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運命のXデー来たる

運命の日が来た。


希実が修学旅行へ出発する当日。

その日が丁度、二央の18歳の誕生日。


二央にとって運命の日である。


二央のお供をするのは


親である月城さんと私だけだった。あとは運転手の井上さんのみ…


私が行く理由は一応、私が二央の子どもを宿した者だかららしい。

そして本来なら、二央の実の息子である三緑も参加するのが筋らしいが、3つにも満たない乳児にはさすがに遠出はキツイとのことなので、今回は欠席でもいいらしい。


というか月城さんは多分、三緑の存在を知られるのがまずいのだろう。

どうも本日、あの寺には火口家の現当主と隠居様も同席するらしいので、もし三緑をあの場に連れて行った日には、間違いなく三緑も火口家にとられることまで読んだのだろう。




いつもより、参加者はかなりシンプルだった。


どうなるんだろう?


もう、ただでは済まなさそうな気がしてならない。



七つの族に関することで最も重い儀式のように思えてきた。


二央曰く。



「別に、手紙を読むのと同じ要領だろ?」



本人はかなり軽い気持ちでしかないが、私も一度はあの予言の原本を見たことがあるが、本来ひらがなで書く部分が全部カタカナで書かれているあの独特な書き方は、かなり気味の悪いものがあったのは確かだ。あれで、長い時代を経て予言されてきたとなると字が読めない者はどうしたのだろうとさえ思えていたが…。



「ああ、あれ別に字が読めなくてもいいんだよ。あの予言書を一番最初に本人が開いてみるだけでいいんだよ。歴代みんなそうだったらしいし、字が判らなくても、本人がそれを見れば、本人にはだいたいわかるらしいよ。


実はあの希実くんも、読めない字なんか当たり前のようにあったようだけど、開いて目を通しただけで、あの予言書に書いてあったことは、全部理解していたらしいよ。」



信じられん…



というか、一族から破門になっていた希実の予言まであったとはね。


更に深掘り聞いてみると、希実のおじいさんの分とかもあるにはあったらしい。

該当者不明や、見なかった予言書は存在してから、20年後には破棄するとのこと。


まぁなんにしても避けられないことである。

二央はそれを見ないことには先に進めないのだから…。



そしてついについた…



何度来ても、この寺は重いのか軽いのかよく判らない空気が漂っている。



「イヤーーーっ!」


ああまただ…


多分、この寺に入る前のあの儀式か…


と思いきや違っていた。


「諦めてくれ。お前は選ばれたのだ。」


という声…


「なんで!?なんで私が⁉」


あーあ、尼さん候補に選ばれてしまったのねー。

まさかよりにもよってこんな日に尼さんになるものがいるとはね…。


さては今回は火口家でしょうか?


なにぶん、火口家の一大イベントの日であるのだから、それの裏では生贄を差し出すパターンはよくあることだ。


それにしてもこの寺はよくそんなにも生贄を差し出しても経営が成り立っているのが不思議なぐらいだ。どう考えても尼さんたちの食事はかなり質素でないとやっていられないぐらいこの寺には尼さんがいる。


「私が、ろくに学校にも行かない役立たずだから?引きこもりだから?私が変態に汚された身だから?」


どうもこの子も過去に何らか問題があった子らしい。


「お前が「カヒャッ‼カヒャッ!カヒャッ!」とか変な笑い方をするから、その修行のためだ!」


ん?「カヒャッ‼カヒャッ!カヒャッ!」?変な笑い方だ?


「だったら、今からでもきちんと学校に行くから、普通の子になるから。もう、変な笑い方しないから。お願い!私を助けて!」


「だめだ。もう決まってしまったことだ。」


「そもそも、お前があの時、変態の関わってしまったが悪い!」


「そうだ!お前はその時にもう、穢れた存在だ。引き返せない。」


「お前は穢れた存在だから、浄化しなければならない!一族の恥だ!」


すごい理不尽なことを言われている。

変態に遭遇するにしても事故にしかすぎないというのに、変態と関わってしまった時点でアウトなんて、理不尽でしかない。


「あーーーっ!!」



生贄にされそうになっているのは二十歳ぐらいの女の子だ。

その子がいきなり私に駆け寄ってきた。


「助けてください…。」


なんで私が?


