さらに驚いたことに…
「まぁ亮子が死んだ…。」
とさっき風子さんから連絡があった。
これもまた、自分の子が死んだというのにここまであっけらかんとしている親も初めて見たものだ。
言われてみれば、仮に私が亮子の親だとしても、さすがにあきれるばかりにしかなれないだろうなと思えてくるぐらいだ。正直な話、亮子みたいに性に奔放で、なんも悪びれもなく人を売るような女が自分の娘だとしたら、私でも他人のふりをして目をそむけたくもなる。
まぁ私もはっきり言って、あまり他人のことを言えた義理はないとは思うが、好きでこうなったわけじゃない。
そして今はもう、鈴木英子の愛人はしてはいない。だが今度は鈴木英子を守るために別の場所で動いて、違う人の愛人をしている。もちろん、このことに関しては鈴木英子も納得はしている。
そう私は無事にまだ、鈴木英子のもとで働いている。
あの後、私は鈴木英子の秘書をしている。
これまでよく、曜子からの妨害が入らなかったものだと本当に奇跡的だった。
そして私は…
「これはたいへん許しがたきことです。私たちがその社会を変えていかないといけません。」
と鈴木英子が記者会見でカメラの前でしゃべっていた時、私は鈴木英子の隣にいて、半分ぐらい顔をテレビに映されてしまった。この時は大したことないと思っていた、後になって気が付いたことだが、「しまった」と思った。本当にそれに気付いた時には嫌な予感でしかなかった。
そう…やっぱり現れたのだ。
「キラリさん。だれか来てるよ。」
キラリとは、私が英子さんからつけられた呼び名だ。
名前が星子で、お星さまキラキラだから、キラリだそうだ。
ここではみんな英子さんに呼び名を付けられ、そう呼ばれるのがここでの習わしだ。
呼ばれて応接間まで行ってみると、豚みたいなデブが一匹二人分は座れそうなソファに一人でデンと座っていた。それも出されたお菓子をむしゃむしゃ食っていた。
一瞬誰かと思った…。
「あーーー!おねえちゃん!」
聞きおぼえがあるあのキンキン声?
曜子?だった。
ホント最初に見た時は、誰だ?あの百貫デブ?とおもった。
でも声を聞いて、あの声は明らかに曜子だと認識した。
しばらく全然曜子を見てなかったけど、まさかあそこまで百貫デブに変わっているとは思わなかった。
あの外見だけはかなりの美少女だった曜子がここまで変貌してしまったとなると、もはや曜子にはなんも取り柄がない、迷惑なだけのただのデブ。
ホントざっまぁーと思ってやりたいところだが、今はそうはいってられない。
目の前にいるデブから逃げることだけを考えないといけない。
と思っていた。が曜子の反応は思ったよりも早く、いつの間にか近くまで来ていた。
そして曜子に思いっきり抱き着かれるかと思ってよけようとしたが、よけきれずそのまま床に押し倒されてしまった。
私は曜子の下敷きとなってしまった。これがどういうことかとなると…想像しなくてもわかる通り…私はそのまま気絶してしまった。
でもやっぱり、周りの声だけは聞こえていて
「え?お姉ちゃん大丈夫?」
とあのキンキン声。
「たいへん救急車」
「おねーちゃーん!ねぇねぇおねーちゃん!だいじょうぶー?しっかりしてよーー。」
とずーっとキンキン声で叫ばれていた。
「おねーちゃんおきてよーーーーー。ねーねーおねがいーーーー。」
もう、周りもさすがにむかついたのか
「もう!あなたはさけばないでください!まじうるさい!」
とポニーさん。
「おねえちゃん。おねえちゃん。」
曜子は確かに叫ばなくはなったが、叫んでても叫んでなくても、あのキンキン声の温良は下がらず、相変わらずうるさい!
「ああもう!お前はしゃべるなっ!!」
終いにゃ曜子をお前呼ばわり、してまで黙らせようとするが、
「お前って言わないでっ!」
出た―曜子の「お前呼ばわりするな!」というこだわりー!
これまじうざい!
