別れる縁。続く縁。新しい縁。
あっという間に…一か月たった…
結果は…
一応、第一志望の桃蘭学園は不合格。第二志望の私立星咲中等部に補欠合格であった。
なんと、滑り止めで受けた聖スベラム学園中等部は不合格だった。
最後に受けたすべり止めの試験は何を思ったか、希実は途中で試験放棄したらしい。
ホント真面目に受けさえすれば、合格は約束されていたはずだったのに、試験と途中で投げ出し逃げたらしい。それに関しては、あの火口家のおばあさまもカンカンだったらしい。
それでも、なんとか第二志望の星咲中等部に縋りつき、繰上り合格できたとのこと。
帰ってきた希実に滑り止めの試験をなぜ逃げたのか?聞いてみたら…
「隣のブスどもがうるさかった。」
とのこと…
滑り止めは一番最後に受けたらしいが、レベルの低いすべり止め枠な学校で地元では有名らしく、金持ちでも成金やガラの悪い子が比較的多かったらしい。
「あんな学校に行くぐらいだったら、公立行っても変わらないレベル」
と判断したらしい。
むしろ、公立の方が苦労人の子も多いということは、ずっと庶民で育ってきた希実からすれば、イヤというほど判っているぐらいだ。
ある意味、希実の判断は正しかったと思う。
「星咲はほとんど男子校だけど、それでもいいの?」
「ん?別に女いてもいなくても、どうでもよくね?」
とケロっとしていた。
「むしろ、いない方がうるさくなくていい。」
とのことだった。
まぁ星咲には一応女子もいるにはいるが、男女別クラスで校舎も別という変わった学校だ。
まぁグランドや体育館、音楽室や美術室と言った特別教室や、一部の部活動は共有しているらしいが、他は基本男女分けられる。
おまけになんでか男子が6クラスあるのに対し、女子のクラスは学年で2クラスのみ。
ここ近年まで、男子校だったとは言われているが、このアンバランスさはぬぐえない。
ちなみに女子生徒の受験選抜の基準は謎らしく、成績の良し悪しとか全く無関係で、誰が選ばれるか判らないらしく、かなりの競争率で競うらしい。
聞いてるだけでも、よく判らない学校だ。
「まぁいいや。おめでとう。」
「ん、ありがと。」
ほんとあっさりしすぎている…。
「そりゃそうと、ニオ兄のことは聞かないのか?」
まぁ一応少しは聞いてはいるし、状況知ってどこかショックだったが、なんかいろいろどうでもよくなってきているのもまた本音だ。
「やっぱり二央、いたの?」
「ああ…」
一応、生きてはいるみたいだ。
「あまり、穏やかではなさそうだけどね…。」
「まさか…」
「おい、勘違いするなよ。一応死にはしないから、そこまで心配するな。」
全く希実は人が考えてることをホント先読みしてくるのがかわいげない。
「じゃあ何なのよ?」
「相当、頭おかしくなってた。」
「え?」
「俺のことすら忘れていた。最も、俺とはあまり絡んでなかったからかもだけど、それにしても忘れるなんてことは無いだろ?」
「じゃあ…」
「自分が月城家で育ったことすら忘れてる…。で自分はずっと火口の家にいたと言い切っている。まるで別人だ…。」
どういうことだ?