「曜子さんのお姉さんですよね?」


「え?」


曜子と関係がある人?

そうなるとろくなことがない。


「私、金田亜希です。」


金田亜希?はて誰だ?


「曜子さんの保育園で一緒だった…。」


ってそんな大昔のこと、言われても…


なんか忘れてることが…


あーーーーーーーーっ‼‼


思わず大声が出てしまいそうなぐらいに思い出してしまった。


確か、曜子が学童に行くからという理由で、学童に行かない選択肢をしたあげく、それが原因であの当時に不審者から被害を受けたあの子か…

で、今ではそれが原因で、一族のいけにえにされそうになっているわけだ。


そういえば、金田という苗字もよくある名前ゆえにあまり気にしてもなかったが、七つ族の一つの名字が金田だった。確か、あの時の亜希ちゃんの名字も金田。


というか金田ってそんなにも遠くに住む一族だったわけか。


と関心している場合ではない。


これ今、私が関わったらろくなことにならなさそうだ。

ここは冷たいかもだけど…


「ごめんなさい…どなたかと見間違いでは?」


とごまかした。

かわいそうだけど、ここで助ける義理はないと思った。

それに、ここに関係する一族のしきたりは絶対だ。


「亜希。これは仕方ないことなんだ…。」


それを言っているおじさん。

実は本当に見覚えがある。確か、亜希の父親だ。

あの変態事件の時に少しだけ話をした記憶がある。


ここは早いうちにここを離れよう。


「だいたい、私たち分家の中の分家で、本家とはほとんど関係ないじゃない!住んでる地域も違うし!本家の人とも、一回もあったことなんかないし!」


ああやっぱり、金田家本家は私の地元にはなかったようだ。

私の地元にあったとするならば、こんな恐ろしい一族が近くにいたとなるとぞっとするが、亜希がいたあの金田家はあくまで遠い親戚らしい。


「おい、どうした?」


「んーん、なんでもない」



二央に呼ばれて私はその場を去った。

後ろから「待って!」という声が聞こえたが、それを振り切って私は二央がいる方に行った。



そして私たちが他の棟に案内された。



そこにはすでに火口家の方々が来ていた。

二央の祖母にあたる人。

この人に会うのは、久しぶりである。


二央は親と私以外に立ち会う人がいるとは思っていなかったらしく、驚いていた。


「あら、あなたは…」


「お久しぶりです。今回も付き添いです。」


「そうなの」


「あと一名お見えになるとのことでしたが…」


「あ、それはこちらを変わりで。」


月城がなぜかクマのぬいぐるみを自分の席の隣に座らせた。

おそらく、そのクマのぬいぐるみが三緑の代わりであろう。


「そうですね。了解しました。」


この場を仕切るのは尼さんではなかった。


髪は短めだが、一応髪の毛はあった。

あまそぎというのか、おかっぱに近い髪形だった。


そして、すぐ両隣には、あの早都江ともう一人の女性がいた。

彼女らもセンターの人と同じようなヘアスタイルだった。

この寺では特殊な地位にあるのが彼女たちらしい。


彼女たちと普通に尼になる人とどうやって分けているのかが謎であるが、まぁ、この寺にはそいうい総合職の人もいるということで納得しよう。


「それでは、始めたいと思います。」


ついに始まるのか…


「火口二央様は前へいらしてください。」


二央は席を立つ。

そして彼女たちがいる方に向かう。


「それでは、あちらの扉の中へお入りください。」


「そちらの部屋には、巻物が二つ用意されています。」


「一通りお御目通しの方、おねがいします。」


とすごく難しい言い方をしているが、本来この儀式に参加するのは10歳の男の子だ。

こんな言い方で理解できるのだろうか?


二央はドアの向こうの部屋に入っていった。



二央はあのドアの向こうで何を見るのだろう?

何を知ることになるのだろう?

それを知った後はどう変わるのだろう?



私はあのドアから出てきた二央が全くの別人になってしまいそうで、不安でしかなかった。


なんでだろう?


