表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/95

キンキンはりきり一年生

あの曜子が小学一年生になってしまった。

とうとうこの日が来てしまった。


1年2組の教室では…


「女の子5番 金田亜希さん。」


「はい」



出席番号順に名前を呼ばれていた。

今、曜子と同じ保育園だった亜希ちゃんがよばれたばかりだ。




「女の子6番 木下さゆみさん」


「はい」


「女の子7番 栗木光希子さん」


「はい」




そして…


「女の子8番 琴金曜子さ…」


「はぁーーーーーーいっ!!!」


曜子の名前を呼ばれた瞬間、

教室中どころか、もう校舎内にいれば誰でも聞こえるような爆音で曜子は返事をしていた。


すぐ前の席の女の子は想定外の大声どころか爆声でそのまま机に突っ伏して気絶してしまったぐらいだった。

両隣にいら男の子は思わず横に飛びのいたぐらい。後ろにいた女の子はこれは絶対にかかわってはいけないと思うかの如くドン引きしていた。

すでにこうなることが予想できていた亜希と美和と朋美は曜子の番が来た瞬間に耳をふさいでいた。



そして担任は


「…げ…元気……いい…ですね……。」


と苦笑いしていた。

多分担任からもドン引きされたであろう。


入学早々から、曜子は周りから引かれていたのであった。


そのせいで、入学早々から曜子に話しかける子はいなかった。


せっかく縦からも横からも一番真ん中の席で、周りには絶対的に人がいる席で、入学式でその席なら一番友達を作りやすい席だというのに最初のバカでかい返事でそのチャンスもパー。


曜子の周りにいた籍の子たちはみんな、曜子とは反対側の席の子にばかり話しかけている有様になってしまった。

曜子が話しかけようとしても、だれも曜子に話しかけない状態だった。


一番被害にあったのは曜子の前の席にいた光希子。何度も後ろから服を引っ張られたので、席が変わるころには曜子からよけるのがうまくなったぐらいだ。おまけに


「やめて!」


「さわらないで!」


とよく言うようになってしまって、もとはどういう性格だったかわからないけど、入学して早々にものすごいきつい性格になってしまったらしい。


まぁ光希子は運がいいことに前の席のさゆりも一番前の席だったので、光希子以外に近くでしゃべれる女子がいなかったこと。それでうまい子と曜子を無視することができたのはホントに運がよかったといえよう。


そして次の席替えで曜子の位置は見事に教卓の真ん前となったのはホント予想的中だった。

多分先生はつらいと思うが、入学時の次の席に先生が勝手に決めた席で、この席になるというのは問題児がやっぱり多い。


おそらく、担任も曜子のあの声には参っていたように思える。


何せ、入学早々に曜子の担任から、


「あなたの妹さん。なんとかならない?」



とまで相談されたぐらいだった…。

それもおそらくだろうが、うちの母よりも私の方にクラス内での曜子の様子について、聞かされた思う。なぜなら、特別に応接室に呼ばれてお茶とお菓子まで出されて聞かされたぐらいだ。


まぁあの母にいろいろ言いにくいのもわかる。

いつもすごい勢いな自信持った豪快な笑顔をとばしてるし、何でもかんでもポジティブにとらえすぎていて、たぶん話にならなさそうな感じ漂わせているからなー。

おまけに周りへの地味な気遣いは忘れない。PTAや町内会や商店街の役員一番めんどうくさそうな役とかを積極的にやっていたりする。だから、すでにここでだれも文句は言えなくしてしまっている圧力はかけている。あと、さすがに金の賄賂までは送ってないが先生やご近所の方とかには、毎度旅行からのお土産とか、自家菜園で採れた野菜とかを定期的に忘れずに配るなど、地味な賄賂を贈っていることも大きな要因である。