「転校したとは言っていたかもだけど、学校だって行ってなかった。大学にもいかないって…。あの家に隔離されていた。」
まぁ高3の三学期は自由登校で、学校に行く生徒は少ないが、それにしてもあれだけ行くとか言っていた大学にすら行かないなんて…。
「それでも一応、火口家の次期当主はニオ兄に確定らしい。」
「じゃあ希実は…」
「俺はあくまでニオ兄の補佐らしい。ま、そっちのが気楽でいいけどな。一応、俺もあの家に置いてもらえるらしいし。」
「…て、意味わからない…」
と思わず口にしてしまったが、
「俺も意味が判らん。」
とまで言われてしまった。
「ただ、俺が感覚で判ることは…ニオ兄よりもニオ兄の嫁さんたちの方がヤバいな。
多分、あの人たち…ニオ兄の子どもを産んだら命はないよ。」
「え?」
て、そのあんたが言うニオ兄の子どもをすでに産んでしまった本人があんたの目の前にいるのだけど…そこはどうなの?と問いたくなったが…さすがにこんなに小学生にそれを聞くのはまずいだろう。
「ん?どした?」
「いや、なんでもない。」
まぁどっちにしても私はこの先、曜子から逃げていくしか生きられない身なので、いつ死んでも別に構いはしないが、一応もうそこのところも気にしないようにしよう。
「…」
「…」
「やっぱり先生。なんか隠してることは判るんだけど、まぁいいや。」
ホントかわいげない…
「それはそうと…」
「なに?」
「私、今夜でここを出ていく。」
「そうなんだ。もうお役目ごめんか?」
「ううん、家庭教師のバイトが通いになるだけ。」
「あーそう。」
「残念だったわね。まだ中学からの予習の勉強をしないとだから。」
「あーそっちか…これで勉強から解放される思ったのに…」
「希実は勉強嫌いだもんねー」
「まぁな」
ここを出ていくこととなって、一番気がかりなのは…
「パーパー。」
「おいこら、俺パパじゃないってw」
三緑のことだ。
もう、実の母である私よりも希実になついているぐらいだ…。
私って、ホント母性がないかもだ。
その昔はイヤというほどあったのにね。
「お前とも今日で…」
と言っているが
「ううん、この子はずっとここの子だよ。」
「え?」
「んー今はこの子の手前、あまり詳しいことは話せれないけど、また後日話すよ。
何なら、その理由ぐらいは勝手に私の考えを視てもいいよ。」
「まぁいいか…大人には大人の事情ありきって奴か…」
ホントかわいげがない奴だ…
「まぁどちらにしても、この家って夜逃げする覚悟でもないと出られなさそうだしな。がんばれ。
ただ…おそらく、出てく時には誰かに見つかるだろうけどな…」
とかなり不吉なことを言っていた。
こいつの予想はだいたい当たるから恐ろしい。
しかし、変な話だが前もって出ていくと言っておくと失敗しやすいらしいが、引っ越し完了した後に出ていきますというと出ていくことをあっさり認めるらしいとサキさんにしても、ララさんにしても、それは言っていた。ここはその夜逃げ?の先輩たちの言うことはさんこうまでに今夜引っ越すことに決めた。
というか、元々希実の受験期間は暇だったので、その期間に自分の荷物を少しずつまとめて、引っ越し先に送っていたので、もうほとんど自分の荷物は部屋にない。長い間、使っていたユキと過ごした子の共有部屋も今日でおさらばだ。そしてあとは月城家のバイクをしばらくレンタルすると言ってあるので、そのバイクで逃げるのみだ。
さらば月城家。
私は車庫からバイクを出して、いざ出発しようとした途端。
「ちょっとまって!」
車庫の入り口付近に影が見えた。
まずい!
見つかった!!
誰かと思えば、ユキだった。
何を言い出すかと思ったら、
「私も連れてって!」
「え?」
「前、一緒に出て行かない?と言ってたよね?」
確かにそれは言っていたが…
「だったら私も一緒に連れてって!!」
突然のことだった。
どうしよう?
まさかユキが一緒に来るとまで想定してなかったので、部屋は一応2Kあるがかなり狭い…
「お願い!自立できるようになったら、出てくから!」
「学校はどうするの?」
「…一応、オヤジに来年度分の授業料だけ払わせてきた。教科書代は…一年上の先輩が譲ってくれるから大丈夫。」
あの子もあの子なりに一応用意した上での家出らしい。
「あたしもう、あんな家にいること事態、耐えられない!!」
とまでいっていた。
とはいえこの子はまだギリギリ16歳の未成年。
16歳の誕生日寸前に家出というのが何とも言えないが、これもあとで連絡するか…
多分だが月城は、自分の子だろうが他人の子だろうが、この家を出ていくことには文句はあまり言わない人だ。
「狭いけど、それでいいなら…」
「もちろん。というか今さら同じ部屋でも平気。」
とまで言っているが、私はやっと一人になれた思ったら、結局誰かと住むんか!?な状態。
まぁユキなら私も慣れてるからいいけどね。
「じゃあ、後ろ乗りな」
「うん!」
ユキはバイクの後ろに乗ろうとした…
その時…
「ちょっとまった!」
え?まただれか??
まずいなこれ以上は…
と思ったら、希実だった。
「なんだ希実かー脅かさないでよー」
ホントびっくりした…
「おい!ユキ!」
希実はユキを呼びすてよばわり。
「目上を呼び捨て呼ばわりするなぁー」
ユキの反応はこれ…
でも希実から、ブスだのババアだの呼ばれないのはマシな方…
いやむしろ珍しい…
「どうした希実?」
希実だってユキになんか用事はあったはずだ。
「これやる!受け取れ!」
希実はなんかをユキに投げた。
それをユキはしっかり受け止めることができた。
「え?」
「いつだったかそれ欲しい言ってただろ?」
ユキの手にはかわいらしいブーケがあった。
希実のお手製のブーケだった。
まるで、花嫁から受けたブーケトスみたいだった。
「それ餞別。」
「あ…ありがとうー。私、初めて男の子から、まともなプレゼントもらえたよーw」
「明日、誕生日だしね」
「まじかー。じゃついでにハッピーバースデーだな。」
「もうまじうれしー!」
と言っていた時だった。
「よしこれで安心。この中で一番最後に結婚するのはブーケ受け取ったおまえだー。」
といきなり希実は冗談めかしにそういってきた。
「え?」
その時私はそれを聞きのがなさかった。だって希実の言うことは…
「ちょっとぉー!なにそれ!?普通、ブーケトスで受け取った人が次の花嫁になるんじゃ?」
とユキも負けじといい返すが、
希実の言ったことは現実となってしまう…?かもしれないのだ…?
