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憧れの鈴木を手に入れる条件?

ホントに大変なことになっていた。


実は3日ほど、家を空けてしまったあの後すぐに…


「あのさ、三緑の母親だっていう自覚ある?

あと一応、今のところはあんたが俺の正妻みたいなものだというじかくある?」


と二央から、叱られてしまったのだ。


まさか二央から、そういわれるとは思わなかった。


なにぶん、別に正式に付き合ったと約束すらもしていなかったし、成り行きでお互いに生物的に親になっただけだったし、かといって生まれた子供は生まれながらに養子に出してしまったのだ。

そんな状況でいまさら「正妻」とか言われても、そんなことなどすっかり忘れていた。


というか、二央もこんな6つも年上の女よりも、もっと若い子をお嫁さんにもらった方が得なのに…


そんなことを言われてしまうと、


3日も家を空けてしまったこと。

勝手に他の人を好きになってしまったこと。

ヌードモデルになってしまったこと。


すごい後ろめたさが出てくる。


正直に言うかどうかも絶対に憚られる…。


そう思う裏腹に…


どちらにしても二央は火口家に戻って、火口家の当主になる者だ。

火口家に戻れば、火口家につりあった嫁をあてがわれるであろう。

本人はそれに気づいてないであろうが、火口家の秘密まで知ってしまった私目線からすると、そんな未来がたやすく見える。


そんな未来しかない相手が、この先自分の伴侶になるなんて未来。全く見えない。


だが、まだそれを言ってはならない。


それがこの一族の掟だからだ。




そして、私にはまたとんでもないことに巻き込まれていた。




「星子さん…」



幸助さんだ…



「星子さん。たいへんなことになったよ…。」



「え…?」


まさか、前の圧迫面接でやらかしてしまたことか…

まぁ仕方ないといえば仕方ない。


何せ、政治家を一人敵に回すようなことをしてしまったのだから当然だ。


てことは私どうなるんだろう?


消されるんだろうか?


それならそれで、曜子から追われ続けるこの人生が自決という理由以外で終わるのだから、都合がいいといえばいいが…


相手は政治家だ。


最後にえげつない方法で消されるかもしれないと考えるとなんかイヤかも…


「…君、……合格らしい…」



「へ?」


今聞き間違いってことないよね?


合格って?



まさか私、合格の前にいった「不」という一文字を聞き逃していたなんてことないよね?


心の中で自問自答していた。


「英子さん。君に決めたらしい…。」


「えーーーーーーっ!!!」


あんなにめちゃくちゃ言ったのに合格って…




絶対にありえない!





「それホントですか!?」


「ああ、欲しい人材は君しかいないとまで言っていた。」




なんでだーーーーーっ!?



ホントに変な人の考えてることは判らん。


「…てことは、私またあの場所に行かないといけないのですよね?」


「そういうことになる。」


「でも、電話で断れば…」


「無駄だ…」


「え?」


「そんなことしたら、あっちから、月城家まで押しかけに来る。そっちの方が厄介だ。」


なんてこと…

私はあのおばさんには二度と会いたくなかったのに…



「今、時間あるかね?」


「え?」


「今なら、一緒に付き添いができるんだが…」


と言われて、


「行きます!」


迷わず言えた。


冗談じゃない!


これ以上、あのおばさんに関わってたまるか!