二央と私は、一応三緑の親である。

ただ、婚約もしてなければ、正式に付き合っているわけでもない。

なにもはっきりとした関係がないまま、子供だけ作った仲だ。


ただそれだけの関係ではあるが、やっぱり気になってしょうがない。


ホントに今さらながら思うが、私ってつくづく人間関係に関してはいいかげん過ぎるなと思えてきた。


というか、人とあまり深い関係になるのが何よりもこわいのだろう。


だから、これと言ってはっきりした関係の人は本当にいない。




10分ぐらいして、二央が巻物二つ抱えて出てきた。



表情的には、いつもとさして変わってなかった。


そして次に二央の口から出た言葉は…



「あのさ俺、月城家出てくわ。」



だった。



「もう月城家には帰るなとあった。」



「え?」



「ごめん。俺、あなたとは一緒になれない。」



いきなりの別れだった。



「今は無理だけど、いつかは三緑と三人で過ごせれるようになればいいかと思っていたけど、それも無理だ…。」


詳しい理由は言ってくれなかったけど、



わかってた…




どちらにしても、この人とは一緒にはなれない。


そんなこと、二央と初めて会った時から、わかっていた。



でも


思っていた通りのことを言われ過ぎていて、


それがものすごく胸に刺さっていた。



「…」



私は何も言うことができなかった。

これで二央に会うのは最後かもしれないというのに…


そんな私の肩をポンと叩く者がいた…

月城さんだ…


「こんな時にそんなことしないでよ」とさえ思うが、やっぱり月城はこういう空気はさっぱり読まない。


月城までもこうなることは判っていたようだ。

いや、以前にもそんなことを言っていた。

それも皮肉にも、同じく一族にまつわる謎の予言書のせいで、自分の唯一の息子との別れをいきなりくらったのだから。


「それで俺、火口家に戻らないといけないとのことですが、その火口家はどう行けば…」


「心配はしなくてもいいわ。私が火口です。」


「え?」


「私があなたの祖母火口れいこよ。これからはよろしくね。」


「おばあさま?」


さすがに二央も驚いていた。


「なぁに?少しも気づかなかったの?」


そうだ、火口家の血筋なら、勘は鋭いことを考えると、二央が全く気付かないのはないはずだ。


「んー、たまに見かけて気にはなってはいたけど…」


「まぁ少しは気にしてくれていたのね。それはうれしいわ。」


少し気にしてくれるだけでうれしいとは…

火口家の考えていることは、なんとなく理解しがたいかもだ。



なんだかものすごくぎこちない孫と祖母の再会だったが…



「これできまりね。」



二央の祖母がいうと



「二央は火口家に連れて帰ります。必要最低限の二央の荷物はあとで送ってちょうだい。

転校手続きは、全部こちらで済ませておきます。



月城さん。今までありがとう。」



すごく呆気なく、二央は火口家に行くことになった。


「はい」


月城さんのこの返事一つで、それが決定してしまった。




帰り道…行きとは違って二央がいない。



車の中で




「あのさ」



いきなり、月城さんが口を開いた。


「左ポケットの手紙いつ見るの?」


といってきた。


ずっと気づいてなかったが、いつの間にか私の左ポケットには茶色い封筒が入っていた。


そして…そこには…



指輪が入っていた。



手紙には



「我妻星子へ

はなれていても、気持ちはつながっていると信じています。

なにがあっても、心の妻は君一人だと思っていいですか?」



我妻星子って…


本気…だったの…?


お坊ちゃんと雇われ人の戯れだったと思っていたのに…

身分違い過ぎて無理すぎる思ってたのに…

私はそれで吹っ切ろうと思っていたのに…



いいかげんな気持ちだったのは私だけだったの…


今さらながら思った…。


知らないうちに涙があふれていた。



「まぁ、あれも一度は普通な恋愛ができてよかった思うよ。

多分、君よりつらい思いしてるのは、あの子の方だな…これは…」


と月城がそこでボソッと言っていた。


本当に月城のいう通りだ。


今、ここにこの指輪があるのなら、二央は何となくこうなることを予測をしていたのだろう。


人間、突然の別れはいつ起きるのか?

本当に判らないということを今日思い知らされた。

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