「そうだな。冗談だ。まぁ元気でな。」
「うん!」
そして、希実の見送りを最後に私たちは月城家を後にした。
まぁどっちにしても私はしばらく、月城家に通うことになる。
バイクはしばらくここに通うために借りておくし、一番最後の返す日だけは電車で帰ればいいという寸法である。
それでも引っ越し先に来るまで、私たちは奇異な目で見られていた。なにせ高校の制服を着たままの女子高生をバイクに乗せているのだ。はたから見てとんでもない光景だったりしていた。それで途中でよく誰にも注意されなかったなと我ながら運がよかったとさえ思えた。
一応まぁ、あくまで乗せるのは今回限りで引っ越し先のアパートまでの間しか乗せないとユキとの約束だった。
「私一度でいいから、バイクの後ろに乗って見たかったのよねー」
「もう、それめあて?」
「あはは、そうかもねー。まぁのりこなしてみたいけどさー。」
ほぅ意外なことを聞いてしまった。ユキはバイクにも興味あったとな。
「ありがとう」
「え?なに?」
「私のことを受け入れてくれて」
「でも、連絡はさせてもらうよ。君、一応未成年だから。」
「まぁそこはね…」
とりあえず、引っ越し先について駐輪所から、部屋までの井戸中の会話だ。
「ところで…あんた、自分の荷物はどうしたの?」
「ああそれ?実は先生が荷造りしていた段ボールの空きが多々あったから、少しずつ紛れ込ませた。」
「えーーーーーっ!!?」
「えへへごめん。」
「気づいてたんかい!?」
「まぁなんかゴソゴソしてるなと思ったら、カーテンの向こうは段ボールだらけで、これは…と思ったので慌てて、自分の荷物も先生の段ボールにねじ込んだ。」
「もう…」
「まぁまぁそこまでたいしたものは入れてないよ。私服とか下着の替えとか?あとどうしてもいるものとか?そういうのぐらい。あ、あと学校の教科書や制服や体操服とか、学校に関するものは、全部学校のロッカーに鍵付きで詰めてきた。あとから少しずつそこから運ぶから、これからもよろしくね。」
ホントちゃっかりしてる。
そして新生活が始まった。
ホント自分の子は置いてきて他人の子を連れてきてしまったがこれも仕方ないこと。
三緑はまだ小さくて連れまわすのは厳しいが、ユキはいざいう時は動けるだろうし、仮に一人で置いていったとしてもなんとかなりそうな子だ。
もちろん、私は月城さんから、いろいろ言われました。
自分が今まで世話してきた娘がいきなり取られたのだから…
それも、自分が長年温めてきた一番の秘蔵っ子がユキだったらしい。
本当なら、ずっと自分のそばに置いて、ユキは誰にもやらない予定だったらしい。
なんでだよ?そこがすごい謎い。
という疑問が残るがおそらくそれも月城の悪趣味によるものだろうと私は予想する…
それでもユキのことはなぜか一緒に住んでもいいとのことだった。
そして、私は3月の卒業式まで希実の家庭教師を勤めて、月城家とはさよならした。
三緑…
多分、たまにしか会いに来られないと思うけど、元気でね…
絶対に曜子をはじめとする実家の家族には見つからないように祈っておく…。
私はこの日…
母親であることを退学した…ようなものだった…つまり母親失格で首となったのだった。
もうこの3年もの間。
ホントに意味が分からないほど忙しい日々を過ごしてきた結果がこれだった。
でもこの3年間が私の人生で最もうまいこと遊んだ時期でもあろう。
それもこれも、今まで月城さんに守られてきたおかげだといえよう。
すごく奇妙な世界ばかり見てきたが、この3年間に限っては比較的曜子に邪魔されない期間だったと思う。正直、月城さんにはそればっかりは感謝している。
これから先はもう守ってくれる組織はいない…
絶対に見つからないようにしないといけなくなる…
せめてあと一年は見つかりませんように…
と祈るばかりだ。