そう思って、私は幸助さんとともに鈴木英子の自宅に向かった。


「一体君は義姉さんになにを言ったんだい?」


「え?…えとなんでしたっけ?」


「忘れてるのー?あ~あ…ほんとにしかたないなぁ…。」


おそらく幸助さんはあの人から、気に入られている数少ない人であろう。

そんな幸助さんでも、ここまで気を使っているぐらいの人だ。


なんか、雇われたはいいがこの先、いじめられるのは目に見えている。


「いいかい。ほぼ9割方断ることは難しいと思ってね。」


「えー?」


「あと、あの人に同じ手は通じないと思うから、よく考えてものを言ってね。」


そんなこと言われても…

私にはあの時以上の飛び道具級以上の言い回し方など、思いつきもしない…

というか、あの時はやけくそになってキレただけだ。


マジ詰んだかも…



再度来て思うのだが、この家どう見てもあの政治家の鈴木英子の家とは到底思えれない。

やっぱり鈴木という苗字ってだけで、いろいろ隠れ蓑になるというのも、こういうことだといえよう。


幸助さんがインターフォンを押した。



「はい」


「こんにちわ。幸助です。」


「あら、どうぞお入りください。」


一応、家は普通の家だが、門だけはセキュリティは高いらしく、使用人もポニーさんが操作しないと開かないらしい。


玄関の扉を開けるとポニーさんがすでに待ち受けていた。


「お久しぶりね。幸助さん。

あら、あなたはこの間の。」


ポニーさんは私を見るや否や。


「さぁさ。あがってあがって。えこちゃんが首を長くしてお待ちよ。」


腕をつかまれて、靴すらそろえる余裕すらなく、部屋の中に連れていかれた。


あのおばさんの気持ちとは逆に私は「ああ、今一番あいたくない人なんだけどなー。」と本当に憂鬱だった。


「主様。琴金さんと幸助さんがお見えになりました。」


え?なんで私が幸助さんより先に名前いわれてるんだ?



「はいれ。」



私たちは部屋に通された。


「なんだ。幸助くんも一緒か?」


私が一人で来なかったことにちょっと不満っぽかった。


「一応紹介者ですから。」


「まぁいい。」


英子は一応幸助が同席することには問題ないらしい。


「して、星子さんと申したな?」


「はい」


「実に気に入った。」


「へ?」


「採用とする。」


と言われても…

これどうするんだ?


「いつから、うちに来れる?」


「いつからって言われましても、私はまだ学生でありまして…早くても2月まで…遅くて3月まで無理なのですよね…」


「ここから通えばいいではないか。」


「あの…私バイトもしてまして…そのバイトの契約が切れるのが、来年の2月か3月ごろになりそうなのですよね。」


「なるほど…」


「ではそのバイトもここから通えばいいではないか」


どうしよう?さっそくこのおばさんと住めってことだよね?

それって絶対にイヤだし、家庭教師の仕事だってある。

ユキは進学とは関係ないので、おまけでやってるだけだけど、問題は二央と希実だ。


二人とも受験生。


二央の進路はいまだに不明だが、一応進学という方向で見ているらしい。

希実は少なくとも中学に上がる前までに真人間にしないという重い使命がかかっている。


そして今もふたりにとって大事な時期だ。


だから、今私が投げ出すわけにはいかない。


よしこれだ!



「あの、そんなにお急ぎになられるなら…」


と言って断ろうとした瞬間!


「ならばもう、四月からでも五月からでもよい!」


「え!?」


「とにかく、お主は採用じゃ!」


「おめでとうございます。」


ポニーさんからも祝福されてしまった。


「よいか?絶対に逃げるなよ?」



ひょぇーーーーーーっ



幸助さんが行っていた9割方断れないってこういうことか。


というか、なんで気に入られた?

ホントそれが判らなかった。


おまけに「絶対に逃げるなよ!」って曜子よりも怖いかも…


「今日は盛大に祝賀会だ!」


祝賀会って?