しかし、曜子の担任には申し訳ないけど、


「お話だけなら聞くことはできますが、あれのことはどうにかすることはどうにもできないですね。」


とは言っておいた。

もうその時の担任の絶望感でいっぱいなあの表情は半端なかった。

それ以降、曜子の担任とは応接室でお茶をしながら、曜子の愚痴を言い合う仲となってしまった。



そして…


曜子の噂は学校ばかりではなかった。


同じクラスの雅美から、話しかけられた。

雅美はかつて学童で一緒だった子だ。

私は学童にいたのは小2までだったので、かなり久しぶりだ。


雅美は小5になってもいまだに学童に残っているらしい。

小4になると学年の半数ぐらいの子はどこかの部活に入るので、学童にいるのは小3までな子が多い。

が、雅美は部活に入っているにもかかわらず、いまだに学童に残っている珍しい子だ。

聞く話によれば雅美はやっぱり学童の中でも最年長で、笹畑小で唯一の5年生だそうだ。

まぁ他の同い年の子は明治里小の子が3人残っているらしいが三人とも男子でうち一人は、新入生よりも厄介者の泰幸。


「ああ泰幸かー」


聞いただけで腹が立つ名前だ。

全くあてにはできないし、雅美も関わりたくもないらしい。

そうかくいう私もあの頃は泰幸が近寄ってきただけで、今やってる遊びの輪から即抜けていた。

あの頃は家では曜子、学童では泰幸に警戒していた。

学童では曜子とは関わらなくてもいい分、泰幸がいたから心休まる時は結局家でじいちゃんと一緒の時だけだった。


二年生になるとさすがに一人で行動できることも多くなってたなー。

そのころにはお稽古事とか、それがない日は栄太たちとつるんで遊んでいたりすることができたので、気が付いたら夏休み明けには学童やめていた。


まぁ、あのクッソ自己中で我儘すぎる泰幸と曜子のことを目にするようになったのでそりゃ辛いわなーというのは安易に予想がついた。


そして雅美が校舎裏まで連れ出された後での開口一言目が、


「お前の妹何とかならん?」


だった。

もう曜子の担任と同じことを開口一番に言われたのは、笑うしかないほどだった。

でも相手が雅美だ…。


「わらいごとじゃねぇっ!」


さすがに怒っていた。



「あーごめんごめん。」


今、こんな悪い口調でしゃべっている雅美だが、いつもは…特に先生や大人の前ではものすごく優等生でいい子キャラだったりする。

こんな砕けた口調でしゃべれるのは一部の気の置けた友人の前だけだ。

雅美は他の人に対しては、絶対にお前なんて言うことは滅多にいわない。



「うん、気持ちはわかる。私なんて毎日あれと一緒だし。」


それを言ったとたん、雅美も少しは落ち着いてくれたみたいだ。


「で?やっぱり、学童でも曜子嫌われてるの?」


「……まさか、そこまでズバリ言われるとは思わなんだわー。」


私の思い切った話し方に雅美はびっくりしていた。


「そうまさにそれなんよ。」


あーあやっぱりなー。曜子はどこへ行っても嫌われる。


「それもさー、お試し期間の春休みの初日から、新二年生たちに生意気にも姑みたいに意見してさ、すごい反感買っててヒヤヒヤした。なんかさ異常にマナーだの常識だの「あてくしはあなたた立ちより詳しくてよー」アピールがもう嫌味なぐらいに不愉快だった。」



「例えば…?」



と聞いてみたところ……



「このくつ誰のっ!?」


「ん?」


あのキンキンした声に誰もが振り返る。


「ああ俺のー」


「ちゃんと靴箱にしまっておいてよっ!」


とすかさず、キンキンした声で返して得意げになっていたそうだ。

確かに靴は靴箱に入れるのがルールではある。

その靴の主も一分もかからない用事で室内に入っただけでもある。

まぁ通常ならそれくらいの時間でガタガタ言われることなんかまずないが運悪くそのわずかな時間の間に、それがよりにもよって曜子に見つかってしまい、文末に小さい「っ」が入るような強い口調で注意されたとなると、やっぱり誰でもいやな気分になる。

それも昨日今日に入ったばかりの新入生にそれを言われるとなると先輩として駆け出したばかりの2年生としてのプライドもズタズタである。


「そりゃそんなの見ていた子たちからすれば、曜子をめんどくさい奴認定するのは当然のことだわ」


「普通さ、それぐらいのことでいちいち注意しなくね?てか、先生たちでさえしないし。」



まぁ曜子はそういうところ一切融通は聞かない。


「まぁごめんね。それ保育園の先生に曜子がルールや常識がなってないといわれてね。

そのあと、母が曜子にすごい基本的なルールや常識を叩き込んだせいでそうなったんだよ。」


「そうかそれでか…、うちに一個下の弟居るでしょ?」


「ああ、信太くんのこと?」


「信太もさ…。曜子が来て早々の時に…。」



なんだろうと聞いてみると


「あーゆうきくん箸の持ち方違うーーー。」


勇樹とは今年はいったばかりの一年生の子のことだ。



「めぐちゃんも要次君もなんか変ーーー。」


ちなみにめぐみも要次も一年生。

と学童でお弁当を食べている時にいきなり曜子がお箸の持ち方について指摘してきたそうだ。



「ちゃんと曜子みたいにこうやって持たないと正しくないんだよーーー」



といきなり礼儀マウントを取り出したそうだ。


そこへ曜子が近くで弁当を食べていた信太にも目がいったらしく、



「あーーーー信太君も持ち方違うーーーー」




と信太に言ってきたそうだ。


「勇樹君とめぐちゃんと要次君はまだ一年生だしいいけどさー、信太君は4年生だよねー」



とここまで言われてっしまった信太はさすがに



「4年生にもなって箸の持ち方まともにできてないなんてーーーー。さすがにダメじゃない??

