お前パルプ●テかよ!?
9月に入ったある日のこと…
「あの、側くんのご家族の方でしょうか?」
裏口から、入ろうとしたらいきなり話しかけられた。
ランドセルを背負っている小学生高学年くらいのメガネをかけたボブカットの女の子だった。
「あなたは?」
「あ、はい私、側くんのクラスで委員長をしてます沢口と言います。
今日はどうしても側くんを説得したく思い、お伺いしました。」
あの子に何を説得しに来たのだろう?
あの子に何言ってもむだだと思うけど…あわせてみるのは有りだろうか?
まぁそれでもここに北よりかはかなり人間になれてきてると思うけど…
それにしても、なんだろう?
わざわざ、利己教育のために学校に行っていない不登校児に会いに来るとは、すごい度胸してると思えた。
すでに担任ですら、あきれてほぼ放置状態だというのに…
まぁ見た目的に真面目そうな女の子だ。
希実の外見に惹かれているようなチャラい子ではなさそうだ。
まぁおそらく、真面目な話だろう。
「じゃあ、あがって。家がまぁあれだけどあまり気にしないでね。」
「はい。ありがとうございます。」
きちんと挨拶もできるし、しっかりした子ではある。
って、今の時間って確か希実は…
「はい。そこはそろえて!足は踏まないように!」
戸の外からも声が聞こえてくる。
私はその声が聞こえるドアにノックする。
「どうぞ。」
一応、返事があったので部屋に入ると、希実と上村さんが社交ダンスの稽古をしていた。
「ハイ!イチ、ニッ、サン。」
また、すごいものを見たという感じだった。
「はぁ…どうしてもうまくいかないわね…で?どうしたの?」
「あの学校のクラスのお友達が来ました。」
「え?」
さすがの上村さんも驚いていた。なぜなら、希実は転校初日以来、学校には一切行ってないのだ。
その初日も教団の前で挨拶だけして、適当な学級指導を一時間だけ受けた後にすぐに帰ったのだから、クラスメートとはほとんど交流はないはずだ。
「あの、突然押しかけてきて申し訳ございません。わたくし、側くんのクラスで委員長をしてます沢口と申します。側くんのお母さまでしょうか?」
「えぇまぁ…」
上村さんはそうでないにしても、一応そう答えた。
「それで、あなたが何の用なの?」
「あの、側くん。今は学校を休んでおられますが、せめて運動会と修学旅行と学校行事ぐらいは参加できないかと説得に伺いました。」
なるほど、そういうことね。
確かにこういうことだけでも同い年同士の交流は大事だと思う。
「そうね。」
上村さんも少し考えて希実を見る。
「希実さんはどう思いますの?」
そうだ。問題は希実だ。
希実が参加したいかどうかである。
「別に…どっちでも…」
という答え。
「じゃあ、ぜひきてほしいな。私たちは大歓迎だから。」
その言葉を聞いて、希実は沢口さんをちらっと見る…。
「…おぅ……」
「よかった~。これでようやくクラス全員で思い出作りができる。」
「私、うれしい」と言わんばかりな表情をしていた。
「あ、これが2週間後に控えた運動会のプログラムと、他の組ダンスの資料。
このダンス。覚えてきてくれたらうれしいかな。
側くんの位置はこことこことここの〇がうってあるところだから、ここ覚えてほしいんだ。」
と言っても図だけでは振付がいまいちよくわからない…
「あ、もし判らないところがあるなら、明日から数日間、修学旅行で同じ班の子たちも一緒に連れてくるから、一緒に覚えよう。」
といろいろ言っていた時だった。
「話込んでいる最中に非常に申し訳ないのだけど…」
上村さんだ。
「私たちもついさっきまでダンスの練習をしてたのよね…。」
なんか始まる予感がした…
「あ、失礼しました。では私はこれで…」
「待って…」
「え?あの…」
「あなた。丁度いい。」
「?」
「あなた、希実さんのお相手役お願いしてもいい?」
「えーーーーーっ!?」
「いい。手の位置はこう、この姿勢で希実さんに合わせて動いて。」
上村さんの指示により、あっというまに社交ダンスの体制を組まされてしまった。
「音楽スタート!」
そして上村さんは強引に音楽を流し始めて、そのまま始まってしまった。
2人とも目線が会ってなかった…
それに気づいた上村さんが
「はい!お互い見つめあう!目線を離さない!」
すごい指導をしていた。
希実は「なんでこうなるんだ?」という感じな顔してたし、
沢口さんなんかいきなりことで、顔が真っ赤だった…