と幸助さんの方を向くと、幸助さんは何気に頭を抱えていた。

幸助さんもこうなることは判っていたらしい。


「星子さんはお酒はいける口かな?」


「はい。たしなむ程度には。」


正直、私は酒であまり酔ったことがない。

一応強い方ではあるが、ここは控えめに言っておく。


「よし、余計に気に入った。」


ああこれは飲まされる奴か…


「だが、私もポニーも飲まない人間で、幸助君も多分今日は運転だから、残念ながら今日はお酒は出さないけどいいわよね?」


「え?あ、はい」


「あ、でも他の集まりとかの宴会では、私の代わりにお願いしたいのだけど、いいわよね?」


なんだそっちのお願いか…


「かまいませんけど」


「よかったぁ。できればお酒も強い子だったら、助かると思っていたのよ。」


それならまず、面接でそれ聞いておけよと思った。



そしてその盛大な?祝賀会は


私と英子さんと幸助さんとポニーさんというたった4人のメンバーで行われた。


盛大と言っても4人。


でもまぁ食事は本当に盛大だったので、私はこれはこれで楽しめたとは思う。


そしてこの祝賀会の最中に


「あなたに鈴木という苗字。差し上げてもいいわよ。」


「え?」


これには幸助さんも驚いていた。


「義姉さん、それってまさか…」


「幸助君は黙って!」


「…」


その迫力に幸助さんは黙ってしまった。


「ただし条件がある。」


「条件って、なんですか?」


「私の息子と結婚してほしいの。」


「義姉さんそれはいくらなんでも…」


「いいの!この子も望んできた事よ。」


「星子さん君はいったい何を言ったんだ?」


「あなた、鈴木という苗字になりたいんでしょ?なら簡単。うちの息子と結婚すれば簡単に手に入る。どう?素敵な考えでしょ?」


「義姉さん、まさかこの面接一雄くんのお嫁さん探しのためだったとかじゃ…」


「違うわ。本当に私の秘書が欲しかったのよ。

でもね、この子言ったのよ。鈴木という苗字が欲しいって。きっぱりと。」


「星子さん。それは本当のことかね?」


確かに私はそうはいったけど、まさかこうなるとは…


「なら、いいじゃない。」


「星子さん。悪いことは言わないから、それはやめておいた方がいいかと…」


「余計なこと言わないでくれる?幸助君?」


幸助さんがここまでして止めるからには何かあると思う。


幸助さんはまた黙ってしまった。

幸助さんもこの人のはあまり強く言えないのであろう。


「あの、何が隠していることがあるのでしたら、先に行ってほしいのですが。」


と冷静に返した。


「…」


「…」


「…」


「…」



しばらく沈黙が続いた。



「いいでしょう。

なら、はっきり言うけど、うちの息子障害抱えてるのよ…。」


「障害?」


「今から見にいく?」


見にいくって?


こんな食事会をしている最中に見に行くって?


どこに?



とさえ思った。



が、なんと和室の押し入れの中にエレベーターが隠されていて、さらに地下室まであるとのことだった。



というか地下室に人を隠しているなんて…


「まぁ、私たちのいざって時の避難所がここね。

一応、ここには非常食もあれば、必要最低限のトイレやバスルームもセットしてあるから…。」



一応、扉は二つあった。部屋は二部屋あるようだ。


「ポニーあけて」


「はい。」


ポニーさんは部屋のカギをあけた。


開けてびっくりしたのだが…その中にさらに鉄格子が張られていた。


え?なんで?鉄格子?

奥の方で、ずっと画面に向かってゲームしている姿が見えた。


「あそこでずっとゲームしてるのが息子の一雄。」


ドアが開いても私たちがいてもずっと背中を向けたままだ。

どうやらゲーム以外に興味がないらしい。


「一雄―。母さんだよー。」


「んー」


と少し声を出しながらようやく振り向いた。


そして少しだけおじぎしてまたゲームをし始めていた。


「まぁ普段はおとなしいんだけどね。

パニックになると狂暴になって手が付けられなくてね。」



「だから、ここに閉じ込めているのですか?」



英子さんは頷いた。



「二回ほどね。一般の方々に迷惑かけてしまってね。

これ以上は迷惑をかけられないと思っての結果さ…。」


こういう管理の仕方はやっぱり強引なのかもだけど、英子さんなりに考えた結果だと思えた。


外にも中にもいろいろガードされているが、お部屋の中は一応掃除はされているし、それなりに清潔感がある環境で過ごしているとは思う。


「このお部屋もポニーが掃除してくれていてね。脇にはバスルームもあって、ありがたいことにあの子、なぜかお風呂は好きみたいだから、時間来たら勝手に入ってくれるのよね。」