キャッキャッキャッ」


とまた得意げになっていたらしい。

それもまたあの部屋中に聞こえるような不愉快なキンキン声で、一人で勝手に盛り上がっていたらしい。

いうまでもなく、その時の会話に混じるものは誰もいなかった。



そりゃ、箸の持ち方が悪いのは確かに作法的にはよくないことかもしれない。だがそういうことは直すにしても人それぞれ個人差の能力にもよるものだし、ペースというものがあるので少しずつでも改善していけばいい問題だ。他人に恥をかかせるような爆音で自分の正義を押し付けるのも見苦しいものあると言いたい。


おそらく、保育園の先生たちは母に訴えていたことは柔軟な考えを持って、周りの空気を読むことを訴えていたのだと思う。まぁそういう問題も小さい子には難しい問題なんだろうけど、母がそれを違う方向に考えてしまったことが原因であろう。本来ゆっくりとやっていけばいい堅苦しい礼儀作法を曜子に手厳しくやった結果である。

曜子はなまじ堅苦しい常識が身についたせいで、ただただ生意気な奴にしか見えないイヤなガキになってしまったのである。

それも本来曜子自身がやらんでもいいことを母は教えていなかった。それは他人へわざわざ指摘するいう見苦しい出しゃばり行為を控えるということだ。そういった最重要な常識はなぜか教えられてないままだった故に曜子は嫌われているのだと思う。




「そのくせさ、今度は自分がそういうことされると、すごいむくれたり、いじけたり、ギャン泣きしたりで、もうほんとに同じ部屋にいるだけでイラっとしてくる。」



ああ、あのメンツでも穏やかそうな雅美ですら、真っ先にそう思えるなんて曜子は相当やばい奴だぞ。


「なんか、泰幸が二人になったみたいで最近気が重い。」


ああ、確かに泰幸も曜子とはまた違った意味でめんどくさい奴だけど、そのめんどくささが2倍になったって感じだな。


「ところでさー学童ってさ、学童内にも4つぐらいのグループに分かれて行動してるけど、曜子のグループの班長って誰なん?」


「ケンの班だよー」


ケンって?同い年の健太郎のことか?


「まぁケンは天然でマイペースだからねー。」


「そうそう、春休みで入ったばかりの仮グループの時は確か泰幸で、あの時は泰幸ざまぁーと思えたけど、なんか泰幸は泰幸でまたすげぇことに曜子を半無視で強引に数日間乗り切っていて、マジでひやひや者だった。」


「なんかそれ、泰幸だからこそできた技かもね…。でもケンはどうなん?」


「まぁケンのグループにいるから、辛うじてバランスがもちこたえているようなもんでさ。それにもかかわらず曜子本人はやっぱりケンでもなんか不服があるみたいでさ。しょっちゅう何らか自分が気に入らあいことがあるたびに先生にチクっていてさ、私たちも気分が悪いし、先生も嫌気がさしてきてるみたいで。」



「なんか、みんなに申し訳なく思えてきた…」


「まぁ、星子が気に病むことないよ。あかんのはあんたの妹の方なんだしさ。」



そうはいうもののなー


「今年は私の班じゃなくてマジでよかったーとさえ思ってる。今年はなんとか、あの曜子からの直接な災難は逃れているけど、来年はどうなるかわからないから、来年残るかどうかはホント考えたくなる…。」



そりゃ考えもするわなー


「実はね。去年からバイトで入っていた新しい先生で藤原先生っていう若い先生がいるんだけどね。すごく気さくで優しい先生だったんだけど、もう最近になって全然目が笑ってなくてさ。」


やっぱり曜子は学童の先生にすら嫌われているのか…。

保育園でも先生たちからも嫌われていたとかなえ先生から、さんざん聞かされていた。

そして、栄太の情報によれば栄太の家のお向かいから3件先にあるキッズハウスの職員からも、曜子のことは警戒されているらしい。ちなみに曜子は一回もキッズハウスにはお世話になったことがないのに…。


「あんたの妹がいないグループの時は、前みたいな態度で機嫌がいいんだけどさ、あんたの妹が藤原先生と同じ輪に入ってきたときはもう、泰幸と喋っている時よりも明らかに冷え切った無表情なんだよね。」


人から笑顔を奪ってしまった挙句に、自分は毎日笑顔でいる曜子がこの時ほど憎らしいものはなかった。

というか、hっきり行って曜子の笑顔はマジできもい。笑った声も不快できもい。なんであいつばっかりいつでも思いっきり口角上がった口で過ごせているのかが憎たらしくてたまらなくなってきた。


私はあんたがそのキモ過ぎる笑みを浮かべて、不快なキンキン声が入ったあの笑い声を聞いて、毎日ゲロ吐きそうな思いをこらえて暮らしているのに…。

曜子!あんたはなんも考えずに感情の赴くままに笑って怒ってギャン泣きして周りに迷惑を振りまいているのになんも気づいていない。


でもかといって、それは誰もが曜子にはっきり言いたいことでもあり、はっきり言えないことでもあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