まぁあんなイケメンを間近で見たとなるとやっぱりただでは済まないよな…
「はい。いいねー。動き上等!はいそのまま自然に動いてー。そう。」
なんか、私もあのクリスマス会に出る前にここで指導されたかったなぁと思えてきた。
私、本当にさっぱりだったもの…
そうかあのとき、キキちゃんがあの場で何とか踊り切ったのは、やっぱり前もって練習していたわけか…
結局、沢口さんはその後一時間以上もダンスに付き合わされてしまった。
上村さんは
「今日はありがとね。やっぱりあなたの方が、希実さんと身長差のバランスがあってうまく踊れたみたい。これからも毎週火曜日に付き合ってくれたらありがたいのだけど、よろしくできないかな?」
とまで言っていた。
「…えっと、時間が合えばお伺いします。では失礼します。」
沢口さんは恥ずかしそうにそう言っていた。
「まって。」
「あのまだ何か?」
「送ってく。」
ことにした。
「今日はありがとね。」
「ええ、こちらこそ。手土産もなくて、おやつまでいただいてしまって。」
「あなたがあのこの子と誘ってくれて、うれしかった。」
「あ、はい。」
「委員長もたいへんね。」
「あ、委員長と言いましても、押し付けられただけでして…」
やっぱりね…
最終学年の受験時ともなると、おとなしそうな子に押し付けるのは定番。
多分、この子は受験しない側だろう。
この時期に放課後に塾に行かないことじたいがそれだ。
でも…この子は…
「ん、委員長の仕事。立派にこなしていてすごいと思うよ。」
「え?」
「今は面倒でも、あとになって、それが経験となって役に立つこともあるから、今のうちにそう言うのも勉強した方が得よ。」
「あ、ありがとうございます。」
少しの間、沈黙が続いた。
「あ、あの側くんって、どうして学校こないのですか?」
あ、やっぱり聞かれるか…
「まぁ家で社交ダンスや護身術まで習っているのだもの、元気といえば元気ね。」
まぁはっきり言って、ここに来たばかり時は本当に人ではなく、猿かと思ったぐらいに人としての常識が欠けていて、困ったことも多々あった。
まぁそれでも火口家で短い間でマシにはしたとのことだが、最初の内は屋敷から勝手に逃げだすことも結構あって、迷子になるわ、補導されるわでたいへんだった。本当に知らない土地来てようそんなに動き回れるなとさえ思ったぐらいだ。
そんな希実も、今ではだいぶ落ち着いてきた。
「あの子。人と喋るのが苦手でね。」
とでも言っておこう。
本当は、喋るとすごく口調が乱暴になることがよくあった。
そして最近になってようやく上村さんから、いろいろ教えられてまともになってきたのである。
正直…
今のまま学校に通わせて、問題起こさないかとも不安である。
まぁ男の子だし、所属している学校は普通の公立小学校だから、希実以上に口が荒い子もいるかもしれないから目立たないかもだが…。
やっぱりあの子は、良家に入る子だから、そうはいかないところもある。
「そういえば、側くんあまりしゃべらなかったですね。」
「そ、そうなの。」
「いつもあんな感じなのですか?」
「んーなれない人だとやっぱりああかな…。」
「そうなんですね。」
沢口さんもなんとか納得したようだ。
「明日から、もう少し人を連れてくるから、うまくいくといいな。」
そうだ。明日はもっとクラスメートが来ると聞いていた。
大丈夫だろうか?
でも、キキちゃんとはうまくできていたんだよな…。
あの子もホント人次第かもな…
気が合う子が来てくれるといいけど…
翌日
「こんにちわ。」
「まぁいらっしゃい」
「あのこれ…」
「まぁいいのよ。こんな気を使わなくても。」
「いえ、一応はと思いまして…」
ホントに常識ある子だ。
まぁここには、子供の手土産などいただかなくても、この手のお菓子は食べきれないほどあるから、そういう意味でも本当になくてもいいぐらい。
「そうだぞー。うちの母ちゃんが言ってたけど、おやつもっていくだけでいいって…」
と仲間うちの一人もそういっていた。
「それにしてもでかい家だなー。まじですげぇやー。」
ホント普通の小学生って感じだ。
そこへ希実が来た。
「あ、側くん。今日は修学旅行の班の子連れてきたよ。
左から、前川くん、山田くん、大原くん、さやかちゃんだよ。
よろしくね。」
えーーーーーっと言いたくなるようなメンバーだ。
もっとまともな子はいなかったの?