本当に基本的な生活習慣だけはなんとかなっているらしい。


「まぁあの子。なんでかポニーと幸助くんにだけは、ほぼ確実に乱暴しないからね。ホント今はなんとかなっている」


「ほかに誰かここに来ることってないのですか?」


「んー業者の人とか、定期的に保健所とか施設の職員とかが訪問していく程度かな。業者の人が来る時には無理やり眠らせてなんとかしてるんだけどね。

まぁそれでもパニックになることは少ないのだけど、念には念を入れておとなしくさせているよ。」


まぁ息子さんが障害を抱えていることは判ったけど、問題は…


「なぜ、結婚をさせようと?」


これって結局、未来の介護要員よね?としか思えれない。


だって、今ここにいるポニーさんだって、英子さんと同じぐらいの年齢で、いつまで一雄さんのことを見られるか判らない。どう考えてもそれだ。


「あなたが鈴木という苗字を欲しがっていたからよ。」


英子は何も迷うことなくそれを言った。


「今まで面接してきてさ、そんな奇妙なことを言う子なんていなかったのよね。

まぁ私はあんたにそれ言われるまで、私についてこられるような私の助手を必死で探していたわけよ。

でも全部スカで骨のある子はいなかった。」


「じゃ、いきなり「ぶす」とかいっていたのも…」


「あぁなんだ聞いてたの?まぁ私に「ブス」言われて簡単にへこむようじゃ、この世界無理だと思ったんでね。


でも誰だっけ?影山という女の子は、まぁあれでも50点は取れたわね。一応あの中では高得点だったけど、いまひとつだったなー。」


なるほどね…

じゃああのまま酢でいい返してしまった私は合格するわけで


「で合格なわけですか?」


「どちらにしても、あなたに名字のことを言われるまではそんなこと思いつきもしなかったわけだけど、どう?それでも鈴木に憧れます?」


「鈴木に憧れるって?星子さんはそんなことを言ったのかね?」


「そうよ。私に鈴木という苗字くれるなら、政治家だろうがアイドルだろうが嫁だろうがなってやる!とまで言い切って帰ったのよ、この子。すごいでしょ?幸助君。」


「まぁさすがに…」


「だからこそ思いついたのよ!だったら、この子を一雄の嫁にすればいいって!」


「あの、私あなたの嫁になるとはいいましたけど、あなたの息子の嫁になるとはいってませんよ!」


「え?星子さん。姉さんの嫁になるとか?」


「そもそも、あの面接の時点で英子さんに息子がいるなんて知りませんでしたので、言葉のあやでいっただけです。」



「なんでそんなこと言ったの?」


幸助さんが聞いてきた。


「それは…政治家もアイドルも英子さんの嫁も私にはほぼ無理なぐらいなれない職業だから、その無理な職業を3つぐらいあげて、いい返すことができたらかっこいいかと思えただけで。」



ホントあの時はめちゃくちゃだったが、めちゃくちゃなりに考えて出した答えがそれだっただけである。



そしたら…


「やっぱり、あんたは頭がよくて面白い子だ。

別にいいよ。無理に結婚なんてしてくれなくても。」


「え?」


「私もただ単に養子に迎えるより、そっちのが楽かと思っただけだから。」


どうも、そこまで重くとらえないでいいらしい。


それにこの英子さん。気に入った相手には本当にここまで気さくになれるらしい。


あとで聞いた話だが、幸助さんもそうだったらしい。

この英子さんに身内と認められるまで相当苦労したとのこと…


あと英子さん…

実は相当の男嫌いでもあるらしい。


そんな男嫌いの英子さんが、どういう経緯で一雄さんが生まれたのかは、詳しいことは教えてもらえなかったけど、英子さんは未婚の母らしい。


いきなり結婚の話が出た時には、本当にびっくりした。


結局私は、4月からここで働くことになりそうである。

これで何とかあの月城家からも卒業できそうだ。

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