これ、やると余計にこじれるんだよなー
「ああクッソめんどい!何でもいいから喋るな!!お前の声耳障りなんだよっ!!」
とマジ切れしだした。
そしたら…曜子は…
「うえーーーーーーーーーーーーんっ!!!」
もう、猛獣のごとく泣き出すのはまたお約束。
それもこれまで以上にでかい声で泣き叫ぶから、ここまでくるとホントに手に負えなくなる。
「ああもう!これじゃまともに救急車も呼べない!」
「ポニーさんたいへんです。大量に血が出ています。」
「え?ちょ…これやばいよ…もう、私外で電話してくる…。ルミィ、あとはおねがい。」
ポニーさんはこのうるさい中、庭で救急車を呼んだ。
そして私は救急車で運ばれることになったが、おぞましいことにそれでもまだなお曜子が同乗してついてこようとしていたのだった。
ポニーさんは曜子のことを必死で羽交い絞めにして。
「今すぐ行ってください!こいつのことは私が何とかする!私は後で行くから、今はルミィあんたがついていって!早くいって!!でないとこいつが!」
それを言い終わる前に救急車のドアが閉まり、出発した。
ああ、ポニーさんその歳でその体格であのクソデブ曜子を抑え込んでいたのはきつかっただろう。
無事に病院までたどり着けたはいいが…
診察してびっくりしていたことに私は妊娠していた。
全然気づかなかった…
子どもはあのヒヒ爺の子だ。おそらくヒヒ爺からしてもいらない子であろう…
まさか、妊娠してるとは考えてなかった…
いうまでもなく、子供はだめになっていた…
そして、二度と子供は望めないとまで言われてしまった…
どちらにしても、子供は望めないとは思っていたが…
これはあまりにもひどくないか?
私はいったい、曜子からどれだけ、いろんなものを奪われ続けるのであろう。
もう本当に疲れてきた…
「ごめんね…あんな子家に招き入れちゃって…」
あとから病院に来てくれたポニーさんが謝ってきた。
「話には聞いてたけど、まさか、あれだけひどい子とは思わなかったよ。」
ほんとそれだ。
赤の他人からすると、他人の家庭事情なんて少しこじれてるだけでたいしたことは無いと思われがちだが、当事者からすると周りにも協力をえないといけないほど、難しい事情なんて多々あるのだ。
それを何にも知らない他人がまともに聞き入れないとこうなるというわけだ。
「これからは気を付けると言いたいのでしょうか?」
「え?」
「もう、無理ですよ…。あの子は一度ああなったからにはこれからもあの家に来るでしょうから…。」
「…ウソでしょ?」
「こちらこそごめんなさい。あんなのを身内に持った身で…」
このまま、鈴木英子のもとに私が残っても迷惑でしかないであろう。
私はこうして、鈴木英子の秘書をやめていくことになった。
そして、一雄さんとも離婚することになった。
とにかく、ここにはもう迷惑はかけられないと思った。
一応、それでもまだなお、今住んでいるアパートは曜子にはバレてなかったらしく、今でもあのアパートには住んでいる。
そして…
また聞きたくもなかった声を聞く羽目に…
こんな時に誰もいない…
せめてこんな時にぐらいは…
私がすべてを失って苦しんでいるというのに、曜子は
「星子ーーーー。大丈夫だったのー?入院したんだってーーー?」
母だ…
やっと介護から解放されたとはいえ、相変わらずノー天気過ぎる…
「…」
「結局なんだったのさー。一応私たちも病院に行ったけど、琴金星子なんて患者ここにはいませんと突っぱねられてさー。中にも入れなかったんよー。どうしてー?」
そりゃそうさ、今では私は琴金ではなく鈴木星子だ。
離婚したとはいえ、今でも鈴木だ。
琴金?そんなクッソダッサイ名字に戻ってたまるか!
「というか、曜子がちょっと触れただけで、怪我したってどういうことなの?ちょっとぐらいふれたぐらいで、星子がぶっ飛ぶとか?星子いったい今どんだけ痩せてるんよー?まじありえなーい。」
と電話口で冗談半分に喋っている母にいい加減イライラしてきて。
「いいかげんにしてよ!」
「え?どうしたの?」
「私が何で救急車で運ばれたか判ってるの!?」
「曜子がケガさせたんでしょ?そんなのたいしたことなかったんでしょ?」
「たいしたことなかっただと!?マジふざけるな!!
あんなきょでぶの百貫デブにいきなりすごい勢いでぶつかられてだ!?無事でいる奴がどこにおるね!!?」
「え?だって、星子生きてる。」
「ああ!私は生きてるけど!そのせいであんたの孫は死んだよ!!」
「え?孫って?」
「曜子が私をぶっ飛ばしたせいで、私は流産!おまけに私は二度と子供を望めない体だとよ!!」
「…嘘」
「あんたそれ聞いてまだたいしたことないって!?あんたの頭の中はどんだけお花畑なんだよっ!!?
それ聞いてもまだ、あんたは私に曜子を押し付けるってか!!?ふざけるんじゃねーよ!!二度と関わってくるな!!」
「ちょ、星子!ご…」
母が何か言い終わる前に電話を切った。
ホントに新しく変えた番号なのに何で知ってるんだか!
ホントマジで気持ち悪い!
そして私はすべてを失った…
ああ泣きたいのに泣けない…
この後…私の事情などお構いなく曜子はまたさらに我儘人生を突き進んでいくのであった…