なんだこれ…すっごく失礼な話になるんだが…
外見的に大原くんはまとも枠として…
残るは、チビとイモと…すっごい太った女の子…
って…この子がさやかちゃん?と疑問に思える子だった。
それに加えて、希実の天然茶髪もふくめたら、すごい個性的なメンツだ。
私は昨日と同じ団するルームまで案内した。
「鏡だけは触らないようにね。」
と一言言っておいた。
これでうまくいくのか?
あとは任せるしかない。
一応、本当にダンスだけを教えに来ていた感じだった。
結果的には、特に問題はなかったようだ。
最後にみんなでお菓子を食べて帰っていった。
希実の感想は…
「まぁあいつらは悪い奴じゃないな。」
とのことだった。
また例のごとく、あの子たちが着いた時に若干力は使ってしまったようだが、あのメンツからは悪い気がしないことが判って、自分から出迎えに行ったらしい。
「でも…あまりあの学校には行きたくはないかも…」
とのことだった。
、あぁ普通に学校に行ってくれれば御の字ではあるけど、やっぱり学力的にもまだ追いついていない点は多々あるので、普通の六年生の学力についていくにしては難しいだろうとは思う。
ただ、普通の小学生らしく、学校行事だけは参加させたいとは思う。学校行事に参加するだけなら、学力的には問題はないのだから。
そして…来るべき運動会が来た。
運動会より三日前ぐらい前までは、ずっと運動会のダンスの練習ばかりだったらしいので、一応学校には通っていた。登校中にまたどこかに勝手に行ってしまうこともまだありそうなので、車で送り迎えな状態だったが、なんとか学校生活は送れたらしい。
沢口さん曰く。
「ホントに近寄りがたいオーラ持ち合わせてますよね。」
とのことだった。
家に遊びに来た時は普通に接することができても、学校だと男女間の距離もあってか難しいらしい。
それでも学校ではm大原くんたちがなんとかサポートしていたとのこと。
運動会…
ホントにぶっつけ本番で走る…
沢口さん曰く…希実と一緒に走る子は、五十嵐賢也という学年一の俊足を誇るほどの子らしい。
「みんな五十嵐くんと走るを嫌がって、側くんにそこを押し付けてしまったけど…大丈夫かな」
とまで言っていた。
「んーまぁ大丈夫なんじゃない?いくら、かけっことはいえ、それ以外の子は普通の子かもだから…」
「そうですよね。でも…他のクラスも押し付けあってるとしたら…」
「それにもし、希実がビリだって、それはそれでいいと思うよ。今回は参加できただけで、あの子にとってみれば、いい思い出だよ。」
徒競走六年男子の部が始まった。
一等でもビリでもみんな一生懸命だ。
こういうのが素晴らしい。
ただ…
「私は運動音痴なので、走り終わるまでホントに緊張します。
まぁ結局頑張ってもビリなんですけどね。」
「今からそんなこと言ってちゃだめよ。」
まだ女の子の番ではないので、女の子たちは自分たちの席でポンポン持って応援してる。
「まさとしーーーーがんばれーーーーっ!!!」
どうやら次は大原くんが走るらしい。
「ゴーゴーレッツゴーレッツゴーマサトシーーー。」
と一部の女の子たちはすごく乗りよく応援していた。
「大原くん。モテモテねー。」
「ああ、あれはまかノリですよ…」
「ノリ?」
「そう、普通よりランクが上の男子にはみんなあんな感じですよ。」
「沢口さんは一緒に応援しなくていいの?」
と聞いてみたら、沢口さんは少し困った顔をして
「いいんですよ。参加してない子はしてないでしょ?」
よくみたら、一段となって応援してるのはクラスの女子半数位のみ。
あとの残りの半分ぐらいの子は、だるそうにしてたり、おしゃべりしてたり、あとはさやかちゃんだったりで…。それなりに散らばっている。
一緒に走るのは5人か6人ぐらい
大原くんが走っている。
「がんばれーーー」
顔見知りの子だったので、私まで大声で叫んでしまった。
なんと2着でゴールインした。
そして次に走るのは
「山田くんね。」
ああ、あのお芋みたいな子…
その時の女の子たちは
「やまだーーーっ!!」
「まじめにはしれよーーーーっ!!」
「そーだそーだ!」
「ビリだったら、許さん!」
え?何この格差??
「ね?」
なるほど…
女子はホントに残酷だ。
そして…
「こらーお前らちゃんと山田を応援しろーーっ!!」
といきなり怒って庇いに来たのがあの前川君だった。
「は?前川なんでここにいるのよっ?あんたまだ走ってないじゃない。」
「そうよ。早く定位置に戻りなさい。」
女の子たちはまた一応常識的なことを言っているが、
「うるせぇよっ!ぶすっ!んなことはどうでもいいんだよっ!!」
前川君は臆することなく、女子に刃向かっていった。
そしたら、近くにいた女教師が
「どうでもよくありません。あなたはこっちに来なさい。」
と言われて、前川君はドナドナされてしまった。
「ふん、ざまぁないわね。」
「まえかわ、ざっまぁーーー」
な状態だった。
一応父母も見に来ているのに、こんな状態なのがすごい。
そして、山田君はやっぱりビリだった。
「はぁ?なんだ山田―全然使えないー。」
女の子たちはみんなブーブー文句いっていた。
「次、側くんだよ。」
いよいよ、希実の番が来た。
そして女子の反応は…
「側くんでしょ次?」
「あの子もかわいそうね…。」
「五十嵐と一緒じゃ期待できないよねー。」
「ほんとそれ」
な状態だった。
ランクが上とか下とか以前の問題だった。
「それに、側くんって足早かったっけ?」
「さぁー」
皆、対戦相手の強さに最初から、冷めている様子だった。
「側くん。がんばれるといいね。」
「そうね」
そして…
「位置について!よーいドン!」
希実はどうだろう?
「…え?」
スタートダッシュは思いっきり遅れた。
それでもビリではないのが、奇跡なぐらいだ。
「側くんがんばってーーーっ!」
沢口さんだけが大声で声援を送っていたら…
「希実がんばれーーー!」
私も続いて、声援を送った。
希実は私らの応援など気にもせずひたすら走っていた。
そしたら、すごいことにその五十嵐くんのすぐ後ろまで追いつこうとしていた。
で
「キャーーーーっ!側くんステキーーーーっ」
「側くんがんばってーーーー。」
いつの間にか、すごい黄色の声援でにぎわっていた。
何この女子の手のひら返し。
ホント感じ悪い…
「もうこのまま一番とっちゃってぇーー」
とか、応援はどの回で走った男子よりも、滅茶苦茶盛り上がっていた…
で結局、希実は2着だった。
それでも、1着の五十嵐くんとは、さして差はなかったのがすごかった。
もし、スタートダッシュさえ遅れていなければ、勝てたかもしれない勝負だった。
お昼休み…
ユキとミホと上村さんがお弁当を持ってやってきた。
「ホントすごかったんですよ」
「さっすが希実さま―。私が思った通りの実力者ですわ。」
とミホがいつものテンションで希実のことをほめていた。
「もう言うなよ。俺も久しぶりのかけっこであまり調子出なかったんだから。」
といろいろ話しながら、楽しいランチタイムだった。
「午後の部は皆さんも見ていかれるのですよね」
「もちろんですわ」
ミホは本当にみていく気満々だった。
「午後の部は確か。帽子取りとクラス対抗リレーでしたよね。」
「私、希実さまのダンス見てみたかったですわー」
ダンスは午前にあったので、私以外は目にしていない。
みんなそこは残念そうだったが、まぁそれは見なくて正解だったかもだ。
希実結構ミスしてたから…
まぁそこは置いておいて…
その頃…希実のクラス6年1組では…またとんでもないことが起きた…
「おい、うちのクラスのアンカーが食中毒だと…」
「えーーーっ!?何それ!?」
「じゃあ補欠の天野が出るということ?」
「それじゃ無理があるだろ。」
「アンカーと他位置変えてさー。そこに天野入れればいいんじゃね?」
「まって!側くんにアンカー走らせよう。」
「え?側って?」
「側くん。あの時五十嵐にわずかな差で負けたけど、すごい速かった。」
「うん、それいいと思う。」
「でも、誰があの側を説得させるんだ?」
「…」
「…」
「…」
「女子がやればいいんじゃねぇの?」
「いやよ。私たちになすらないでよ。」
「そうよそうよ」
「なんだよお前ら、いつもは側の事かっこよすぎるとか言ってるくせに」
「そうだよ。そのイケメンの側にお近づきになれるチャンスじゃないのー。」
「なんで行かないんだよー」
とまでいわれていた。
「…私たちだって怖いもの……。」
「だから男子が行きなさいよ!」
リレーのアンカーを頼むというのは本当に頼みづらい。
「そうだ!山田に行かせればよくね?」
「そうよ。あいつなんもやくにたってないんのだしー」
「お、それいい!」
と裏でそこまで言われていた…
「え?いくらなんでも、そこまで頼めれないよ」
「もう、お前で決まったから、あとよろしくーーー」
そんなこんなで…
なんと。結局山田君は頼めれずじまいで…
とんでもないことになっていた。
結局、リレーの選手の列の一番後ろに並んでいたのは…山田君だった…
これにはクラス一同が大目玉くらっていた。
というか私まで…
「なんで山田君が?」
「え?私も知らない。どうして。」
どうやら、沢口さんをはじめ、なんでそうなっているのか全く知らない様子だった。
「ちょっと待て!なんで山田が出ることになってるんだ!?」
「あいつ。側に頼んだんじゃなかったのかよ!?」
という声が聞こえてきた。
「あの…どういうことですか?」
「あ?なんだ?ブス子かよ?」
「ブス子には関係ねぇよ!」
ブス子って…
すごい言われよう…
「お前は委員長の雑用さえしてれば、いいんだよっ!」
まさか…ここまでひどいとは…
「おい」
「あ?」
乱暴そうなクラスメイトが振り返ると希実がいた。
「委員長にブス子っていうな!」
すごい迫力で希実が言うと
「きゃーーーごめんなさーーーい」
と言って、乱暴者はその場から、すごい勢いで去っていった。
「なにあれ?だっさ。」
と女子たちはボソッと言ってクスクス笑っていた。
その女子の中で一人だけ、クスクス笑ってはいなかったが、
「側くん。そこにいたの?あのねーお願いがあるんだけどー。」
明らかにブリッコ声で、希実に話しかける女子がいた。
それって、明らかに希実を利用しようという魂胆丸見えだ。
「アンカーのことだろ?」
「キャー、さっすが側くん。引き受けてくれるのよね?」
とさらにブリッコ声で、かわいい笑顔で迫っているが、それがどうしてもニヤ付き顔にしか見えない気持ち悪さが出ている。
ここは希実引き受けるのかな?
「んなわけねーだろ!」
「え?」
「やるならお前が山田の代わりに出ろよ!ブス!」
希実はきっぱり言っていた。
希実はそのまま黙ってしまい、そこからてこでも動かなかった。
「ちょっとーブスって言う言い方はなくない!?」
とそのブリッコ女子と仲がいい気の強そうな女子が希実を詰め寄った。
その時何かがぷっつり切れたのか…
「うちのクラスで一番かわいい私をブスですってーーーーーーーーーーっ!!?」
例のブリッコ女子が発狂しだした。
確かにそのブリッコ女子はこのクラスの中では一番かわいい子だと、顔だけ見ればそう思える。
しかし希実にブスと言われて、取り乱している彼女の表情は、はっきり言ってクラス一のブスに成り下がっているといえよう。
でその後、リレーはどうなったかといえば…
結局アンカーは山田君がつとめ、6年1組はぶっちぎりのビリという結果。
まぁこれも希実にとっての小学生生活で数少ない思い出ですね。
ある意味いい経験をしたと思える。
まぁここで普通は、希実みたいなキャラが「俺が変わる」といって走るのが定番だ。だが、頼んだ相手は希実なため、相手が悪かったといえよう。希実が相手じゃホントに何言うか判らない。
せめて、あの場で沢口さんのことをブス子呼ばわりしてなければ、希実は普通に引き受けてくれたかもしれない。おそらくだが希実目線、あのクラスで一番信頼している沢口さんをブス子呼ばわりしていたクラスメートが許せなかったんだろうと予想だ。
それにしても希実のあの覇気の強さは尋常ではないなと、今回はっきりと分かった。
クラスメートが希実を怖がるという意味はよくわかった。
そして希実の存在そのものが、有名ゲーム「トラグエ」の「バルブンテ」だよなって…
そして…季節は10月…
とうとうこの日がやってきた…
希実が修学旅行の真っ最中の日
ちょうどその時が二央の誕生日なのである。
次回はそのお話で…




